自由を手にした大聖女は作戦を練る
目の前に現れたのは、豪華な調度品がある広い部屋だった。
(ここは……アンリの家?)
アンリ目の前に現れる。
パパパ、と魔王とドロテア、ゾーイとモーリスまで目の前に現れた。
今までまわりにいたってこと? 全然気づかなかった。
あ、と思って自分の変身も解く。
「なんか……お集まりいただいて……」
「ミユ~……」
アンリが抱きついてきた。
でも、リツキがいない。
「リツキは?」
「あいつは明日釈放。金は払ったけど、貴族の息子まで倒したから多少の罰は避けられなかった」
そうなんだ……酷い目にあわないといいけど。
「ジュディが私の代わりに牢屋にいるから、早く助け出さないと」
「犯人はメイナなんでしょう? 一級は死にたくったってそう簡単に死ねないから、まだ生きてるわよ」
ゾーイから話を聞いたらしいドロテアが厳しい目をして話している。
「私もメイナかなって思うけど、証拠がないんだよね」
「証拠がなくったって大丈夫よ。魔王城に時間で記憶が見られる装置があるから、それを使えば犯行時間になにをやっていたか見られるわ」
「記憶を見る方法とほぼ同じだから、一級以上じゃないと見られないけどね。ただ変身してたとしてもわかるし嘘も通じないから正確だ」
「じゃあ、メイナを捕まえたら無罪になれるね」
二人の言葉に魔族領には便利なシステムがあるんだなと思う。
私の見た目になっていたらしいし、変身がわかるというのはありがたい。
「まあ無罪だけなら、ミユキの記憶を見るのでもいいわよ。時間がおおよそだから、時計とか見てたら、ほぼ無罪になれるわ」
「私の記憶……」
その時間は、二人とイチャイチャ……。
「見せられない。無理」
「寝ていたの?」
「寝ていたっていうか」
アンリを見ると顔を隠して俯いていた。
ドロテアがああ……という顔をする。
「まぁ、追体験みたいになっちゃうから、他人に恋人の裸は見せたくないわよね」
「聖女ちゃんの裸は見たいけど、野郎の裸はあんまりメインで見たくないな」
「アンタにミユキの裸なんて見せないないわよ。このスケベ男。見るとして私とゾーイで見る」
「自分も? 他人のそういうの見たくないんだけど!」
いきなり指名されたゾーイは焦り気味に叫ぶ。
裸どころの話じゃないし、絶対に見せたくない。
「どっちも嫌だぁ……誰にも見られたくないよ」
「ミユは時計なんて見てる余裕ないよ。僕は時計を見てたけど、僕の目線だろ? ミユがメインになるから見られたくないな」
驚いてアンリを見ると、赤面していた。
なんてことを言ってるんだ。でも二人がメインよりはマシなのかな。いやマシじゃないよどっちも嫌だ。
「記憶を見て人の男を異性として意識したら嫌な気分になるから、ミユキのほうがいいわね」
「ミユキを意識しちゃったらどうするんだよ。めんどくさい」
「わたくしはそっちの趣味はないと思ってるけど、ゾーイがあるなら困るわね」
「こっちもないと思いたいけど、怖いなぁ」
「嫌だって言ってるでしょ! 助けてくれるのはありがたいけど、最後の手段だよそれは!」
この世界は本当にプライバシーという意識が欠けている。
怒りながらどうやったらメイナを捕まえられるかを考えるしかなかった。
「瞬間移動をしてもメイナは見つからないの?」
「見つからないわね。一級だけど、神聖力と姿を隠しているのかメイナのいる場所に飛んでも人ごみに紛れてわからない」
「とりあえず寝て起きると神聖力は回復するはずだから、朝に探したほうがいいのかもしれない」
朝じゃ遅くないかなと思いながら、考えていると、ゾーイが手を振る。
「メイナが消えたから、ユラが不安定になってるってさっき聖女宮で聞いたけど、ユラを保護したほうがいい?」
「ゾーイがユラを保護して、またユラが惚れたらどうするの? モーリスさんにお世話してもらおう」
リツキに振られたばっかりなのに、ゾーイにもそういう趣味がないとか言われたらユラが可哀想だ。
とつぜん話を振られたモーリスは、驚いてこちらを見る。
「もう聖女の世話はしないって決めてるんだが」
「王城のポーションプールにいる子供たちのお世話をしてもらおうかって思いまして。それなら寂しくないし」
「ああ、そういうこと。ミユキさんは本当に賢いね……優しいし……」
