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第2話 第1章 播種(はしゅ) 第2節 運命は発芽する為にリンクを張り巡らせている

 美咲はモテる女性で、花楓はタラシの女性だというのが美咲の見解である。

 この評価について以前、美咲と花楓は討論をしたことがある。美咲は自分が名前も知らない男性から数多く告白されるのに対して、花楓が告白される数は美咲の1%程度であるが、花楓が気になる男性から告白される。美咲は名前も知らない相手なので、交際に発展することはないが、花楓は元々気になっている、ちょっといいなと思っている男性から告白される、というより告白「させる」ので、それは交際に発展する。

 男女関係でなくても、花楓は人に好かれる明るい性格と、可愛らしい雰囲気のツインテールのルックスもあってなのか、友人関係はとても広い。花楓が仲良くなりたい相手とすぐに仲良くなれるし、花楓が苦手だと思っている相手とも、その気になればすぐに仲良くなれる。

 だから花楓は人タラシであり、男タラシであるという結論に行きついた。


 花楓のスマホに返信があり、ニヤッと笑うとまた誰かにメッセージを送る。そんなことを数回繰り返すと、花楓は美咲のスマホにSNSメッセージを送った。


 美咲がそれを確認すると、全く知らない男性のSNSアカウントが表示されていた。

「なに?これ?」

「私の友達に美咲がAIのプログラミングで悩んでいるって送って、その友達の友達を紹介してもらったの。友達の友達に状況を説明すると、後輩の連絡先が送られてきたから、その後輩にも同じことを説明したら『おすすめ品』を送ってきたの。それを美咲に送った。親が医療機器の設計をしている人で、自分も親の仕事に興味を持ってプログラミングを覚えたらしい。このおすすめ品がポンコツ役立たずだったら他を探すけれど、私はAIの事なんてわかっていないから、その人がポンコツかどうか判断できない。だからあんたが判断して」

「え?会ったこともないのに?」

「私だって会ったこともないわよ。それが何?」

 美咲は思わず笑いだした。

「本当に花楓って……そういうところ尊敬しちゃう。なりたいとは思わないけど」

 美咲がそう言うと花楓は返した。「褒められてるんだか、貶されているんだかわからないけど。これがアンタにはできなくって私にはできること」花楓はニヤッと笑った。


 家に戻った美咲は、自分が作ったAIをインターネット上のドライブに保存して、花楓が教えてくれた連絡先に、その保存場所と自分がやりたいことのメッセージを送信した。

「初めまして。黒田美咲といいます。自分で作成した簡易AIに、ディープラーニングを搭載したいと考えましたが、独学では難しいと考えて友人に相談したところ、あなたの連絡先を聞きました。URL(保存場所)を送りますので、よろしければご意見をいただければと思います」

 メッセージを送信した後、その日は「合気道」の稽古だったため、自宅を出て道場に向かった。


 母と祖母の勧めで始めた競泳と合気道について、勉強リソースの確保を理由に競泳は大学入学とともにやめたが、合気道はまだ続けていた。


 美咲は有段者であったため、黒袴を着た合気道の稽古が終わりスマホを確認すると、先ほどメッセージを送った安田悠太という人物から返信が来ていた。

「はじめまして。黒田美咲さんの事は存じ上げませんが、篤という友人から事情は聞いていたので、AIをダウンロードしてみました。すごいっすね。これを独学で、しかもPythonで作るって。コードを拝見しましたが、特にデータの前処理部分で使用されている標準化と特徴選択の手法が興味深いです。また、学習アルゴリズムのチューニングにおいて、最適化のために選択されたハイパーパラメータの初期値が非常に効率的に機能しているように見えました。この設計は独自に試行錯誤されたのでしょうか?それとも何か特定の本や参考資料のコピペで実装されたのでしょうか?また、損失関数の設定が独特で、目的に合わせたカスタマイズがなされているように感じますが、その部分についてもぜひお聞きしたいです。黒田さんがやりたい事をもう少し知りたいので、一度会って話しませんか?僕は高校で部活はやっていないので、前もって言ってくれれば時間はいつでも作れます」


「ふうん。オタク君」美咲は少し馬鹿にするような独り言をつぶやいた。幼児舎のころから、多くの男性に声をかけられ続けてきた美咲にとって「いつでも時間を作れる」という誘い文句は聞き飽きていたせいで、なんだか自分が一方的に誘われている気分になってしまった。

 だが今回は自分から相談を持ち掛けた結果であるし、この安田悠太なる男性は、おそらく美咲の容姿を知らない。したがって美咲が馬鹿にするような事態ではないことを認識しなおした。


「ごめん。高校生君。返信がガチすぎて笑った。私が理解できないメッセージってちょっと珍しい」

 スマホに向かって軽く頭を下げながら、メッセージを送信した。

「さっそくのご連絡ありがとうございます。それでは明日の夕方、場所は安田さんの活動圏を知らないのでそちらに合わせます」

「わかりました。品川の駅中にある喫茶店で17時に。調整必要なら連絡ください」

「了解しました。よろしくおねがいします」

 伝えるべき要点は三つ。現状のシステム、ディープラーニング搭載の目的、そして高校生君に協力を求める理由。それを無駄なく伝える言葉を考え始めた。


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