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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は世を正す編

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魔族領へ旅行・一日目

旅行当日。


朝から快晴。ドロテアとは魔王領で繋がるポータルの向こうで会おうという話になっていて、リツキも先に行っている。

私はアンリの家で、ジュディに危ない時は飲む濃い回復ポーションをあげたりしていた。


「いいんですか? 聖女様。こんなに」

「いいの。災害とかあるかもしれないし。なにかあったらシャーリーにも飲ませて」


神殿と敵対になるかもしれないとは言えず、そう言ってポーションを握らせる。

心配なのでドロテアに習って20個ほど作った特製回復ポーションが役に立つ日が来ないように、心の中で願った。


「最近はシャーリー、聖女宮の聖女と仲良くしていてあんまり家にいないんですけどね」

「用もないのに聖女宮に入ってるの?」

「はい。あちらの了承は得ているから入れているんだと思いますが」


それは、いいんだろうかと思う。

聖女宮はあまりいていい場所ではないと思うけど、聖女じゃなければいいのかもしれない。


「シャーリーって聖女じゃないよね?」

「違います。私よりは神聖力がありますけど、四級聖女にも満たないですよ」


じゃあ大丈夫なのかなと思う。

しばらくシャーリーとは会ってもいないし、話してもいないから、私がどうこう言える立場じゃないかもしれない。


「聖女宮は良くない噂を聞くから、長居はしない方がいいとおもうよ……」

「ですよねぇ。あ、旅行前にこんな話をしてすみません。楽しんできてくださいね」


ジュディに送り出されて、アンリと一緒にポータルに向かう。

ドロテアに作ってもらった通話道具を持ったモーリスがにこやかに見送ってくれるのが見えた。




ポータルは、瞬間移動を大人数にするかわりに固定された装置だ。

この国から魔族領の主都までは、自由に行けるようになっている。


「瞬間移動ができれば、すぐについちゃいそう」

「首都まで二時間くらいだから、旅行ってほどでもないね」


ポータルに乗りながら話していると、まわりの景色が回転し始めて、カチリと何かの音が響く。

景色の回転が止まると、目の前にドロテアとリツキがいた。


「アンタたち遅いわよ」

「そんな遅刻してないよ」

「わたくしが待っていたら、その時間から待っていることになるのよ」

「そんな横暴な」


ドロテアと言い合いながらポータルのある施設の外に出る。


「魔王城ってとこにあるの?」

「あっち。瞬間移動でいくわ」


「私!やりたい!! 荷物も送っちゃってないし!」

「なにを? 瞬間移動? いいけど」

「瞬間移動の空中散歩! 楽しいから!」

「ああ、僕が教えたやつね」


アンリはへらっとした。


「じゃあ、アンリとリツキを両手に握るから、ドロテア落ちないように私に掴まっててって」

「掴まっててって……」


私はドロテアの腕を持って、自分の後ろから自分のわきの下と肩の上から腕を持ってきて、胸の前で掴ませる。

たすき掛けが一番落ちないって相場が決まってるんだ。


「……色気がないわね」

「色気なんていらないでしょ」

「ミュー、今から何するの?」

「ジャンプしてどんどん移動するの。手を貸して」


リツキとアンリの手を掴む。


「いち、にの、さんでジャンプするよ! ドロテアは魔王城の場所があったら教えて」

「わかったわ」


「いーち、にーの!!」


「さん!!」


ジャンプする。


空に移動して一瞬見た景色は綺麗だった。


「わぁー!」


リツキは楽しそうに笑っている。アンリは今日はにこやかに景色をみているようだった。

続けて瞬間移動をしていく。


「魔王城ってどんなだったかしら」


ドロテアは一瞬だけ見える景色を見ながら、気楽な声で動いていた。

二人は流石に落ちるかと思っていたけど、ドロテアも神聖力を使えるせいか、安定して飛べていた。


「ミユ、あった」


アンリが指さす。


一瞬で場所を移動するので、よく分からなかったが、ドロテアが下を見て納得した。


「あ、本当ね。移動するわ。ごめんなさいねミユキ」


ドロテアがパッと瞬間移動する。


移動した瞬間、ふわっと空中で浮いて止まったので、全員怪我はなかった。

これが一流の聖女の仕事。私は着地まで考えてなかった。


「ミュー、これ楽しかったね」

「楽しいよね!」

「ミユに教えて良かった」


へへと笑うアンリに、リツキが冷めた目を向ける。

喧嘩をしないでほしいと思ったけど、やっぱり空中散歩は楽しい!