フフ、とモーリスが照れながら話すのを、アンリとゾーイとドロテアが冷めた顔で見ている。
「今、あの子たちは新しいポーションの供給がなくなったから、今は消されないように隔離された場所でうちの薬を作る仕事をしているんだ」
「そうなんですね。確かに危ない仕事をしてたから、用済みになったら消されそう」
「うん。一応処分したと言ってはいる。では、そのユラって子が一級なら、連れて行って効能をつけてもらおうかな。明日にでも聞いてくるよ」
「ありがとうございます」
ニコッと笑うと、モーリスはテレテレっとした。
別に盗聴とか変なことをしていなければいい人なんだよね。抱きついてきたけど。
「ゾーイさんはうちに泊まるんだっけ?」
「どこでもいいですけど、聖女宮から朝出るのは無理なので外泊ですね」
「うちに泊まる? あ、でもベッドが一個しかないけど」
「やだよ……カップルと一緒のベッドに寝るのは」
「僕の家に泊まれば? 寝具は洗濯してあるし、朝はこっちくればミユがご飯作ってくれるよ」
「そっちが良いかな」
「では、全員うちで食事をしてからお帰りください。うちの料理長が腕によりをかけて作りましたので」
モーリスの言葉に甘えて、みんなで食事をしてから家に戻る。
ガードのせいで個人用ポータルを使えなかったらしいので、全員が通れるようにガードを張りなおした。
一日経たずに戻った家は、きれいに片づけられていた。
「足跡で汚れたから清掃を入れたんだ」
「そっか」
納得していると、ドロテアと魔王が私に手を振った。
「じゃあ、ミユキ。わたくし達は仕事が残ってるから帰るわね」
「オレは忙しくて今日以外来れないけど、テアは来るから。ごめんね」
「いえ。二人とも、お忙しいのに来てくれてありがとうございました。嬉しかったです」
「気にしないで。ちゃんと捕まえるように頑張りましょう」
二人は二階に上がると、物置の部屋からポータルで帰っていった。
少しだけ落ちつきながら考える。
(私なりにメイナを探したいな)
まだ夜が始まったばかりだし、時間もある。
遠くに逃げられたら終わりだ。
「私、ちょっとメイナ探してきていい?」
「え、待て。ちょっとゾーイ送ってくるまで待ってなよ」
「自分も行くよ。別にまだ寝る気もないし」
「ありがとう。じゃあ神聖力渡しとくね。私はいっぱいあるから」
二人に神聖力を渡す。
私は技がないので、あらかじめ二人に渡したほうが捕まえられる可能性が高い。
「あっま! ミユキの神聖力の味ってこんな味なのか」
「ミユの神聖力は美味しい」
どうやったら捕まえられるだろう。
着いた途端逃げられたらおしまいだよね。
魔王が最初にうちに来た時もアンリは気付いてたし、私は気付かないけどみんなは気付くみたい。
「瞬間移動した後、すぐに行動制限かガードを広くかけたいけど、どっちがいいだろう?」
「行動制限かなぁ。ガードは少数だけ引き止めるみたいなできないから、混乱が起きやすい」
なるほど。メイナだけを閉じこめたいなら行動制限がいいってことか。
元の世界にはFPSという種類の射撃ゲームがあって、ゲームが進行していくにつれて行動範囲が狭まって、最後の1人までぶつかるようにできていた。あれを応用すれば捕まえられると思う。
「行動制限って狭めることはできる? 瞬間移動をしながらどんどん行動範囲を狭めていけば、そのうち見つかると思う」
「すげー力技。まぁできるよ。自分とウィリアムソンが交互にかけていけば余裕だね」
「どの程度で狭めていく? さっき探したときは目くらましだろうけど神聖力が分散してたから」
「狭める範囲は半分くらいでいいんじゃないかな」
FPSのゲームは範囲外のプレイヤーは死んでたからわかんないな。
でも、半分になるわけだから、もしメイナ本体とズレた場所に行動制限をかけたとしても、また瞬間移動してかければいいだけだ
あっちも瞬間移動するから、狙いを定めてもうまくいかないだろうし、臨機応変が大切だろう。
「瞬間移動をどんどんしていくから、半分で外れたらまたかけてもらえばいいかも。判断は二人にお願いしたいな」
「じゃあ最初は僕がかけるから、次はそっち頼む」
「了解」
「じゃあ二人とも行くよ」
声をかけてから、二人の腕を掴んで瞬間移動をした。




