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甘いポーションと意識する夜

あれからしばらく経った。

リツキには魔王の嫁になる話を話せなかった。

抱きつかれるのも止められず、話もできないのは姉としても年長者としてもどうかしてる。

リツキの人生を思えば早く言ってあげた方が人生が無駄にならないのに、どうしてだろう。どうしても言えなかった。




アンリの家で、今日も勉強をする。


「ミユ、基礎は今日で終了。対策を考えたから、これからの話をしよう」


勉強を始める前にアンリがそう言いながら、いくつかポーションの瓶を取り出した。


「体内に神聖力を蓄積させる場所を神聖力タンクくらいまで広げる訓練をする」

「神聖力タンク?」

「胃袋みたいに限界値まで詰めて広げる。貯めているものは外から見えないから、出力もコントロールすれば偽装できる」

「神聖力ってためてる分を含めてじゃないんだ。二重になってるの?」

「うん。貯めるのは訓練しないとできないし、でも基礎が終わらないとミユの身体が危ないからできなかった」



そんな危ないものなんだ。

でも、体内に貯めている神聖力が外から見えないなら、大聖女とバレる確率が大幅に減る。


「努力次第で普通の生活をおくれるようになるかもしれないんだ!」

「うん。鑑定されるとまずいから、たくさんの人がいる時は必ず偽装して」

「街とか神殿に行くときは、ギリギリまで落とせばいいんだね」

「うん。タンクが溢れたらポーションとか作って、ギリギリまで神聖力を下げて」

「わかった」


気持ちが明るくなってきた。

これなら、魔王の嫁にならなくてもやっていけそうだ。

じわじわと、目が熱くなってくる。


「どうしようと思ってたけど、本当にありがとう。凄く嬉しい」


アンリの手をとって、感謝する。

よくわかってなかったけど、本当は苦しかったのだと気付いた。


「泣くな。教えるのが遅くなってごめん」

「うん。ありがとう」

「貯めるのがうまくできれば、そんなに弟とくっつかなくても大丈夫になる」


アンリは照れた顔をしてから手を離す。

そうか。神聖力を保存できれば、毎日抱きつかなくてもいいんだ。

考えてみればそんなことはすぐ思いつくと思うだろうけど、学んだことをすぐ応用できる脳が私にはなかった。

なんか、どんどん解決法が見えてきた。


「確かに、ポーションとか作れば日持ちしそうだし、くっつかなくてもよくなるね」

「ポーションは上手く保存できれば一年もつから、今日は、蓄積の練習と、ポーションを作る練習」

「うん! 頑張る!!」


アンリと一緒に練習をする。

神聖力タンクみたいなものを作るのは日数がかかりそうだけど、ポーションは上手く作れるようになった。


「前ポーションをつくった時は、薄い色だったのに、今は普通の色がつくようになった!」

「もっと濃くできるようになったら売れるようになる。がんばれ」

「頑張る!」


ヘトヘトになるまで練習すると、時刻は昼を大きく過ぎていた。


「休憩。サンドイッチ食べよう」


使用人に用意させて、二人でサンドイッチを食べる。



「ありがとう。なんか教えてもらってお昼まで……ごめん」

「気にしなくていい。お兄さまがミユのポーションの味を気に入ってるから」

「えっ、練習の飲んでるの? 味とかあるんだ!」

「自分で飲んでみるといい」


アンリが二本ポーションを取り出す。一本はアンリが作ったもので、もう片方は自分のだ。

アンリの方を飲んでみる。


「甘めの柑橘系のジュースみたいな味! 美味しい!」

「神聖力が強いと甘いんだ」


自分のほうを飲んでみる。


「えぇ~! 薄いイチゴミルクみたいな味だ! 美味しい!」

「いちごは知らないけど、甘くておいしい。もっと濃く作ってほしい」

「アンリも飲んでるんだ。頑張って作るね!」


自分の手から作れるのが美味しいなんて嬉しい。

お世話になってる人には、いっぱい作ってあげたい。

なんかアンリがいなかったら知らないことばっかりだ。


「アンリと会えて良かった」

「なに。急に」

「だって、魔王の嫁になるか、誰とも付き合わず生きるしかないって思ってたから」

「最初に、わたしは二級ってことになってるって話したのに」


