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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は地獄の底を探る編

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五人で話した結果、行く末が見えてきてしまった。

二日後。


聖女宮のドロテアの部屋に近い飽き部屋に、五人で集まる。

室内に不備がないことを確認してから、四人でガードをかける。

これなら外に話が漏れる恐れはない。


部屋の中には、簡素なベッドと、四人掛けのテーブルセットに、一脚椅子が追加されて置いてある。


「この部屋の作り……」


アンリが嫌そうな顔をしている。

たぶん嫌なものを見たのが同じ間取りなのだろう。


(ん? じゃあ抱いてたのは神官じゃなくて、やっぱり聖女じゃないの?)

(聖女をアンリっぽくしてたなら、特殊な趣味すぎるけど、まぁ人が見ていないところの話だし……)


まぁ、アンリに手を出さないなら何でもいいけどと思いながら、椅子の一つに座る。

隣にドロテアが座った。

モーリスが、一脚追加されたお誕生日席に座り、残った椅子にはアンリとリツキが座る。


「お茶、アンリの家からもってきたので飲めますよ!」


ティーセットを籠から出して、神聖力で温めてから注ぐ。

間違えてなかなかアッツアッツになってしまったけど、こういうこともある。

なぜか全員話さずに私の行動を見ていたので、めちゃくちゃ恥ずかしかった。


「あの。モーリスさんに聞きたいんですけど、神殿って魔王を裏切って、他の国とくっつこうとしてます?」


注目されているのが恥ずかしかったので、先に話題を切り出す。


「ミユキさん、賢いね。そうだね。ガラレオ国という隣国と共謀して魔族領をこの国の領地にするつもりだ」


モーリスさんはにこやかに笑いながら言った。

お茶をみんなに配りながら、穏やかじゃないなぁと思う。


「彼らのミスは私を神殿内に置いておいたことだ。私はアンリと違って従順なふりができるから、どんな汚れ仕事もできるしね」

「神殿の中では、大聖女らしき存在は先日の襲撃で死んだことになっている。だからもう襲撃がないんだ」


あ、襲撃を警戒してたけどなかったのは、もう大聖女はいないことになってるんだ。


「モーリスがやったのか?」

「その通り。うちに家に置いておいた方が安全だし、殺されてはたまらないからね」


アンリの言葉にモーリスは答えて、手元に置いてある紙から組織図みたいなものを取り出してテーブルに置いた。

その組織図の一番上には国王、神殿のトップにはダリス・フォーウッドと書いてあった。


「魔王へのポーションの減量、かわりに王宮への献上はフォーウッドの指示だ」

「フォーウッドは、神殿の最高位の神官ね。見た目は若いけどけっこう歳なはずよ。あいつが帰ってきてから聖女宮がおかしくなった気がする」

「どっかに行ってたの?」

「ガラレオ国に行ってた。ちょうど繋がってるわね。あっちの地位でも約束されてるんじゃない?」


私の質問に、つまらなそうにドロテアが答えてくれる。

モーリスは組織図のフォーウッドにガラレオとメモを書いて矢印で繋げた。


「そもそも出身がガラレオなんだ。だから、魔王を殺して魔王領を奪ったからといって、この国が魔王領を取れるとは思えない」

「単にガラレオの一部になる可能性が高いってことか。戦争になるよりはその方が楽だし」

「そんな簡単にいく? 魔王だって馬鹿じゃないんだから」

「大聖女がいなかったら、もうすぐ計画完了だったんだけどね」


冷めた声のドロテアに、簡単にモーリスは答えた。


「私?」

「ポーションの供給がなくなれば、魔王領の生き物は凶暴化して、人の形をしていても暴徒化するからね」

「王城にいて籠城していれば、最後に貯めておいたポーションを使えば保護され、勝手に国民ごと全滅させてくれる」


つらつらと説明をするモーリスに嫌な気持ちになる。


「国民を殺す気なの?」


そこまで愚かだとは思わなかった。


「勝手に殺しあえば、空いたスペースにガラレオの民が入るって算段だろう」

「王族はそこまでしたら、自分たちの身が危ないとは思わないの?」

「思わないんだろうね。いつだって甘い言葉に人間は弱いから、地位を約束されていれば、今の立場と変わらないと信じてしまう」


立場なんて後ろ盾が無くなれば、ただの人間と変わらないのに。


「モーリスさんは、それが嫌だったから手伝ってくれるの?」

「私だってここに住む人たちが愛しいんだ。今までは諦めていて一応外に出るルートも確保してるけど、やはり情がある」


