二人と繋がる初夜
アンリの家は、一軒家だった。
小さいけど、家具も食器も必要なものは一通り揃っていて、しかも上質だった。
「可愛い家だね!」
「ミユが住めるように色々揃えてある」
嬉しそうに言いながらアンリが部屋に置いてある戸棚から白い布を持ってくる。
布を見るとふりふりのショーツが上にのっていたので、ネグリジェかと気づいた。
「ミユの。風呂場はあっち」
指で示されて、お部屋探索をしたかったと思いつつ、先に入るべきかと思ってお風呂場に行く。
アンリがリツキに詰めよっていくのが横目に見えた。
「僕はミユの顔をじっくり見たい気持ちのほうが強いから聞くけど、僕より大きいのと小さいの、どっちがいい?」
「どっちって……」
「意味は分かるよな」
心から頭を抱えるリツキのうめき声が聞こえていた。
可愛いけど、アンリってなんか癖が強いかもしれない。
それにしても二人はどういう気持ちで大丈夫だと思えるんだろうか。
私の気持ちは複雑すぎるけど、同じ嫌ならまだマシくらいの気持ちなのかな。
でもアンリまであんまり本当にまぁいっかって感じなのはなぜなんだ。
お風呂場は、小さいけどオシャレで猫足のバスタブが置いてあった。
お湯を出してパパっと身体を洗って身体を拭く。
アンリは、私と初めてはあんまりなのかな……。
何度か確認されたし、今日もリツキが入ってきたのもあるかも知れないけど、別に譲ってもよさそうだったし。
前はあんなに嫌そうだったのに、やっぱりこういう関係が嫌になってきたのかもしれない。
(……それも覚悟してたけど)
しょんぼりしながら、渡されたのは新しいネグリジェとショーツを着る。
たぶん今までで一番高いんだろうな~という感じの繊細なリボンとレースが付いていた。
肩はあいているし、透け感のある布だけど、たっぷりと布を使っているので、そこまで透けていない。
(……見せる人を選ぶ服だけど可愛い)
嫌になる前に買ったのかなと考えながら、部屋に入る。
「ミュー! 可愛いねぇ」
リツキが抱きつこうとしてくるのを、アンリが止める。
「ミユにくっつくな。早く風呂に入れ。汚い。やることもあるだろ」
「ちょっとぐらいいいじゃん」
そう言いながらリツキはお風呂場に押されて行った。
「ミユ! 二階行こ!」
アンリが戻ってきながら、へらっと笑って私の手を掴む。
自分に浄化をかけているのか、見た目がキラキラした。
そんな嫌になってそうには見えないけど、わからないな。
「リツキ待ってなくていいの?」
「大丈夫。いなかったら来る」
上機嫌に案内されて、二階に連れていかれる。
二階のベッドルームには、リツキが寝ても大丈夫なような大きなベッドが置いてあった。
掛布団的なものがないのでスッキリとしているけど、それでも見栄えが良い。
ベッドも寝具も白色で、シーツにも金色の装飾があしらってあってとてもかわいかった。
フリフリが悪いってわけじゃないけど、ちょっと大人めのこういうののほうが心が躍る。
「かわいい!」
「どうせなら大きいほうがいいと思って」
そう言いながら、アンリは服を脱ぎはじめた。
ひえっと思いながら、靴を脱いでベッドに登る。
明かりが、パパッと消えていって、一つだけになった。
「ミユにも身体を浄化する方法を教えるね。あいつベロベロ舐めるから」
服を脱ぎながら、丁寧にアンリは身体の浄化方法を教えてくれる。
試しに口の中を浄化してみたら、口の中がスッキリした。
(便利すぎる! もっと早く知りたかった)
アンリは下着になると、ベッドに上がってきた。
そのまま私に抱きついて寝ころぶ。
「浄化かけるけど、回復もかけなきゃいけないし、あんまり痛そうなら軽減とか……それ以上に緊張して難しいかもしれない」
「ありがとう……余裕があれば私も頑張りたいけど」
でも多分難しそう。
「いいよ。無理しなくても」
アンリが私のおでこにチュッとした。
ええ、この態度って、好きだと思うけど、違うのかな。
「アンリは、私とのことに、嫌気がさしてるんじゃないの?」
「えっ、なんで?」
「だって、アンリは私が初めてじゃなくても大丈夫みたいだし」
「それは……緊張して失敗するのが嫌なのと、神聖力のコントロール効かなくなるとミユが辛いから」
