傷ついてもイチャイチャしたい人達
三人でご飯を食べながら、昨日あった絵だと思ったら性風俗だった事件を伝える。
後からモーリスと廊下で話した話は食事が終わった後に話すことにした。
「というわけで、モーリスさんは過酷なお仕事をしているので、責めたらいけません」
話し終えると、二人とも具合が悪そうな顔をしていた。
「女もよくはないけどさ、顔がいい神官は男の相手までしないといけないわけ? キッツイな」
「吐きそう」
アンリの手は全然動いていなかった。
それはそうだ。聖女だけかと思ったら神官もだなんて。しかも私より危険度が上だし親族が関わってる。
「ミユ以外の人間を抱くのは嫌だ。逆はもっと嫌だけど」
「安心して! アンリが売られたら私が全部買ってあげるから! ポーション作ってお金を稼ごう」
「うぅ、ミユならこっちがお金あげるのに……」
アンリは全然食べていない。可哀想だ。
「お前のこと好きじゃないけど、この国の制度変えてやるから、安心しろよ」
「嬉しいけど、こんなとこでそういうこと言うなよ。聞かれたらどうするんだ」
「あ、大丈夫。さっき防音と勝手に入ってこれないように家全体にガードかけといた! もう神聖力ないからポーション飲んだけど」
「そんなことできるようになったの?」
「うん。見られたくない時に誰かさんに勝手に入ってこられても困るからドロテアに教えてもらった。ドロテアも破れなかったから凄いらしいよ」
だからアンリに見られないようにかけたのだけど、心配させるよりマシだから言ってしまった。
アンリは私の言葉に明らかにショックを受けた顔をしていた。
「なんでそんな酷い」
これはまた見に来るつもりだったっぽいな。
リツキは、私とアンリを見比べて、色々察したようで、ドン引きした顔をしていた。
「なに、こいつ勝手に入って見てたとか? 最悪だ。なにを?」
「ハイッテナイヨ」
焦るリツキに、アンリは嘘と分かる口調でフォローした。
「絶対入ってるじゃん。泊めるの嫌だ! いや、お兄さん悪くないわ。勝手に入る奴が悪い。お前はもう二度と勝手に人のプライベート空間に入るな」
「傷ついてるんだから責めないでほしい」
パクパクと食べながら怒るリツキとは反対に、アンリはしょんぼりしている。
「リツキ。この世界は多分プライベートとかの感覚が薄いんだよ。お兄さんの件もあるし許してあげて」
「ミューは甘いよ。俺らがしてるとこ見て興奮してる奴、ぜんぜん可哀想じゃないだろ」
「別にお前では興奮してない……」
「俺と一緒にいる時は俺のミューなの! お前の件は気の毒だけど、お前が見てなかったら気付かなかったんだから、その趣味を直せよ」
至極まともなことを言いながら、リツキは完食していた。
「可哀想だけど、仮に惚れられてたとしてもだよ? 他の奴とできてるなら大丈夫だって。俺、ミュー以外と本当にできないもん」
「お前だってドロテアが化けたミユに反応したらしいから、モーリスと同じことだよ」
「ああ、似てるってそんな?」
リツキが口をつぐんだ。
それは似てるってレベルではないのでは。
つまりモーリスさんはやりたくない相手の見た目を変化させてやってるってこと? それが自分だとしたら絶対見たくない奴だ。
ああ、だからアンリは朝、私に付いてきてほしかったのか。それは早く言ってほしかった。何かあっても殴りに入れない。
「アンリ! かわいそう……」
抱きしめてあげたい! と立ち上がって近寄る。
「ミユ……」
アンリは私の腰を抱いて、顔を胸に押しつけた。
(いいけど、そういうのは大丈夫なのか~い)
とりあえず頭をギュッとした。
「俺もやりたい! 左胸は渡すから、右胸はこっちにしてよ」
「それじゃ顔が近すぎるだろ。馬鹿」
「お前の顔に興味ないよ! ミューの胸にギュッとされたいわけ!」
「順番でいいでしょ。順番って言うのもなんか嫌だけど。そういうつもりじゃないのに」
あ~ぁ、なんだこの状態。変なの。
