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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は地獄の底を探る編

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仮面舞踏会と、王城の秘密(下)

気付いたら、暗い庭に立っていた。

見回すと、50mくらい先にパーティ会場が見える。


まわりからガサガサという葉擦れの音と、妙な声が聞こえていた。


(なんか、いかがわしい声が聞こえる)


仮面をつけて、パーティ会場に急いで歩いて行く。

右も左も怪しげな声が聞こえてくるので、身分を明かさないってこういうことをするって意味を理解してしまった。

なんて欲にまみれてるんだ。下では死にそうな子が働いているんですよ!

腹を立てながら歩いて行くと、不意に手が掴まれた。


「やっと見つけた」


振り向くと、ドロテアが笑いもせずに立っていた。


「ド」


口を手で塞がれる。

そうだ。身分を明かしたらいけないんだ。


「無事? なにもされてない?」

「大変だったけど、なにもされてない」


ドロテアは私の返事を聞くとホッとして瞬間移動で別の場所に飛んだ。


付いた場所は、暗い廊下だった。

アンリが走っている。


「いたわよ」


ドロテアの言葉に、素早くこちらを振り向く。


「どこにいたんだ!」

「庭。わたくし弟君を連れてくるから、ちょっと保護しておいて」


そう言うとドロテアは消えた。


「なんで消えた? なにかされてない? 何があった?」


次々に質問されて、どこから返そうと思う。


「シャンパンを貰ったら、みんなが見えなくなって……なにもされてないけど、何があったのかはここでは言えない」


すごく辛い話をあとで伝えなきゃいけないなと思って、絶望的な気持ちになる。

アンリはこちらを見つめると、ギュッと抱きしめてきた。


「うん……言いたくないなら、無理に言わなくてもいい」


アンリがぎゅうぎゅうと抱きしめてくるので、苦しい。

目の前にドロテアとリツキが現れた。


「ミッ! 生きてて良かった!!!!」


リツキがアンリごと私を抱きしめる。

アンリがウッという顔をしてリツキを離そうとしたが、離れなかった。


「犯人の特徴は? まだ会場にいるなら殺さないと」


犯人はモーリスさんだけど、敵じゃない。

でもモーリスさんの名前は今出しちゃダメな気がした。

考えて、首を横に振る。


「覚えてないか」

「えっと……あとで詳しく話すから」

「わかった。もう帰ろう」


「まだダンスしてないし、お料理とかも食べてないのに?」


暗い話はしなきゃいけないけど、なんのためにあんなにマナーとダンスの練習をしたんだ。

ご馳走もあるし、三人とも着飾ってきたのに、私のために帰るのは申し訳ない。

私の言葉に、三人は驚いたような顔をしながら、こちらを見つめる。


「えっ、庭にいたっていうから、てっきりそういう被害にあったんだと思ったけど、違ったりする?」


アンリの真剣な声に、庭……? と思う。

さっき庭で聞いた葉擦れの音といかがわしい声を思い出した。


「えぁ?! あのっ、性被害にはあってないよ!」


慌てて言うと、三人とも安堵の溜息をもらした。

そんな態度に、思わずジーンとしてしまう。

こんな私のために一生懸命探してくれて、心配もしてくれるなんて、なんていい人達なんだ!!!


「三人ともありがとう~好き~!!!! そのうち恩返しする!!!」」


力をこめていう。

思いのほか大きな声が静かな廊下に響いてしまった。

でも、せっかく用意して来たんだから、本来ほっといてもいいはずなのに! みんな性格がよすぎるんだ!!

三人は私を見つめながら、ため息をついたり下を向いたりした。

なんでそんな態度。


「詳しい話は後で聞くとして、こんな懐きやすいんじゃ、やっぱりパーティ会場に帰すのは危険ね」

「さっきはシャンパンを受け取ったら幻覚が起きたみたいだから、食事に触らせたらいけない」

「ダンスも何曲も踊ってたら狙われて攫われるな。広間で踊るなんてダメだ」


口々に過保護なことを言われて、なんのためにマナーもダンスも勉強したんだと思う。

物語の中の女同士のいがみ合い、ダンスでのロマンチック、豪華なパーティー演出、どれも私には起きないのか!


