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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は聖女を助けたい編

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リツキが帰ってきたら日常も戻ってきた。

ふと目を覚ます。

空気の感じで、夜明けくらいの早朝かなと思った。


「おはよう」


アンリの声が聞こえて声の方向を見ると、顔色が悪いアンリが横にいた。


「おはよ……寝てない?」

「今までちょっと忙しくて。そろそろ目を覚ます頃だと思って帰ってきた」

「ありがとう。ごめんね」

「いい。ミユは寝た方が良かった。寝てる間にメイナの記憶を見て、ミユの姿で悪さをしていないことが確認できたよ」


予想外の言葉に、固まってしまったあとホッとする。

気休めかもしれないし嘘かもしれないけど、心の底から嫌だったから気が抜けてしまった。


「気になるなら、魔王城に行きな。ゾーイかドロテアがまだ治療してるから」

「二人ともまだ寝てないの? 悪いことしちゃった」


起きようとする私に、アンリがキスをする。


「ミユはいいんだよ。二人とも心配してたし。僕もちょっと寝る。記憶を見すぎて限界だ」


そういうと、支えていた腕を外してベッドに横になった。

鑑定をかけて神聖力をみると、今まで起きていたのが奇跡のようにからっぽだった。


「うん。おやすみ。本当にありがとう」


アンリが返事もせずに眠るのを見つめる。

そういえば、気を失う前までは二人とも血みどろだったのに、今はどちらも着替えている。

下着はつけていなかったので、アンリが着替えさせてくれたんだなと思った。

完全に眠ったと思った後にベッドから降りて、下着をつけた後に魔王城に向かった。



個人用ポータルで魔王城に着いた後に、瞬間移動でゾーイの元に行く。

着いた場所は、石造りの窓もない個室だった。

室内に一つだけあるベッドの下には黒石があり、メイナが寝かされていた。

それを眺めるようにゾーイとドロテアが立っていた。

ゾーイはアンリの服に着替えている。


「ゾーイ、ドロテア!」


「あ。起きたんだ。メイナは生きてるよ」

「ちょうどすべてが終わったところよ。出ましょう」


ドロテアがあくびをしながら瞬間移動をする。

次の瞬間、ドロテアの部屋の中にいた。


三人でソファに座る。


「あの女を完全には治したりはしてないの。暇だとまた自分で死にかけるからね」

「ウィリアムソンが、六時間くらい記憶を見てたから、自分もちょいちょい記憶を見たけど、ミユキの姿になってたりはしなかったよ」

「じゃあ、なんであんなこと言ったんだろう」

「したかったけれど、良心が痛んでできなかったんじゃないかしら。いずれにせよカスだけど」

「まぁ~、でも捕まえられて良かったよ。もう少しで死ぬところだったからな。ウィリアムソンは吐きそうな顔をしてて気の毒だったけど」


宿泊所にいたとしてメイナが裸だったということは、一人ではなかったのかもとは思っていたけど、そういうことなのだろうか。

メイナ視点なら、相手の顔ばっかりだから嫌だろう。それでも身体とか反射で顔がうつったりはするから、私かどうかの確認はできると思うけど。


「とりあえず、犯行時刻の映像を見るのとかは寝て起きてからね。ミユキも一緒に寝る?」

「私はゾーイを泊める家に連れていかないといけないから」

「お前、ドロテアとも寝てるのか」

「やましいことはしてないよ。してたらドロテアも無事じゃないし」


二人も彼氏がいるせいでふしだらな人間だと思われている。不名誉すぎる。


「過剰反応しすぎじゃない? じゃあ寝るわ。おやすみなさい」


ぴょんと部屋の外に追い出されて、二人で家に戻る。


「ちょっと付いていけない奴らばっかりだ」


ポータルで家に戻った時、そう言いながらゾーイは脱力していた。

やっぱりゾーイはまともな感覚があるから、王になってもいいのかも。


「ゾーイって、王様になる気ない?」

「はい? なんの?」

「この国の王様。神聖力が高い人がいいらしいけど、私なりたくないから」

「意味がちょっと分かんないな。寝てないからかもしれない」

「寝たほうがいいね」

「その前に水飲むわ」

「ミルクティーとかでいいなら作るよ」


話しながら一階に降りると、見覚えがある背中がテーブルの上に突っ伏して寝ているのが見えた。


「リツキだ」


逮捕されたのに戻ってきたんだ。

青色の服を着ているが、背中の一部が色が濃くなっているような気がした。


(ゾーイを送った後に傷とかを見て治さないと)