暫くしてから、アンリがご飯を食べる元気が出てきたようなので、リツキの頭を抱きしめた。
抱きしめながらモーリスと廊下で話した内容を話す。
流石に、アンリの代わりにお兄さんがその仕事を追加で引き受けてることは言えなかった。
「モーリスが仲間になれば詳しい話が聞けるだろうけど、モーリスと長時間会うのか」
「どちらにしても会話が聞かれていたのは確かなんだから、アンリがよければ私は仲間に入れても良いと思ってる」
「スパイじゃなければ敵にするよりは味方にした方がいいけど、どうしようかな」
二人で話しているけど、リツキはさっきから無言だった。
「リツキ、生きてる?」
頭を離してみる。
「なんで離すの。幸せだったのに……」
リツキまでぽやぽやしていた。
「終わり終わり。これはそういうんじゃないから」
そういうつもりでやってないことが、どんどんそういう感じになってしまって残念すぎる。
「もう寝る準備しよう。今日は僕の家に泊まる予定だったから、ミユと一緒に寝る」
「同じ屋根の下にいるのにミューがお前といちゃつくのはストレスで死ぬからダメだよ」
「僕らの見てる?」
「見ない! なんだこいつ倫理観がおかしいな」
「抱きつくくらいならいいけど、それ以上は私も嫌だから、今日も三人で寝よう」
「はぁ……それでもいいけど、弟が邪魔だ」
「泊らせてもらってる奴の言い分じゃなさすぎるだろ。食器はお前が泊め代で洗っておけよ」
食器を片付けながらリツキは台所へ歩いて行く。
アンリもやっと完食し終わって二人で食器を片付けた。
マットレスを神聖力で運んだり、なかなかの重労働をしているうちに、夜はふけていく。
お風呂から出て、自分の部屋の前まで行く。
中で騒いでいる声が聞こえた。
「なにか喧嘩してる?」
ドアを開けると、アンリとリツキがマットレスの上で向かい合って座っていた。
リツキの足元には練習中の膜が転がっている。
「ミユ、こいつに避妊具のこと教えた?!」
あ。
「教えたから何だって言うんだ」
不機嫌な顔をしながら、リツキはピンピンと指に膜をはる練習をしている。
「だって、アンリが苦戦してるからリツキはもっとかかると思って。でも私は練習してないから約束は破ってないよ」
「もう上手くなってるよ。ミユはこいつのしつこさを分かってないんだ」
「俺の才能が怖いか。ポーション飲みながら頑張ったから薄いぞ」
「僕の方が薄いけどね」
二人でパッパッと指に膜を張る。
見せてもらったら、なんとなくアンリの方が薄い気がした。
「確かにアンリの方が上かも」
アンリがガッツポーズをして、リツキがマットレスの上に転がった。
「まぁでも、もう少し薄くしたい」
確かにドロテアの奴に比べると少し厚い。
いつの間にかドロテアのやつもアンリのやつも消えちゃったから思い出補正かもしれないけど。
「もう寝ようよ」
「うん」
「待って。キレイにするわ」
リツキがそこらへんに落ちた膜のゴミをまとめて横に置く。
私が真ん中になり三人で寝た。
アンリがスス、と近づいてきたので、抱きつくくらいはいいかと思って抱きしめる。
きっと、昨日の一件で眠れてないのだ。可哀想に。
リツキが後ろから抱きついてきたので、これもいいかと黙っておいた。
(これ、おならとかしたくなったら地獄だな)
そんなことを思いながら、目を閉じる。
意外なほど何もなく、みんなそのまま眠った。
それから、あっという間に仮面舞踏会の日に近づいた。
アンリの家はできたものの、なぜかその家には帰らず、こちらの家に帰ってきている。
リツキは帰れよとはいうものの、なぜか情がわいてしまったらしく舞踏会までは許すと言っていた。
なので、夜はアンリの家に泊まる日はアンリを抱きしめ、リツキの家に泊まる日はリツキをという感じにしていた。
たぶん、今はリツキにとっても会話をしないとマズい期間だと思っているので、ちょうど良かったのかもしれない。
二人とも友達いないから、これはこれでよかったのかもしれないなと思っていた。