ああ、あれって本当は偽装してるって意味なんだ。全然気づかなかった。


「私、あんまり賢くないのかも」

「そんなことはない」


そう言いながら、サンドイッチを食べて照れていた。


「ああ、そうだ」

「あの胸当て、販売した一割の金をミユに渡すように契約するから、あとでサインとかもらう」

「胸当て? ブラジャーのことかな」

「たぶんそれ。ミユが持ちこんだ品なんだから、そんな簡単に権利を渡してはいけない」

「そうなの? だって自分じゃゴミみたいなのしか作れないよ」


ただで貰えるだけでじゅうぶん嬉しかったんだけど、お金がもらえるってことなのかな?

四級聖女のお金は少ないから、少しでも助かるかも。


「ミユはほっとくと利用されてしまう。よくない」

「そんなことないと思うけどな……でもありがとう。助かるよ」


お礼を言うと、アンリは目をそらしてサンドイッチを食べる。

その姿が可愛くて、思わず笑った。





時間いっぱいまで頑張ってから、家に帰る。

最近リツキの帰りが遅いので、ご飯を作って待っていた。


(そうだ! ポーションも飲ませてあげよう。お世話になってるんだし)


コップを用意して、ポーションを作る要領で液体をためていく。

底が広いからか、ポーションの瓶一本分をためても、量がちょっぴりしかなかった。


「もっと小さいコップがあればよかったんだけどな~」


ぼやきながら、量を増やしていく。

リツキが帰ってくる頃には、ヘロヘロになっていた。


「ただいま~……ってどうした?!」


家に帰ってくるなり、床に座ってる私を見てリツキは叫ぶ。


「あ、リツキにのませようと思って、ポーション作ってたら疲れちゃって」

「ポーション?」


コップを指さす


「コップに半分くらいあるじゃん! ポーションの量じゃない!」

「なんか、やってもやっても少なくって」

「瓶ってね! ああ見えてもガラスは厚みがあるから量が少ないんだよ」


もったいない!と言いながらリツキは二階へ走っていく。

そして空のポーション瓶を箱で持ってきた。



「聖女ならいつか作ってもらえると思って、買っといて良かった!!!!」

「いや、今飲んでよ。私のポーション、わりとおいしいよ」

「こんなの美味しいに決まってるよ」


そう言いながら、ポーション瓶に移していく。


よく器用に移し替えられるなと思って見ていた。


「十本作っても三分の一残ってる!」

「飲んで飲んで。一番お世話になってるし」


リツキはごくりと喉を鳴らしてから、一口ポーションを飲む。


「あっま! いちごミルクだ!」

「美味しいでしょ」

「ミュー汁おいしい……」

「なにその気持ち悪い言い方」


嫌だなぁと思いながら見ていると、リツはごくごくポーションを飲んだ。

なんかそう言われてから飲まれると怪しい飲み物に見えてくるな……。


「あ、今なら神聖力上がってて鑑定できそう! 鑑定!」


そう言いながら、こちらを見る。


「うわ! こう見えてるんだ!」


初めてみた!という顔をしているので面白い。

一時的に神聖力って上がることも知らなかったので勉強になった。


「そんなことより、ミューの神聖力ギリギリだよ」


リツキはそう言いながら私を持ち上げて、自分の足の上に乗せる。

そうか。疲れたと思ったらギリギリだったのか~。

くっついてると、確かに力がわいてくる……。


「うっわ! 本当に抱きつくだけで回復してる。凄い! 愛の力だ」

回復してきたので、顔を上げてリツキを見る。


不意に目が合ってしまった。


(ちっか……)


あまりに顔が近くて、慌てて離れる。

なんか、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。


(ん? 恥ずかしい?)


弟相手に? と振り返ってリツキ見る。

服をパタパタさせながら、赤い顔でこちらを見ていた。


(いや、でも……流石に弟でも顔が近かったら照れるよね)


考えながら、胸の動悸をおさえる。

自分の感情なのに、知らないことがいっぱいだなと思った。



風邪ひいて死にかけてるので、明日(治らなければ明後日も)お休みします〜!気になる方はXでご確認下さい。申し訳ないです〜。ああ〜!

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