子どもたちのその後
朝、今日はマナーの勉強が午後からなので、ドロテアと話さなければと短めのパスタを茹でてから揚げていた。
理由は簡単。時間がなかったのだ。それにしょっぱいものも大事だと思う。
ポテトチップも作ったけど、ポテトじゃないせいかあんまりカリッと揚がらなかったから、研究がいると思った。
塩味と、コンソメに似たスパイス味のものを作った。
ネジネジしてるパスタと、リボン型のパスタの二種類を買ってあってよかったと思った。
「食べたい! 食べていい?」
「ちょっとならいいよ」
リツキが機嫌よくガリガリに揚がったパスタを食べている。
昨日は初めては嫌と言われたわりに、久々にイチャイチャできたせいで楽しそうで本当に良かった。
「僕も食べる」
朝ごはんを食べたアンリが一個パクっと食べる。
「美味しい。家でも作ってもらおう」
ニコニコしているので、良かったなと思いながら、それぞれ別れて仕事に行く。
私は私で連絡を入れてからドロテアの家に行った。
ドロテアの部屋。
「モーリスと会うの? この部屋は嫌よ」
モーリスと詳しい話をしたいという話をする。
持ってきたパスタの揚げ物を食べながら、ドロテアは嫌そうな顔をした。
「何の変哲もないもの作ってきたわねと思ったけど、美味しいわね」
「時間がなかったし、ドロテアの部屋じゃ揚げ物は作れないから、これなら喜ぶかなって思って」
えへへ、と笑う。
炭水化物と油は美味しいけど太りそうで怖い。
「聖女宮の部屋を借りたらいいのかな」
「直接モーリスに聞けば。部屋くらい借りられるでしょ」
「ドロテアっていつでも話しあい大丈夫なの? 夜の九時以降になるけど」
「いいわよ。ただ当日言うのはやめてね」
「わかった。だめかもしれないけど一応二日後あけておいて」
「空けておくわ」
話が早くて本当に助かる。
「昨日、子どもを助けるのに薄めのポーション作ったから、その様子を聞きがてらモーリスさんに会いに行ってくるね」
「薄めのポーションってなに?」
「凍らせるとポーションって分離するから、それで子供用のポーション作ったの」
「詳しく説明してほしいんだけど」
ええ? 口で? 難しいな。
「記憶見る? 行方不明になった時のも見せられるし」
「ああ、そっちの方が分かりやすいから見せて」
前と同じようにソファの背もたれに寄りかかってもらって、後ろからおでこをつける。
花の蜜のような神聖力が絡みあって、過去の記憶を読み取っていった。
最初は仮面舞踏会はシャンパンを貰ったところから始まり、庭に瞬間移動するところまで。それと昨日のポーション作りと子供が元気になる様子も見せた。
「はい、終わり」
「……うん。嫌な映像」
ふつ、と花の蜜の気配が消えたので、席に戻った。
ドロテアがお茶を入れてくれたので、二人でボリボリと揚げたパスタを食べる。
「なんか。モーリス、ミユキに惚れてない?」
「アンリもそう言ってたけど、まぁどうでもいいかなって」
「バカ。会うならあの神官か弟君も連れていきなさい。本当にアンタって愚かね」
「そんな? わかった~」
「それにしても、王城の地下があんな感じとはね。色も汚いし品質も悪そう」
「見た目がポーションっていうより、汚水とかドブっぽいよね」
「あとポーションの分離って手作業なのね」
「うん。でも飲めるなら楽な手作業だし。あと、昨日、ポーションに防毒と解毒作用とかの効能みたいなの足したんだけど、薬みたいにできるんだね」
「は? 効能足したの? できたんだ」
「できたと思うけど、確認しないとわからない。難しいの?」
「わたくしはできるけど、一級レベルよ。できるなら専用のポーションが作られるはずだからね」
「あー、だから昨日モーリスさんは私に頼んだんだ。でも一個しかやってないや。今日行ったら追加でやろう」
「お人好しね」