「みんなで騒いで移動すると楽しいのね」


ふわりと笑う顔を見ながら、みんなも楽しんでもらえてよかったと思う。

ドロテアが黒い板を取り出して連絡した。


『ドロリン、着いた?』

「ついたけど、その呼び方やめてよ」


少し照れながら話している目の前に、突然魔王が現れた。


「じゃあなんて呼べばいい?」


魔王の言葉に、ドロテアは少し拗ねたような顔をしてから笑う。


「ドロテアか、テアがいいわね」


そう言いながら魔王に近寄って、抱き合う。

スス、とアンリが寄ってきて私の肩を抱いたと思ったら、反対側からリツキも同じことをしてきた。


「お前離せよ」

「お前が放せ」


リツキがアンリの手を噛もうとする。


「やめろ。汚い」


アンリが焦りながら手を離すと、私の肩を抱いている手をチョップした。

落ちつかない二人だな……。


「聖女ちゃん! 神聖力ありがとね!」


声をかけられて声の方向を見ると、魔王がこちらに手を振っている。


「ご無沙汰してます。杯はどうですか?」

「もうそろそろいっぱいになるよ。一昨日くらいからすごいけど、なんかした?」


なんかって……エッチしました、なんて言えないよ。


「いっぱいって本当ですか?」

「うん。そろそろ杯の中身を移し替えようと思ってるから、しばらく要らない」

「そうなんですね」


どうすんの神聖力。

あれから毎日だし……くっついてるから相乗効果が凄いのかもしれないけど、これからも増えるよ。

そのうち飽きるだろうから、貯めといてもらうのが一番かもしれないけど。


「魔王。ちょっと内密に話したいことがあるんだけど」


ドロテアが声をかける。


「なに? セックスしたい?」

「それはアンタでしょ。 そんなことより重要なことがあるのよ。ガードをかけた部屋で話したいわ」


真剣な顔に、魔王はキョトンとした顔をしたまま室内に案内する。

連れられて行った場所は、会議室のような場所だった。




会議室で、今のこちらの国の現状と、魔族領がとられそうだという話をドロテアがする。

私達も、時々補足していった。

話は聖女宮の話になり、魔王の顔色が変わっていく。


「俺の聖女ちゃん達になにしてるわけ? テアは本当に大丈夫なの?」

「わたくしは自由に動けない以外は大丈夫よ」

「それも可哀想じゃないか……なんでそんなことに」

「別れたあたりからおかしくなったのよね」

「正直、ガラレオはこっちに宣戦布告みたいなことを言ってたから予想の範囲内。そっちの国がそこまで腐ってるとは思ってなかったけど」


魔王はそう言いながら、室内をウロウロと歩き回る。


「でも、そんな話を聞いたらテアを帰せるわけがないじゃないか。もう結婚しよう」

「は?」


突然の話にドロテアが固まる。


「今から神殿に連絡してくる。その上で出方を見よう。いいよね」

「本当に結婚するつもり? 久しぶりに会ったのよ」

「だってテアより良い女がいないからね。嫌?」

「嫌じゃないけど、もっとロマンチックなプロポーズが良かったわ」

「じゃあ、また何度でも言うよ。気に入るまでね」


魔王の言葉にドロテアは少し驚いた顔をしたあと、ふわりと笑った。

二人で顔を合わせてフフ、と笑う。


「あと、浮気はいやよ」

「もうしないから」


イチャイチャと二人でし始めているのを三人で眺める。

私達は完全に邪魔な存在だ。


「出ていきたいけど、僕達の荷物はどこにあるんだろう」

「部屋もわからないと、俺達もいちゃいちゃできない」


人の家でそういうことってしていいの?


「とりあえず、聞くしかないよね」


勇気を出して手を上げる。


「あの! 私達、そろそろ部屋に行きたいんですけど、どこですか?」


魔王とドロテアは、こちらの存在を思い出し、顔を赤くしながらこちらを見た。





案内された部屋はきちんと人数分の三部屋あった。

部屋の中には、三人なら狭いが二人ならゆったり寝られるくらいのベッドが置いてある。

調度品も、柄が多いカーテンも寝具も異国のようでインドとかそんな感じだな~と思う。


ふと廊下を見ると、アンリとリツキが真剣に話し合っていた。

こちらをチラッと見ると、室内に入ってしまったので聞かれたくない話らしい。

どうせろくでもないことなんだ……と思って、部屋で荷物を広げた。



その夜は、アンリの部屋に呼ばれた。

初めての二人きりの夜だと思いつつ行くと、アンリが出迎えてくれた。


「二人っきりって、するようになって初めてだよね」

「うん。もう我慢しなくていいんだなって」

「我慢してたんだ」

「だってミユの負担になるから」


優し気にアンリが笑うので、キュンとなる。

改めて、めちゃくちゃなことに付き合わせてるなと思いながら、アンリを抱きしめた。


「なに、嬉しい」

「色々我慢したのかなって。でも私が痛そうなとこ見てなんか嬉しそうなとこもあったけど」

「……やっぱり自分以外のせいでちょっとミユが嫌そうなのは、なんか興奮するんだよね」


クセが強すぎる!

アンリの首をがぶりと噛む。


「ごめん。でもミユが嫌がってることはすぐ止めるから」


声が笑っているので、反省していないなと思いながら、二人でベッドに転がる。

アンリは淡白だと思っていたけど、ぜんぜん淡白じゃなくて我慢していたのだと思わされた夜だった。




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