「でも、あんなにダンスの練習したのに!」

「しょうがないわね。一曲だけよ」


ドロテアは私達全員に神聖力をかける。

次の瞬間、バルコニーにいた。

パーティーをやっているのは一階なので、二階のバルコニーには誰もいない。

だけど一階からの音楽が聞こえていた。


「で、私を入れて誰と踊るの?」

「ドロテアも入るの?」

「そのほうが面白いじゃない」


ええ、でも一曲でしょ? 誰を選んでもダメじゃない?


「全員と踊る……!」


私の叫びに、アンリはやっぱりねという顔をして、二人は呆れていた。


「全員と踊りたいの? 変な子」

「ミユはいつも選べないんだな」

「じゃあ区切りごとに変わっていくか」


音楽が終わって、次の音楽が始まる。

最初はドロテアからだった。

初めて踊ったダンスは、あっちへ行ったりこっちへ行ったりで目がまわる。


(これっ、絶対ロマンチックとかそういうのじゃない!)


三人は笑ってるし楽しそうだからいいけど、お手玉の玉にでもなった気分だ。

最後はリツキとアンリが同時に受け止められて、こんなんだっけ? と思いながらポーズを決めた。

初めての舞踏会はマナーも使わず、ダンスも正直よく分からない。

まぁでも結果的には楽しかったので、よしとした。







帰りは、行方不明時にあったことを話すために、リツキの家にみんなで行くことになった。

ドロテアとリツキが食事を買っている間に、私とアンリが家にある盗聴侵入防止のガードをドロテアが入れるように張りなおす。


服を着替えて、アンリが飲みたがったのでロイヤルミルクティーを作っていると、残りの二人も到着した。


「久々に外出許可が出たから買い物したけど、楽しいわね!」


ニコニコ顔のドロテアに、荷物持ちのリツキは疲れきっていた。

テーブルの上に、二人が買ってきたさまざまな屋台料理が置かれた。


「ちょうど良かった! ロイヤルミルクティー作ったのお酒入れたい人はこれ垂らして。ドロテアは自分の神聖力で甘さつけた方が美味しいかも」


お酒の瓶を置くと、ドロテアはパッとお酒をミルクティーに入れて飲む。


「ちょうど喉が渇いていたけど、ミルクティーに比べて濃いのね。美味しいわ」

「ロイヤルミルクティーはミルクが多いんだけど、私は煮るからお茶の味が濃いの」

「僕が作ってもなんか違うんだ。ミユが作ると美味しい」


二人が感想を言うなか、リツキは無言でお酒と赤いポーションを入れて幸せそうな顔をする。

ポーションは神聖力と違ってあんまりお茶には混ざらない。

私に言えばいいのにと思ったけど、幸せそうだったからまぁ良いかと思った。

そんなこんなで楽しいお食事会&地獄の報告会が始まった。



全員でもぐもぐ屋台料理を食べる。

美味しいのもあれば、スパイスがクセがあるな~みたいなものもあって面白い。

だけど、アンリとドロテアは口に合わないらしくしょんぼりとしてしまった。


「お前らはさぁ、口が貴族なんだよ。もうちょっと庶民の味に慣れろ」

「なんかあったかな。なにか作るね。作るついでに仮面舞踏会で遭った話をするよ」


リツキは文句を言いながら食べているけど、口に合わないんじゃ仕方ないなと思って立ち上がる。

パスタと、肉と根菜をオーブンで焼いた感じの奴ならすぐ作れるし、食べられそうだ。

グルメにお出しする料理なんてないけど、アンリが喜んで食べてたものならいけるかと思い作りはじめた。


「ちなみにこれから話す登場人物は敵じゃないのを証明するために私を呼んだと思うので、喧嘩しないでね」


三人に注意をしながら、パーティーで遭ったことを話していく。