そうか。ギリギリまで耐えてだめだったらアンリを連れて海外脱出みたいなルートも考えていたわけか。

アンリを見ると、複雑そうな顔をしていて何も感情は読めなかった。


「でももう時間がない。君がこの国に来てくれてよかった」

「時間がない?」

「もうすぐ計画失敗だとわかる。杯には神聖力が満たされていて、暴徒化はしないのだから」


あ、だから仮面舞踏会の時、時間がないって言ってたのか。


「そうなると犯人探しが始まる。妨害をしていた私も無事ではいられないと思う。ウィリアムソン家自体もね。その前になんとかしてほしい」

「モーリスが反逆すると、うちも危ないのか。ミユも匿ってるから危ないな」


モーリスの言葉に、アンリがいち早く反応する。

ウィリアムソン家が危ないならジュディ達も、使用人の人たちも危ないじゃないか。


「なんとかします。でも、この国のトップを消して、上手く運営できるか」

「組織というものは、一人で作っているわけじゃないから、どうにかなると思うが、確かに貴族は納得しないだろうな」

「計画が失敗だとわかるまで、どのくらいあると思いますか?」

「あと短くて2ヶ月くらいだと思う。長くて4か月。王城の下にあるプールが満タンになる頃には起きるという話をしていた」


2ヶ月なら、もういつばれてもおかしくない気がする。


「プールのポーションを捨てたら気付かれますかね」

「わかるだろうな。メモリと量のチェックはしているから」


じゃあだめだぁと思う。

全員、どうしようかなという顔をしていた。


「あと三日くらいで魔王領に行くので、その時に魔王と話しあいます。一週間後くらいに戻りますが連絡をとれる装置みたいなのってありますか?」

「声を送るだけでいいなら、私が作れるわよ。映像もとなると魔王に力を借りないと無理だけど」

「やった! 声だけでいいからドロテア作って!」

「いいわよ。他に気になる点はある?」

「殺したほうがいい人というか、追い出さないといけない人かな。だって残ってたらアンリとかモーリスさんの命が危ないし」


真剣に答えていると、モーリスが笑う。

笑うところじゃない。命を狙われるかもしれないのに。


「ミユキさんって、虫も殺さないような感じなのに普通に殺そうとするんだね」

「ミユは敵には厳しいんだ。そこもいい」

「この子、わたくしのことも半殺しにしようとしたわよ」

「それでいい。ミューはかわいい」

「だって! 守るべき人達を殺そうとするなら、死をもって物事の道理を分からせないと……」


そこまで言ったところで、皆がニコニコみていることに気付いて恥ずかしくなった。

どこも! 今! 笑うところがないのになんで!! 


「そうだな。無能な王族以外はフォーウッドの他は、エリオット一派にも注意したほうがいい。あれもガラレオと親交が厚い」

「エリオット一派。貴族ですね?」

「うん。あとはアーロンか。君たちと同じく異世界から20年ほど前にこの国に来て、目覚ましい勢いで衛生状態を良くしてくれた」

「インフラ整備してくれた人ってまだ生きているんですね」

「だが、あれだけ派手に動けたのは何かの後ろ盾があるからだろう。殺したほうがいいかもしれない」 


技術もすべて退化しているのに綺麗にしてくれた上に、元の世界が私達と同じなら、親近感がわいてしまう。

殺さない方が良いと思うけど、調べる必要がありそうだ。


「わかりました!頑張る!」

「では、問題がなければそろそろ終わろうか。アンリが休み中の仕事を引き受けるから、まだやることがある」

「ごめん」

「気にしなくていい。私もこの問題が終わったら、たくさん休もうと思うからね」


モーリスの言葉に少しだけ引っかかりを覚える。

でも、このひっかかりはなんだろうか。


「じゃあ、お開きにしよう。このティーセットは私が持って帰るから、君たちは気にしなくていい」


突然、モーリスが切り出して、私の肩をトンとモーリスが叩く。

景色が反転して、暗い場所に移動する。

気付けば暗い聖女宮の受付の外にいた。


(え?)


唖然としていると、リツキとアンリも移動してきた。


「なんだ? もう話は終わってるからいいけど、勝手に飛ばされた」


アンリが不機嫌に文句を言う。


(やっぱり、なんかおかしいよね)


さっきも、未来に希望を持ってる人は、休みたいなんて言わないと思う。

モーリスはどんな汚れ仕事でもできると自分で言った。

でも、そんなことを言う人間が、希望を持っているなんて思えない。

それは口に出したらいけない考えだと思って言えなかったけど。


でも。


「もう一度戻ってくる。二人とも付いてこないでね」


二人がこちらを見たのを確認してから、瞬間移動した。


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