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【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は地獄の底を探る編

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アンリが最後まで抱かない理由

朝からアンリの家に行く。

屋敷に入った途端、ジュディが走ってきた。


「ぼっちゃんが起きてこないんですけど」

「ええ?」


朝と言っても、もう食事はとっくに済ませて仕事をはじめる時間だ。

アンリの部屋の扉をノックしたが返事がない。

仕方がないので中に入る。


「アンリ、生きてる?」


布団がもぞ、と動いた。


「布団はがしていい?」

「……やだ」

「仕事する時間だけど、体調悪いの?」

「悪くないけど、昼過ぎまで休みって連絡はしたよ」


(じゃあいいか)


「どうしたの? 嫌なことでもあった?」

「……」

「ミユが、あいつに先に裸見せたから」


……?


「……え」


布団の中から聞こえてきた言葉に思考が止まる。

裸って、昨日のくらいしか記憶にない……ということは。


「勝手に見てたの?!」

「ムリヤリさせられそうになったら助けようと思って。どうせ膜の練習中で暇だったし」

「いや、その優しさは嬉しいけど。でも、そういうのはダメだって言ったよね?!」


この国にプライバシーはないのか。

なんなんだ。それでショックを受けてるのか。そんなバカな。


「待って。勝手に見られてたほうがショックなんだけど。それで勝手にショック受けられても知らないよ!」


こっちが寝込みたいくらい恥ずかしいのに、相手が寝込んでるから怒ることくらいしかできない。

勝手に私の裸を同時に二人に見られていたというこちらの葛藤はどうしたらいいんだ。


「わかってるけど……」

「アンリは私から初めてキスされてるし、他のこと全部はじめてをしてるんだよ。リツキなんて事故みたいなキスと昨日のしかないんだから」


世の中の基準からいえば、私の方が悪女なんだろうけど、こっちだってそれなりに葛藤があるし。

リツキだってリツキの葛藤があって、だからこその昨日だし、見なければ傷つかないものを見たのはアンリだ。

システム上ではリツキが相手のところをアンリを優先してるのは間違いなく私の意思なのに、そんなの勝手だ。


「昨日は下はつけてたし……それなのに拗ねるんなら、今日はしない!」


腹が立って強く言う。

アンリがのそのそと布団から顔を出す。


しょんぼりした情けない顔をしていた。


(あーぁ。またうさぎみたいになってる。かわいい)


思わずふわふわしている頭を撫でる。


その手をアンリが掴んだ。


「僕にも見せて」

「今?!」


朝から裸を?!

夜にしない? と思うけど、めちゃくちゃ落ちこんでる人に言いにくい……。


別に、いいか……。

でもジュディ達が待ってるし、あとから部屋に入ってこられるとかは恥ずかしすぎる。


「えっと……いいけど、ジュディ達に声かけないとダメだよ」

「連絡するから神聖力くれない? 寝てないから、まだ回復してない」

「神聖力くらい、いくらでもあげる」


神聖力をアンリに渡す。

アンリって一晩でこんなにボロボロになるんだ。なんか可愛すぎて心臓がギュンギュンしちゃうな。

私ってそういう怪しい心があるのか? と思いつつ神聖力を渡していると、アンリの顔の見た目がキラキラしてきた。


「なんか見た目が綺麗になってる! なんで」

「洗うのとか整えるのが面倒くさいから神聖力でなんとかしてる」

「それはそうだけど、私にも教えてほしい!!!!」

「鏡見ながらこうなれって練習していくしかないよ」

「説明が雑!」


いつだって神聖力の説明は雑なのかもしれない。


「さて、連絡も終わったし。ミユは昼すぎからマナーの先生が来るから時間がない。しよっか」

「う、うん……」


ぷちぷちとボタンを外していく。


「僕が脱がせるから、こっちにきて」


言われて近づくと、ボタンをはずしてくれる。

だけど、その手がかなり緊張しているように思えた。


「そういえばドロテアが行ってたけど、男の人って興奮しすぎると神聖力のコントロールができなくなるらしいよ」

「え、そうなんだ。じゃあこっちが先か。別にそこまでしないけど一応テスト」


アンリが服を脱ぎ始める。

リツキの筋肉質の身体とは違った、均整のとれた身体を見てしまった。


(ああ~~~~恥ずかしい~~~~~こんなの見てられないよ!!!!)