ベッドで寝ればいいのにと思っていると、ムクっと起きてこちらを見る。


「ミュー!!!!!」


叫んでこちらに走ってきた。

うわっと言いながら、ゾーイが横に逃げる。


リツキは私を抱き上げると、そのままキスをしてきた。

ネル、と舌が入ってきて、驚いてポコポコ殴る。


(酷い傷があるかもしれないから、強く殴れないっ)


でも、人前で、こんなのは恥ずかしすぎる!


「あのっ、んむっ とまっ」


何か話そうとしても上手くいかない。

最近こういうのに弱いから力が抜けそうだし。


「は……ひと、ちょ……ッぅう」


人の話をぜんぜん聞いてないと思いながらゾーイを見ると、いなくなっていた。

遠くで食器を探す音がする。

ズルズルと力が抜ける私をどこかに連れていこうとするので、慌てて神聖力を入れて寝ろとリツキを叩く。

大きな身体が、ぐらりと揺れてこちらに寄りかかってきた。


「うぅ~……」


慌ててアンリが寝ているベッドにリツキを連れて瞬間移動する。

神聖力を使って移動させて寝かせると、ヨロヨロと一階に戻った。


「大丈夫?」

「獣がいた……発情期のやつ」

「なんか顔が真っ赤で……いいや。とりあえずよだれ拭いてあげるよ」


ゾーイが自分のハンカチで顔を拭いてくれる。

恥ずかしい。こんなハレンチな日常を見せていたら、ふしだらな奴だと思われても仕方ないよ。

考えていたら終わったらしいので、アンリの家に瞬間移動をする。


「ありがと。ここがアンリの家だよ。二階がベッド。お昼くらいに起きてきたらご飯用意しとくから」

「うん。ありがとう。さっきの話はまた今度、ちゃんとした頭の時に聞く」


手を振って二階に登っていくゾーイに手を振り返して、家に戻る。

二階に上がると、リツキは横向きに寝ていたので、身体に傷がないかシャツをめくってみた。


(うわ)


背中の皮膚が裂けていた。

鞭だろうか。いくつも細い傷が重なったところの皮膚が裂けている。


(かわいそう。リツキってこういう時本当に何も言わないよね)


神聖力をかけて治していく。

治しても傷の治りは悪かったので、もしかしたら他の傷があるのかもしれない。

前にリツキが死にかけた時のことを思い出しながら、傷を治していった。



(そうだ。ジュディに会いに行かないと)


傷を治した後、大切なことを思い出す。

まだお昼まで時間があるし、牢屋じゃお風呂も入れないだろうから浄化をかけてあげたい。

ジュディの姿になって牢屋まで会いに行く。

受付に行って話すと、受付の人は監視の人間と話しあって、首を横に振った。


「面会をしたくないって言われてるから、だめなんだよ」

「会えないってことですか?」

「うん。昨日からもう面会はしたくないって言っててね」

「……そうですか」


断られて外に出る。

ジュディが私を嫌いになったということはないだろうから、きっとバレたら面倒だから来ないでくれってことなんだろう。

気持ちはわかるけど心配になってしまう。

脳内に語りかける方法をやってみたけど、何の反応もなかった。


(心配だけど、会えないから仕方ない)


