第20話 第3章 連動 第5節 戦士を人間たらしめるモノたち(前)
20話目、毎日11名の方が11時に読んでくれています。あなたへお礼が言いたくて、前書きを書きます。毎日読んでくれる11名のあなた。心から感謝を込めて。今日から3日間は響子視点ですので、ちょっといつもと違う展開ですが、2222回目の悠太の世界線を読んでいただいていれば、なるほど響子はこんな理由でそんななのね。とご理解いただけるかと思いますし、読んでいただいていない方でも、そういう理由で響子はそうなのね、とご理解いただければと思います。
とにかく毎日読んでくれている11名のあなたにお礼が言いたく。ありがとうございます。
私の名前は林葉響子。親は自営の小さな工場を営んでいる。兄と姉がいて、ごく普通に幸せに育った。私は幼いころから身体的な能力がとても高く、競泳をやっても、陸上競技をやっても、練習も努力もせずに学校内では1番が取れ、区大会でも5本指に入れ、都大会では決勝に残る程度の、それなりの成績は簡単に残すことができた。
道具を使う競技より、体だけで勝負できるスポーツ、そしてチーム戦より個人戦の方が向いているように感じていた。
中学時代の将来の夢という作文を書く時に、体を動かすことは好きだったし得意だったから、この身体的な能力をお金につなげていく事は出来ないだろうか?……そんなことを漠然と考えていた。
漠然とした将来から具体性をもった将来を考え始めた高校時代、参加した震災ボランティアで見た自衛隊の献身的な姿が、私の進路を決めた。
過酷な状況にもかかわらず、隊員たちが被災者に真摯に寄り添う姿に心を打たれたし、私が出来ることの何十倍ものことを実行する極端な専門集団を見て、私もこんな風に人を助ける仕事がしたいと思った。
両親には「せめて大学を出てキャリア自衛官を目指せ」と諭されたけれど、私が望んだのは、現場で誰かのために手足を動かすことだったので、高卒で陸上自衛隊に入隊した。
「響ちゃん……どうかした?ぼんやりして」
「え?ごめんモモさん。このお店のステーキナイフがワルサーのタクティカルナイフに似てるなって思って」
「ドイツの銃器メーカーのワルサー?」
「うん。初めて米軍との共同訓練に参加した時の都市戦シミュレーションで、ビル内のアメリカ陸軍の小隊12人を独りで殲滅させたときに使ったナイフが、ワルサーのナイフにゴムブレード(ゴム製の刃)を付けたやつだったんだよね。一人目に倒した米兵から奪ったナイフだったんだけれど、殲滅させたご褒美にそのナイフをもらったんだよ。そんな事を思い出しちゃってた」
今夜の私は、友達以上で恋人未満?である(恋人の定義にもよるが)、元同僚の百瀬歩さんと麻布十番にあるステーキハウスでご馳走を食べている。
「響ちゃんがFSBに入社してくるときに、事前に写真無しの経歴共有されていて、握力100キロ越えのゴリラ型アンドロイドを想像していたから、初めて会った時の驚きといったらなかったよ」
※FSB:外務省特殊機関対外戦略特別局
「本物を見る前に最悪の想像をしていたから、普通の人間レベルの私とのギャップで可愛く見えて、口説いてくれたのかな?」
「ギャップだけの魅力なら、こんなに数年間も関係が続かないよ。その声も、その顔も、その身体も、何よりその頭脳、全部が魅力的だよ。陸自でよく他の男性隊員から襲われなかったなって不思議もある」
「褒めてくれてありがとう。正直陸自、特に普通科連隊辺りは腕力バカ『も』多いのは確かだからね。でも普通科連隊には女性も1割くらいはいるし、力ずくでこられた時には一手目、つまり押し倒される段階では勝てないけれど三手目、つまり押し倒された後、相手の腕を取って肩関節を外す段階では私が勝っていたよ。その先の配属先は、皆IQ高いからそんな動物じみたのはいなかったから安心して」
「それそれ。その先の配属先もまた……響ちゃんの履歴を見た時に、基礎訓練終了後、ほぼノンストップでレンジャー訓練に行ってたから驚いたよ。レンジャー条件って背筋力150キロ以上だよね?」
「がんばって161キロ出したよ。上官からね『女性はまず無理といわれているけれど、特に厳しい状況の災害では、レンジャーが先行して被災者救護に派遣されるんだ』とか言われてね。その気になっちゃったのよ」
「でもレンジャー資格までは、まだね、まだわかるんだけれど、第一空挺団ってのはちょっとどうなの?と思ったよ。だって自衛隊に一つしかない超エリート空挺団。ほぼ全員レンジャー資格持っている部隊でしょ?」
「それもまたなんだけれど、レンジャー取った後の普通科連隊での合同訓練の中で、米軍の小隊を一人で殲滅させたりしていたから、上官から目を付けられちゃってね。私は災害支援のために自衛隊に入ったと拒否していたんだけれど、『しょせん我々は陸がつながっていなければ動けんが、空からパラシュートで被災者のもとに駆け付けられるのが、第一空挺団だ。試験を受けて被災者のために道を拓け!』とか言われて、またしてもその気になってしまったのよね」
「いやそれでも空挺団は超エリート集団だよ?そんな部隊に響ちゃんのような魅力的な女性が隊員として入るって、屈強な男たちの列に、響ちゃんも並んでいるって……ちょっと本当に僕の思考がついていかないよ」
「確かに空挺は体力馬鹿を超えた怪物集団だね。ナイフとパラシュートだけ身に着けて、飛行機からオーストラリアの山の頂上に降りて、2日以上かかって下山してくるって、もうホントバカって感じよね」
「僕だったら死んでるね。なんでこんなにキュートな響ちゃんが、そんなことができるのか本当に想像力がついていかないよ。しかも空挺の後は特殊作戦群でしょ?これは本当にあり得ないよね?」
「ハハハ、キュートな響ちゃんってうれしい。ありがとう」
私は山岳降下訓練を思い出しながら、今ここでモモさんと笑っているギャップがおかしかった。