アンリを見ないようにして、自分でバッと服を脱いでしまう。

パパっと畳んでベッドにもぐりこんだ。


「昨日も思ったけど、ミユってこっちの身体にも興奮するの?」


笑いながら、アンリも中に入ってくる。

目の前にある肌色に、布団をギュッと掴んでしまった。


「昨日の話はしないでっ」


緊張しているだけだけど、緊張と興奮のふたつにどのくらいの差があるのか、私にはよく分からない。

心臓がドキドキしてしまっているから、興奮してると言われたらそうなのかもしれない。


「手、外して」


布団を掴んでいた手を外されて、布団を剥がされる。ジッと見られる。


「寒くないようにするから、よく見せて」


アンリの手が重なる。

抱き寄せられて、触れた素肌に震えた。


「最後までしないの?」

「きついけど、しない。大切にしたいから」


別にいいのになと思いながら、ちいさく頷く。

温かい素肌の感覚に言葉が出てこなかった。

朝からしていいことかなとも思う気持ちも、こっちも触らないとなという気持ちも快楽に溶ける。

泣きたくならなくて安心感しかないのは、アンリが話しかけてくれるからだろうか。










「ミユ。起きて。ご飯食べないと」


ふ、と意識が戻る。

目を開けると、アンリに頭を撫でられていた。


「あれ? 寝ちゃった?」


頭がふわふわしてる。


「気絶かも。この前も寝ちゃったし。マナーの勉強やめとく?」

「ううん……気持ち良かったし。大丈夫」


でも頭がふわふわするから、勉強に身が入るかわからないな。


「アンリは本当にこれで満足なの? 触ったりはしたけど」

「うん。きっついけど、焦らなくてもいい」


でも、ここまでしたら最後までと一緒じゃないかな。

私の方が焦らされている気分がすごいけど、恥ずかしいから言えない……。

服を着ながら考えていると、アンリも服を着ていた。


「具合が悪いとかはないよね?」

「ないない。気分はいいくらい」


心配しているアンリを安心させる為に、明るく言う。

私の言葉に、明らかに安心したようでホッとしていた。



「じゃあ、お昼を用意させるから、ジュディに服を着替えさせてもらって。先生は身分が高いから今の服だとダメだ」

「分かった。じゃあ着替えたらご飯一緒に食べよ」


アンリに言ってから、瞬間移動で自分の部屋に行く。

シンプルなドレスのようなかわいいワンピースが用意されていた。

ジュディが来たので着替えて髪を整える。


忙しい……と思いながら、食事をしに行くと、今日は使用人の人は室内にはいなかった。

アンリの目の前に座ると、ジュディも外に出されてしまう。

食事はもうすべて出されていて、どれからでも手を付けていい状態だった。


「なんか今はあんまりミユ以外といたくなくて。どうせ仕事でそうもいかないけど」

「わかるよ。もっとゆっくりしたかったよね」

「朝にやるもんじゃないな。一日仕事に身が入るか分からない」

「そうだねぇ」

「外的要因で進まないと思ったのに、嫉妬でやってしまった」


嫉妬だったんだ。


「後悔してるの?」

「もっと余裕持ちたかったって反省はしてるけど、後悔はまったく。最後まではしてないし」

「なんで最後までしないの」

「だって、ミユはいいって言ってても本当に良いのかは違ってて傷つくからね」

「……え」

「多分、人に合わせることに慣れてて自分の気持ちが分からないんだ。求められて納得する理由があれば受け入れようとする」


食事をしながら話すアンリを、手を止めてジッと見てしまう。

自分がそう思われていたなんて知らなかった。


「だけど、本当のところは納得してないから体と心で食いちがって傷つく。だからこの前あいつにも言っておいたし」

「リツキに?」

「うん。だって、あいつはミユが自分のことを汚いとか思うまで思いつめてたなんて知らないからね。同じ失敗する」


だから昨日、デートとか言い始めたのかな……。

リツキは自分の辛い出来事とかは追い詰められないと話さないから、わからないんだよね。


「なんか、色々気を遣わせてごめんね」

「別にいいよ」

「でも私、最後まで本当に大丈夫だからね」

「ミユはさぁ……」


少し呆れて照れながら食事をするアンリを見ながら、食事を終える。

焦らされている気がしてたけど、優しさなんだから甘んじて受け入れよう。

なんだか食事がいつもより美味しく感じた。




食事を終えて、しばらくしたらマナーの先生が到着した。


「初めまして。グリエルマ・カテラルです」


先生として呼ばれたのは、濃い灰色の髪をした優しい雰囲気の女性だった。


「初めまして。ミユキと申します」


姓がないというのは恥ずかしいけど、転生してきた人間には姓をつけないらしいので仕方ない。


「本日は奥様になられるために教育が必要ということで呼ばれました。よろしくお願いいたします」

「えっと。仮面舞踏会のためじゃないんですか?」

「仮面舞踏会は、仮面で誰かわからないという認識ですので、それほど厳しいマナーは必要ありませんよ」


そうなんだ。知らなかった。


「ただ、仮面をつけていても歩き方や作法、優雅さなどは分かりますから、悪目立ちしないようにきちんと学びましょう」

「わかりました! よろしくお願いいたします」


午後いっぱい使って、ビシビシと鍛えてもらう。

身が入るかなと思っていたけど、相手がいることだから、流石にちゃんとなった。


グリエルマ夫人は褒めて伸ばす派の先生らしく、ストレスフリーで本当によかった。



夜も夜で、昼と同じことをした。

これ、本当にもう最後までしたいかもと何度か思ったけど、エロい女と思われても嫌なのでいえなかった。


あの時、傷ついていた私はどこへ行ってしまったんだろう。

今ではモンモンとしてしまう変な人間になってしまった。

アンリはもともと問題がなかったけど、リツキも昨日のことで心の中でハードルが下がったように思える。

デートくらいで? そんな簡単な人間だったっけと思うけど、そんな人間なのかもしれない。

人間の心って難しいなと思ってしまった。




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