私のためだったんだ。
「それに、辛そうな顔させたくないのと、そういうのが見たいって気持ちがふたつある。そうなると僕が最初じゃないほうがいい」
それはよくわからない考え。
「俺がいない間に、二人でなにしてるのかな?」
遠くから声が聞こえて、階段の方を見る。
リツキが仁王立ちしていた。
しかもタオルだけ腰に巻いている。
ダダっと走ってくると、こちらにピョーンとダイブした。
「おまっ、危ない!!」
アンリが神聖力で止めたが、そのままこちらに落ちてきた。
私達の上にビターンとリツキが乗ってくる。
「仲良くしようぜぇ!」
私とアンリの間に、リツキの顔がある。
上に覆いかぶさった瞬間、私の方はぶつからないようにリツキが腕で支えてたのでダメージはなかった。
「あ、一応ギリで止めたけど、ミュー痛くない?」
「痛くないけど、タ、タオル落ちちゃってるよ」
「別にもう使わないからいいよ」
「ぃ~……気持ち悪。ミユ攻撃していい?」
「我慢してね。リツキは靴脱ぎなよ」
「仕方ないな」
リツキが私たちの上から退く。
アンリは浄化をかけているようだった。
なんだこれ。ムードもなにもない。
アンリがロマンチックな感じにしてくれたのに、そういう雰囲気ゼロだ。
「あ、あの」
私の言葉に、二人はこちらを見る。
ちゃんと仕切りなおさないと。この中では一番のお姉さんだからね!
「じゃあ、今日はよろしくお願いします……?」
仕切り直し方がよくわからなかったので、照れながら少し笑ってみる。
アンリがへらっと笑って、後ろから私を抱きしめる。
「よろしくお願いしますだよォ~~~~~!!!!」
靴をそのへんにほおり投げて、リツキが正面から抱きついてきた。
アンリを巻きこんで、そのまま後ろにドサリと倒れる。
やっぱり犬だ。リツキは犬。しかもバカなほう!
アンリは私の、片手を握ってキスをする。
「愛してるよミユ。痛そうなのも気持ち良さそうなのも、全部覚えておくから」
もう片手をリツキが握った。
「俺も愛してるよ。ミュー」
そう言いながら、リツキが私の首をねろりと舐める。
ビクッとすると、アンリがこちらを見下ろしているのが見えた。
(見られてる……恥ずかしくて死にそう)
荒くなる息の中、声を抑えつつ身を捩る。
与えられる快楽と、絡み合った二人分の手に拘束されて上手く動けない。
だけど、ずっと焦らされていた身体はそれすら喜んでいるように思えて恥ずかしかった。
痛みが快楽になって、またそれが繰り返されて、そのたびに柑橘系の味が口に広がる。
時間の感覚が分からなくなるほど翻弄されていたら、いつの間にか、意識を手放していた。
夜、ふと目覚めると、布団が掛けてあった。
アンリは隣でスヤスヤと眠っているが、リツキはいなかった。
眠っている髪を撫でてみたが、起きる様子はない。
(喉かわいた)
枕の上の方に置いてあったネグリジェを着て下に行く。
違和感のある下腹部に、夢じゃなかったんだなと思った。
リツキがキッチンにあるテーブルに備え付けらえている椅子に、裸で座っていた。
「起こしちゃった?」
「ううん。喉が渇いただけ」
水をくんで飲む。
リツキが立ち上がり、後ろから抱きしめてきた。
「ミューは後悔してる?」
「ううん。この前からふっきれた」
後ろからの体温にドキドキしてしまう。
気持ちとしては、それでもいいと思っただけで、ふっきれてはいない。
だけど、これは一生ついてまわる感情なのかもしれないと思って言うつもりもなかった。
リツキの手が髪を撫でて私の口内を探る。
「愛してるよ、ミュー」
複雑な茶色と緑色の色彩をした瞳が、私を見ている。
その瞳を見て、泣きそうだと思ったのは気のせいだろうか。
「私も」
こちらからもキスをする。
愛なんて単純な言葉。なにをもって愛とするのかよく分からないけど。
そんな気持ちで、二人を繋ぎとめることがいいことなのかも全然分からないけど。
全員がそれでもいいと思った未来が、せめて二人にとって幸せであるようにと願うしかなかった。
アンリの寝起きは砂糖を吐きそうなことしか言わないので、削りました。
ミユキによって歪んでしまった性癖持ちと甘々が好きという謎の生物アンリ。




