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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第3章 連動

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第22話 第3章 連動 第7節 戦士を人間たらしめるモノたち(後)

 モモさんと働いていたFSBは、外交官の警護や要人保護、要注意人物の補足や排除を主な活動内容としていた。

 ここでの活動も十分すぎるほど超法規的な活動だったんだけれど、ある朝、内閣官房国家安全保障局(NSS)外事課特殊戦術係というもっと危なそうなチームの佐藤冴子係長(私より若いと思ったら6歳年上だという女性)から、「明日から出向で私の部下になってもらうからね~」なんて軽い言葉と共に命令書を見せられた。その書類はもらうことはできない性質らしく、その場でサインさせられただけだけど。

 何故サインしたのか?それはその時、冴子さんから言われた一言があったから。この一言を私は忘れない。

「普通科連隊に戻れる最後のチャンスだよ?!」

 どこがなのよ?!冴子さんはそんなこと言っていないと言うが、絶対に言った。


 ちなみに親には陸自の日本大使館員特別警護隊という、でっち上げの部隊で働いているということになっている。


 今の私の職場であるNSS外事課戦術介入班では、もう超法規的活動なんてもんじゃない活動の毎日だし、この場所ではそもそも憲法とか、基本的人権などという概念は存在していない。陸自の全ての部隊はもちろんのこと、FSBですら極上ホワイト企業だと痛感する毎日。


 例えば天然ガスを豊富に有する東南アジアの某所で、背後に共産主義国が見え隠れする反政府組織が台頭した。私は日本の自衛隊をクビになり、日本に恨みを持つ元兵士としてこの組織に潜入した。彼らの指導者はカリスマ的な女性で、同姓だが戦士である私を同志として迎え入れてくれた。

 私は資金源に困っていた組織のために、日本の反社会組織への武器密輸を実行して資金を準備した。もちろん仕組まれた茶番劇なのだが。組織内の兵士に自衛隊仕込みの戦闘技術を訓練していき、私は組織内での評価を上げた。その後はナンバースリーの座にいた男を焚きつけて、内部分裂を引き起こさせて、第三者であった麻薬組織にこのテロ組織を乗っ取らせた。

 その後、その国が困り果て、なおかつ私がこの組織に関われるギリギリのタイミングで、NSSが介入してその組織をつぶした。その国へ恩を売って、天然ガスの多くが共産主義国に流れることを防いだ。ついでに厚労省麻薬取締局が手を焼いていた麻薬組織もつぶした。


 また、アフリカのレアメタルが豊富な国に恩を売っておきたい日本政府のために、私がその国でテロ組織を組んだ。訓練や武器調達、テロ計画の準備を行い、それをNSSが潰すなんて茶番も成功させた。

 その時に作った大勢の仮の仲間を私が裏切って、何人かが死んだ。まあテロリストだけれど。人間としての正義とか壊れちゃうよね。まだギリギリ私は直接この手で人を殺してはいないけど、撃ったり撃たれたり、刺したり刺されたりは結構日常茶飯事。


 年上の同僚である太った伊藤さんは、「大人になってからの初殺人は、人によっては心病むから、殺さないように頑張ってね」とか言っている。伊藤さんに人生で何回くらいそんな経験があるのかと聞いたら、「林葉さんは人生で割った割箸の数を覚えているの?」と真顔で言われた。笑えない冗談だと思った。


 自衛隊や外務省時代は、事が起こってからその対応に当たる活動だったが、NSSは事を起こさせないために事を起こす活動だ。こちらから仕掛けるのは、男女関係では得意だけれど、荒事はできれば事が起こってからにしたい。


「響ちゃん。そういえばこないだ言っていた、姪御さんの誕生日プレゼントは結局どうしたの?」


「やあねモモさん、覚えてくれていたんだ。本当に優しいね。センスが良いモモさんのアドバイス通り、パーカーのボールペンにしたよ。ありがとうね。高級なボールペンなんて初めて見たらしく、大人ぶって喜んでいたよ」

「それは良かった。デジタルが優勢になっても、書くことはたぶん死ぬまで付きまとうしね。若いうちから使い捨てではなく、良いものと長く付き合う事を覚えるのは、悪い事ではないと思うから」


「モモさんといると、本当に色々勉強になる」

「僕だって響ちゃんから色々教わっているよ。響ちゃんが嬉しそうにしてくれると、もっと響ちゃんのために何かしたいって気持ちが強くなるよ」


「じゃあモモさん。もっとキスして?」

「喜んで、僕のお姫様」


 強く激しく攻めてくるのは苦手なモモさんだけれど、キス同様にやさしくしっとりとしたセックスがモモさんの持ち味だ。おしゃべりしながら、笑いながら、ずっとつながっているセックス。

 激しい任務中や任務後は、脳内が荒立っているから激しいセックスがしたくなるけれど、ちょっと疲れているときや、感情が落ち着いているときに、モモさんは最高の相手だ。


「響ちゃん、挿れさせて?」

「うん……」

 私は仰向けになって、モモさんを受け入れた。ゆっくり円を描くように動くモモさんに合わせて、私も腰を動かす。その間もずっとキスを続ける。この瞬間、私は任務のことも、今までの成功も失敗も、全部忘れられる。脳と心の全てが、何か一つのことで満たされる、夢中になる時間は、私にとってはとても貴重だ。

「……モモさん……大好き……」

「響ちゃん。最高」


 私は優しいモモさんの顔を見つめながら言った。 

「私たちの仕事はさ、あまりにも心が疲弊しちゃう。モモさんに抱かれている時間だけはね、ただの人間、ただの女に戻れるの。いつも甘えちゃってばかりだけど、モモさんとのこの時間が、私を人間に繋ぎ止めてくれる大切な時間だから……ありがとう」

 私たちはその後、日付が変わるまでお互いの身体を楽しんで、モモさんの腕の中で朝まで眠った。


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