モーリスが呼んだという時は、アンリが嫌な顔になり、子どもたちが利用されているという時は、リツキが腹を立てていた。

ドロテアは、ただつまらなそうな顔をして話を聞いている。


「確かに子どもに神聖力を使う時は薄めにって基本があるから治療もそれなりに大変だし、飲ませるのは3級か4級聖女のポーションが多いわね」

「ただ階級が低い聖女のポーションは効果も薄いし、別の毒性もある。だけど、水で薄めても濃いポーションは混ざらず濃いからね」


一通り聞き終わった後に、ドロテアは機嫌悪そうに言う。

ロイヤルミルクティーが飲み終わったカップにそのままお酒を注いで飲みはじめた。


「ミユが魔王を助けた時に死にかけてたらしいけど、やっぱり神殿はもう魔王の味方じゃないのかもな」

「確か、聖女が政治利用されるようになったのも、魔王がわたくしと婚約破棄してからだから、二年前くらいのことね」

「でも、ポーションって上手くやっても一年くらいしかもたないんじゃなかったっけ」

「保存が上手くできれば数年でも可能かもしれないけど、どうなのかしらね。どの程度前から貯めていたかもわからないし」


三人が話し合うのを聞きながら、お皿にカルボナーラっぽい謎のクリームパスタを盛り付ける。

ちょうど良く根菜と肉が焼いたのもできたので、それはそのままテーブルに出すことにした。

みんなお皿を出したり、テーブルの上のものを片付けてくれたので、すぐに食べることができた。


「うん。美味しい。家庭料理って味ね」

「屋台は肉の油が臭いのがだめ。ミユが作るのは臭くない」

「お前ら、ミューが優しいからなんとかなったけど、良くないからなそういうの」


怒るリツキを無視してもぐもぐ食べてくれる二人を見て、よかったなぁと思う。

それにしても確かに魔王は死にかけてたし、行方不明の聖女の話をしても無視してたらしいから、味方じゃないのは確かだ。

でも魔族領の属国扱いのこの国が、そんなことをしたら普通はダメだよね。


「魔王の味方じゃなくて、他国と政治的につながりがあるってことは、魔王を切って他国と手を結ぶってこと?」


残っている屋台料理を小皿によそいながらしゃべる。


「やっぱり、そういうことか」

「じゃあ、魔族領に攻撃でも仕掛けようっていうの? 魔王にも話しておかなくっちゃ。一週間後に魔族領に行くから貴方も来るわよね。ミユキ」

「え、私? 一週間後ならいいよ」


っていうか今名前呼んでくれた?


「待って。ミユ、魔族領にいくの?」

「行ったことないし。二人も一週間くらいお留守番できるでしょ?」

「一週間も?! 魔族領にも変態はいるんだよ? ドロテアは魔王とイチャイチャしててミユなんてかまってくれないから危ない」

「失礼な奴ね。魔王だって仕事があるんだから、危ない目になんてあわせないわよ」

「ドロテア、休めないから俺を雇って。金なら払うから」

「そもそも雇うつもりだったからそれはいいけど、ちゃんと護衛はするのよ」

「やったー!!」

「僕もどうにかして行く。モーリスに頼んででも……」

「わたくしはミユキだけで良かったのに、なぜかいつも二人が付いてくるのね」

「ドロテアが名前呼んでくれた!」

「……おん。そ、それがなんだっていうのよ。別に前もたぶん呼んだことあるでしょ。忘れたけど」

「そうだっけ」


少し照れた顔をして戸惑うドロテアと、焦る二人を見ながら、屋台の料理をほおばる。

たぶん、この件に関してはモーリスが詳しいだろうから、ちゃんと話す必要があるなと思っていた。


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