早く出せるように頑張ろうと思いながら家に戻る。




なんか苦労させたからちゃんとご飯を作ろう~とから揚げを作る。

アンリにはしつこいかな~と思ったから、野菜と鶏肉っぽいのをギュッとしてオーブンで焼く奴とさっぱり系のスープも作った。


「おはよー……」


オーブンで野菜を焼いていたら、アンリが起きてきた。

お茶を入れて、アンリに出す。


「おはよー。ジュディに会いに行ったけど会えなかった」

「あぁ……ジュディは二度と元に戻らない覚悟で行ったから」

「……どういうこと?」


胸に嫌な予感がする。


「ジュディに持たせた呪文は、死んでも姿が元に戻らない効果も含めたものなんだ」

「有罪になっても元に戻らないつもりだったってこと?」

「うん。ジュディから言ったんだ。牢屋で何があるかわからないからって」

「そんな……知ってたら変わらなかった」


だから、入れ替わる時に、あんなに色々喋っていたんだろうか。

なにも考えずに、犯人が捕まって、目途がついたら戻れば良いと思っていた自分が嫌になる。

面会を断られたら、もう元には戻れないじゃないか。


「でも、メイナは捕まったから大丈夫だよ。王城の牢ならアイツが連れていかれたような刑罰もないだろうし」

「本当かな……リツキは背中の皮膚が破けてたよ」

「貴族をたくさん負傷させたらああなる。ミユも有罪が確定したら首を撥ねられるどころじゃなかったよ。本当に怖かった」

「うん。捕まえられて良かった」


良かったと言ってしまっていいのかわからないけど。


「……はよ」


ゾーイがやってきた。

そろそろご飯かなと温めたりよそったりしているとリツキが凄い勢いで降りてきた。


「ミュー!!!! やっぱり夢じゃなかった!!!!」

「わぁ! こっちこないで! 危ないッ」


オーブンから野菜と肉を出したところだったので、慌てて止める。

リツキの身体がピタッと止まった。


「朝からやめろよ」

「またミユキの顔がなんか見ちゃいけない感じになるじゃん」


二人でリツキを止めているようだった。


「えっ、僕が寝てる間になにかあった?」

「いや、朝に魔王城から戻ってきたらコイツがミユキにブッチューベロベロっとした」


ゾーイの話を聞きながら、アンリが嫌そうな顔をして私の口に浄化をかけた。


「だって朝一番に面会するぞと思ってたらミューがいたから! 触んなきゃ夢か分かんないじゃん! てか、なんでいるの?!」

「ジュディが私の姿になって代わりに牢屋に入ってくれてる」

「そりゃ……気の毒だけど、俺にとっては安心っていうか最高っていうか」


私にとってはジュディが人質で心配だけど、そんなこと言われても困るよね。


「とりあえず、ご飯食べよう。からあげもあるよ。リツキの好物」

「本当だ! やったーから揚げじゃん!」


リツキは一人で元気だった。

ゾーイは呆れた顔をしながら、首を横に振った。


「から揚げは揚げ物か。朝から揚げ物はちょっとな」

「アンリも苦手だから、スープにショートパスタ入れたから、そっち食べて。野菜とお肉を焼いたのも、このお肉の油、胃に優しいから大丈夫だよ」

「ミユは優しいから、僕らが疲れてると思っていっぱい作ったみたいだ」


ちょっと作りすぎたかなと思いながら食卓に並べて食べ始める。


「から揚げ、こんなに美味しいのに」

「ちょっとずつ食べるのが正解だな。どれも美味しい」

「寝る前に食べてなかったから、全部食べられるかも」


皆が食べているのを見ながら、スープを飲む。


(そういえば、私もご飯食べてなかった)


胃がからっぽすぎて気付かなかったのかもしれない。

食べているうちに元気になってきたので、もぐもぐとたくさん食べる。

いろんな人に助けられていて心からありがたいと思うと同時に、メイナの心の叫びを想うと、辛い気持ちになる。

メイナだって、助けられて優しくされていたら、あんなことはしなかった。

けれども、きっとどんなに擁護しようとも、処罰は免れない。

どんなに人間だろうとも、王族殺しは、死をもって贖うものだというのはどの国でも一緒なのだから。


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