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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は地獄の底を探る編

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聖女宮探索で知る、モーリスの秘密(上)

朝、少しだけベッドの部屋で神聖力を抜いてからアンリの家に移動する。


今朝のリツキは本当にイキイキしていた。

なんなら道に生えてる木におはようとか挨拶してた。本当に浮かれると人間はああいう行動に出るらしい。

昨夜アンリは見てたかなと不安だったけど、そんな様子はなかったのでホッとした。

ドロテアの家に行ったら、盗聴と盗み見を止める方法を教えてもらわないとと思う。


午前中はマナーの勉強をして、午後は厨房を借りて、料理長に正しいオーブンの使い方を教えてもらう。

考えた結果、料理長がパイに似たレシピを知っていたので、コンポートにした果物を使ったアップルパイにした。

カスタードも薄くおいたけど、ジャム系にしてカリッとさせた。

料理長も一緒にパイ生地を作っていたので量も多く、アンリの分もたくさん作れたし、料理長もおいしそうだった。

家に一度戻って少しだけおすそ分けした後、ドロテアに連絡を入れて泊まりに向かった。







「ドロテア~泊まりに来たよ~! 盗聴と盗み見を神聖力で防ぐ方法を教えて!」


ドロテアの部屋に入った途端、大声で言う。


「なんなのよ貴方。いきなり」

「忘れないようにって思って。今日はパイ持ってきたよ」

「まぁ、教えるって言ったからいいけど」


二人でソファに座って、パイを食べる。


「似たのを食べたことあるけど、こっちはカリッとしてて美味しいわ」

「料理長と一緒に作ったからアレンジみたいな感じだけど、美味しくできて良かった!」

「こういうのは作れるのに神聖力のコントロール力はないのよね」


ブツブツ言いながら、ドロテアは紙に何かを書く。

とてつもなく長い文字列は手紙のようだった。


「これを読みながら範囲を指定すると、侵入者と盗み聞きからガードされるはずよ」


ペラ、と紙を渡される。

鑑定をかけて読んでみると、ちゃんと読めたけど意味は分からなかった。


「さ。隣の部屋に貴方だけ入れるようにガードをかけてみて」


言われて隣の部屋を四角い箱で囲うイメージをしながら、意味の分からない文章をずっと口に出して読んでいく。

読み終わった頃には、気疲れしていた。


「さて、どうかしら」


ドロテアが立ち上がり、隣の部屋まで歩いて行った。

手前で足が止まる。


「入れないわ。あなたは入れる?」


立ち上がって、隣の部屋まで歩いて行く。

すんなりと中に入れた。


「喋ってみて」

「ドロテアのばかー」

「うん。なにも聞こえないわ」


あ、本当になにも聞こえてないみたいだ。


「壊せるかやってみましょう」


ドロテアがグッと力を入れる。

頭上にある神聖力がどんどん使われて減っていった。

グン、と空気が揺れる。


「だめね。ガードが厚い。凄いわね。大聖女だからかしら」


隣の部屋からドロテアの近くに近寄って、減った分の神聖力を渡す。


「えっ、神聖力? いらないわよ」


そう言いながら私の頭上を見たドロテアは、そのまま固まる。


「なに、この神聖力は。大聖女ってこうなの?」

「ずっとイチャイチャしてたから、神聖力抜いてはきたけど、ちょっと加減がわかんなくて……やっぱり余ってる?」

「そうね。今日は外に住んでる三級聖女のふりして聖女宮を回らせようと思っていたのに、こんな神聖力の量じゃ名前を変えてもバレるわよ」

「受付しないとバレるんじゃ」

「もう受付してもらってるの。ボニーって言うんだけど、わたくしのポーションをあげることで許可をとってある」

「そうなんだ。ご親切にありがとう~」

「でも、そのせいで大きいポーション瓶なんかもうないの」


ないのか……。

もう袋でもいい気がしてきた。

膜でもいけるんじゃない? 