難しいんじゃ、間違ってるかもしれないなと思いながら、話を終える。
ボリボリと食べている間に、揚げたパスタはなくなっていた。
一応二日後という約束をしたので、ドロテアの部屋からアンリの家に行く。
マナーや教養の勉強をしてたら、あっという間に夜になった。
夜。
家に帰る前にアンリを引き留める。
「二日後に話しあいしたいから、モーリスさんの所に話に行きたいけど、ドロテアが惚れてるだろうからアンリかリツキを連れていけって」
「それは正しい意見だ。モーリスの話をしたの?」
「記憶見せたら、そう言ってた」
「記憶ってミユの? そんな方法あるんだ」
「おでこをつけて神聖力を絡めると伝わる方法があるの」
「ミユはほっとくとすぐにスケベなことさせられる……」
「別におでこくらい子どもと親でもくっつけるでしょ」
「ドロテアは他人」
アンリは文句を言いながら瞬間移動をする。
いつもの廊下に着き、ノックをしてモーリスのいる室内に入った。
「こんにちは。ポーションは大丈夫でしたか?」
「ああ。みんな元気になった。見に行くかい?」
挨拶をしながら入っていくと、モーリスがにこやかに出迎えてくれた。
「そうですね。自分のしたことで体調悪くなる子がいたら嫌なので」
アンリが私に寄り添いながら姿が消えるようにしてくれる。
モーリスが瞬間移動をして、子どもたちがいる部屋に連れて行ってくれた。
連れられて移動した湿った部屋の中には、もう誰もいなかった。
扉を開けて外に出ると、全員仕事をしたり、洗濯物を畳んだりしていた。
昨日死にそうだった子も、今日は元気に大きな鍋を持っていた。
(みんな本当に元気になったんだ)
「みんな元気になって本当に良かった。流石に面倒見ていた子が死ぬのはきついからね」
独り言のようにモーリスは呟くと、仕事場に戻る。
それはきついだろうなと思ってしまった。
「でも、みんな本当に元気になったようで嬉しいです。ポーションの分離がもう少し前に知られていたら良かったんですけど」
「ポーションなんて高価なものを試しに加工しようなんて人間はいないかったからね。金にもなるし、液体を凍らせること自体、あまりないから」
「確かに、他の人はこんなにポーション作れませんもんね」
「うん。それにこの国では、幼い子どもの価値は金より低い」
寂しそうに言う言葉に、ああ、と思う。
健やかに育てば、いつか花咲くものもあるのに。
やっぱりこの国はダメなんだろう。他者を利用することが行動原理になっている者の下につく人間は不幸でしかない。
(もう、この話はやめて明るい話にしよう。暗い話をしても落ちこむだけだ!)
「昨日追加で渡したポーション、効能足してないんですけど、全部使っちゃいましたか?」
「いや、昨日は最初に作った分だけで間に合ったから」
「じゃあ追加分も効能足しますね!」
「ミユキさんは本当に規格外だね。全員にいきわたってはいないから、今日の分は分離させた後に飲ませるよ」
苦笑しながらモーリスが持ってきた巨大なポーション瓶に効能を足していく。
神聖力があって良かったと心から思った。
「二日後、話しあいしたいんですけど、聖女宮の部屋って借りられますか? ドロテアが自分の部屋は嫌だと言っていたので」
「分かった。借りておこう」
モーリスがにこやかに引き受けてくれる。
アンリは隣に立ちながら複雑という顔を隠せないでいた。
ともあれ、これで話し合いができる環境になった。
旅行前にちゃんと話をまとめておかないと、魔族領に行ってもちゃんとした話をできなそうなので、本当に良かった。
明日がわりと大きな話です。いやお菓子作ったり予定調整してくれたり、自尊心低めのわりにコツコツ頑張ってるひとは褒められるべきだよと思っています。こういう人がいないとまとまらないよねと思っています(神聖力のチートはオマケみたいなものです)




