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第18話 第3章 連動 第3節 周囲に合わせる生き方を選ぶか、自分の能力をフルに使う生き方を取るか

 幸太郎は、アリシアの概要を簡単にまとめたA4の紙媒体資料を、エリシオン社の休憩スペースで同期入社で営業部の軽部に見せていた。

「安田が作ったんだから、方向性は間違ってないんだろうけど……今のままだと女子高生が作ったAIって印象が強いよな。実物を見ないと評価しづらい」

「ああ、そうだよな。俺自身初めて話を聞いた時も、直近で聞いた時も、素人の女の子が作っただなんてすごいって印象を持ってしまうんだよ。でもよくよく現物を見るとな、中堅のシステム開発会社が手掛けているレベルには仕上がっているんだよ。素人女子高生が起点だからこその、シンプルなUIも良いと感じているし……」

「だとしたらこのラフの方向性をちょっと修正して、このシステムで出来る事の羅列を書き出して、それに対してどんな使い方を想定しているのかという、未来志向の案内に変えた方が、もっと実物を見てみたくなるかもな」

「ああ、相変わらずセンスが良いな。ちょっと修正してみるよ。ありがとう」


 幸太郎は軽部のアドバイスを聞き入れて、より「本物をみせろ」と言いたくなるような資料を作り、会議の場に持ち出した。

 その会議の場で参加者に「好奇心」を植え付ける事に成功し、幸太郎も予想外の速度で社内にアリシアプロジェクトを立ち上げることになった。

 元々エリシオン社が作成する、レントゲン撮影機やCTスキャン、MRI等の画像データを統合管理するシステムを作成する「医療画像統合部門」のリーダーについていた幸太郎だったが、アリシアプロジェクトを自部門の配下内に収める事により、自身の人事異動などは伴わずにプロジェクトに関わる形となった。

 幸太郎はレントゲン撮影機のデバイス設計を行う部門にいた悠太を、自分の部門に異動させアリシアプロジェクトの主任とした。


 そのころ研修医期間を終えた美咲は、自分の専門として放射線科を選び、その中でも画像診断を専門とする放射線診断医の道を進むことに決めた。

 応慶大学には世界的に名が知られた、心臓血管科の川野辺教授という心臓外科医がいる。世界のVIPが、わざわざ訪日してオペを受けたがる手技を持ったドクターだ。

 美咲はこの川野辺教授からも、自分が医長を務める心臓血管科に誘われていた。実は美咲の母と川野辺は、同じ大学出身でもあり交流を持ち続けている。美咲の有能さを聞いていた川野辺は、ぜひ自分の手で美咲を育てたいと思っていた。


 しかし美咲は放射線科を選ぶことにした。内科などと違い、心臓血管科は患者と向き合うというよりも、患者の心臓と向き合うといった色が濃い科目である。従って美咲の性格には向いている。

 しかし放射線科の診断医も、レントゲンやCT、MRIなどの画像をもとに、主治医に診断の助言を行う。患者との直接の接点は少なく、広範な医学知識を求められる領域である。まさに患者と向き合うというよりは、病理と向き合う点においては心臓血管科よりも美咲に向いているといえた。

 美咲は自分の能力を最大限に生かすためには、人間相手という要素に翻弄されるより、病理と向き合う方が正しいと判断した。


 ある部分では、美咲が選んだ放射線診断医の役割と、アリシアの画像解析の機能は驚くほど近い。まるで、美咲がアリシアと共に歩む道を自然と選んだかのようだった


 すでに幸太郎から「中堅規模の医療機器メーカーが商品として販売していそうなレベル」という評価を受けるくらいに完成度が高かったアリシアだったため、エリシオン社に嫁入りして資金力とマンパワーを得たアリシアの成熟は大変速かった。


 元々Pythonで作られたアリシアの基本的な頭脳部分はそのまま残し、美咲は勉強していないC++やRustというプログラム言語を併用して、その能力が著しく進化した。

 エリシオン社のプロフェッショナルチームでは、まずアリシアのデータ解析アルゴリズムを見直し、従来の10倍以上の速度と精度を実現した。これにより、希少疾患の検出率が飛躍的に向上。次に、ユーザーインターフェースの刷新に取り組み、美咲が作ったシンプルさは残しつつ、医療現場の実情を反映した直感的な操作方法を採用。さらに、スマートウォッチやARグラスと言う眼鏡型の連携機能を開発し、診察中のリアルタイム解析結果の提示を可能にした。


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