「私が作ると厚くなった膜みたいなのにポーション入れてみる」

「あー、それなら入るかもしれないわね。その前に隣の部屋に作ったこの厚いガード取ってからにして」

ドロテアに言われて、私の作った四角いガード壊れろと思いながら、ガードがある空間を触る。


「壊れた?」


ドロテアが空間を触ると、さっきドロテアの手が止まっていた場所に手が通るようになった。


「壊れたわね。作るのも壊すのも簡単にできるなんて、雑なだけなのね」

「雑……」


女性らしくないけど、料理も目分量で作るところあるし、そうなのかも。

でも、これでアンリの覗きを防ぐことができる! 本当に良かった。


「ドロテアのおかげで助かった! ありがとう」


書いてもらった紙を忘れないようにポケットにしまう。


「べ、別にいいわよ。早くポーションにしなさい」


照れるドロテアに笑いながら、しぼんだボールのような膜を作ってその中にポーションを入れていく。

バレーボールのような大きさのぶよぶよとした大きいポーションが3個くらいできた。怖い。

明らかに前よりできる量が増えてる。


「三級にはまだ多いけど、まぁいいでしょう。食事に行きましょう」


ドロテアはそういうと、私を神聖力でボニーという女性に変化させた。

二つにわけたみつあみの可愛らしい女性だった。


「話し方は、これを見て、大体同じ感じで。見た目と名前は変えられても声は変えられないから注意して」


ドロテアにプレートを貰って神聖力を流すと、画像が現れる。


「ヒヒっ! こんちは~ボニーでっす! テキトーにやっちゃっていいっすよ。問題になってもどうにかなるんで!」


そう言って画像が消えた。この前のリツキが襲われた時と同じような感じで、記録した映像を保存できるみたいだ。


「真似しやすそうな人だ!」

「声もあなたと割と似てるから」

「似てる? 自分の声とか聞いたことないからな」

「じゃあ、30分くらいウロウロしてていいわよ。人には付いて行かないでね。時間になったら話しかけるから」

「分かった」


笑顔で答えると、いつの間にか廊下に移動していた。





聖女宮は外からは神殿のように見えて内部は分からないけど、2階建ての大きな建物だった。

ドロテアの部屋は2階の一番奥に配置されていて、他の部屋より大きい。

まわりの部屋からは音がせず、シンとしている。誰かが出てくるような気配もなかった。


(ドロテアの部屋のまわりは空き部屋なのかも)


一階に降りると、聖女が沢山いる。

みんなが住んでいるのは大体一階みたいだ。


売店のような店を見たり、中庭の外の洗濯物を干すスペースなどを見たりする。

一か所、中庭の一角に人が溜まっている場所があった。


何をしているのかと見に行くと、ポーションの買い取り業者と、物販をする業者がいた。


(食堂以外でも物販できるし、ポーションも買い取ってもらえるんだ)


自分が言われたポーションの値段よりは随分安めだけど、四級まで買い取ってもらえるみたいだ。

売っているものを見ると、お菓子や顔がいい人のイラストみたいなものが売られていた。


(モーリスのイラストも売られてる。推し文化ってここにもあるのか)


一枚買って、今度会った時に見せてからかおうかな。こういうのって知らないだろうから。

モーリスの絵を買おうと値段を聞くと、けっこう高かった。


(写実的なものだから高いのかな? 一枚ずつ手書きなのかも)


別にそこまで欲しくもないから、買うのやめようかな。


「お客さん初めてですよね? 今なら初回限定半額ですよ!」


そう言われて、じゃあ買ってみようかなと思う。

お金を出すと、絵じゃなくて文字がゴチャゴチャ書いてある札を貰った。


「なんですか、これ」

「えっ?」


何を言っているんだという顔をされる。

まわりの聖女からも、なぜかジロジロと見られてしまった。

あ、文字を読めるようにするかと思って、神聖力で文字を読めるようにする。


部屋番号と時間が書いてあった。


(ンンン……?)


「ちょっとボニー! あんた結婚したのに、何そんなもの買って!」


聖女の一人に言われる。


(ボニーって既婚者なの? ってより、どんな話し方だったっけ?)


「これ見たの初めてなんすけど、絵じゃないの?」


記憶からなんとか思い出して真似してみる。


「これ神官に抱いてもらうやつ!」

「な、なん……? え?」


抱いてもらうの? なんだそれ! 怖い! 性風俗ってこと?! アンリのお兄さんが性風俗をしている!

私は買ってしまった業者に振りかぶって札を突き返す。


「知らないで買ったの! 返品します!!」

「ダメだよ! 返品はできない!」


業者に乱暴な口調で断られてしまった。

困るよ! ここでモーリスに会うのは困る!!

助けてクーリングオフ!! 異世界じゃ返品を受け付けてくれない!!


「いらない! ねぇ、あげる!」

「いやよ。顔はいいけどソイツ乱暴らしいし」


話しかけてきた聖女に札を渡すと、投げ返されてしまった。

知らない一面を知ってしまった!!

アンリの抱き方は優しいのにお兄さんは乱暴らしい。乱暴なのにお金を貰うとは最悪じゃないか。


『ついたわよ。食堂にいらっしゃい』


脳内にドロテアの声が聞こえる。

だけど返事をする術を知らない。


(くそー! とんでもないことになった!!)


走って食堂に向かう。

ドロテアは食堂の前に立っていた。


「ドロテア! 間違って神官買っちゃった!」

「……はぁ?」


ドロテアは何を言ってる? という顔をした。



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