ドロテアのお誘いと、リツキからデートのお誘い。
朝
厨房を借りられたのでミルクレープを作る。
(本当はお店の買いたいけど、ドロテアのところに行くときは神聖力がいるから隠せないしなぁ)
お酒入りのカスタードクリームと生クリームのものと、生クリームと果物を挟んだものの二種類を真っ二つに分ける。
片方ずつ交換して持っていくことにした。
なぜか厨房にはトリカカポの生クリームが常備されていたので助かった。
「こっちはアンリに。戻ってきますけど、悪くならないうちに出してください。余った分はみなさんで食べてください」
料理長が食べたいと言っていたので、そう付け足しながら言う。
どちらも15センチくらい作っているので余りにくいサイズ感だけど、手作りだし余ったら自分で食べるしかない。
ドロテアに連絡を入れてから、ケーキを籠に入れて準備をしてから、ドロテアの部屋に瞬間移動する。
部屋に入ると、ドロテアが荷造りしているのが見えた。
「あら。来たのね。今日はお菓子があるじゃない」
「うん! ミルクレープっていうやつ。こっちがお酒入りで、こっちが果物入り。クリームもちょっと違う」
「わたくしのために作ってきてくれたの?」
「うん。このまえ喜んでもらえたから嬉しくて!」
「……素直に言われると照れるわね。じゃあ食べましょうか」
ドロテアに紅茶を入れてもらって二人で食べる。
「美味しい! あなたってお菓子を作るのが上手ね」
迷うことなくお酒入りの方をお皿にのせたドロテアは美味しそうにほおばる。
ドロテアはお酒入りが好きそうな感じと思って今回も入れてみたけど、やっぱり好きそうだ。
「神聖力のコントロール力と裁縫の力はないけど、こういうのはできるみたい」
「コントロールが下手なの? 練習はウィリアムソン家でしているのよね?」
「うん。これ見て」
ポケットから朝、指に作ったアンリと私の膜を引っこ抜いたものを取り出す。
「ドロテアから教えられたの。これがアンリがやったやつ。こっちが私」
私が作ったものを見て、ドロテアの目が丸くなる。
「へたくそどころの話じゃないわよ」
ドロテアが驚いている。そんなに。そんなにひどい?
「指貸して」
指を差し出すと、ドロテアがパッと指に同じような膜を張ってくれる。
「うっすい!」
ドロテアが作ったものは、あるかないかわからないくらいなのに、破けない。
こう見ると、アンリの方のほうが倍くらい厚い。
「神聖力がありすぎて出力が高くなっちゃうのかもね。でも不安定だから直すのは難しいわよ」
「私みたいなやつはどうしたらいいんですか!」
「戦闘系なら使いどころが大きいんじゃない? 繊細な作業が無理だから」
「剣とかに変えるのは難しいって聞きました」
「あれはできる人が限られてるし。あなたなら爆弾を落とす感じがお似合いね」
優雅でも可愛くもない……。
「やっぱり拳で戦うとか泥臭い戦い方しか無理なんだ!」
「いいじゃない。そういう人がいたって」
オシャレな戦いができそうな人間の余裕だ! と顔をしかめる。
ドロテアはニコニコしながらいつのまにか普通のミルクレープの方も食べていた。
これだけ気持ちよく食べてもらえたら、作ったかいがあるし嬉しい。
「話は変わるけど、魔王とはどうなったの?」
「近いうちに一週間くらい魔王領に行くことになったわ。でも寂しいから貴方も来なさいよ」
「私も?! 嬉しいけど二週間後の仮面舞踏会に行くことになってるので難しいかも。マナーとかも勉強しないといけないし」
「あの仮面舞踏会行くの?」
「国をどうこうしたいなら一回内部を見ないとって思ってたし、単純に興味がある」
「わたくしも行こうかしら。招待状は来てたけど、一緒に行く人もいなかったから」
「えっ、じゃあ一緒にいこ!」
「行くわ。お供はひとりだけ連れていけるから、弟君を連れていくことにする」
「リツキを? でも確かに仲間外れは寂しいもんね。ありがとう!」
「どういたしまして。そんなことより、お菓子、次はもっと大きく作ってきてほしいわ」
「あ、私の分もたべて。残っても悪くなっちゃうって思って小さくしたの」
残っているお酒入りのほうを渡す。
ドロテアは遠慮なく手を付けてくれた。自分で食べるより人に食べてもらう方が嬉しいからニコニコしてしまう。
「別に残っても食べるから大丈夫。方法はあるから」
「じゃあ次はもっと多く持ってくるね!」
やっぱりそろそろオーブンの使い方を覚えようかな。
オーブンが使えたら料理の幅がものすごく広がる。
「お礼に、泊まりに来た時に聖女宮を回らせてあげるし、神聖力の使い方をちゃんと教えてあげるわ」
「本当? やった。じゃあ四日後くらいに来る!」
「分かったわ」
ホッとして、ふと時計を見る。
13時を過ぎていた。
「えっ、早い! もうこんな時間?! 今日は戦闘の練習とダンスの練習をするんだ」
「もう帰るの?」
「なんかドロテアが願ってることを叶えるためには、けっこう私も頑張らなきゃいけないみたい」
「確かに、今の貴方は傭兵とかに殺されちゃいそうだものね」
「不吉なことをいうのやめてよ」
お皿を片付けて、籠の中にしまう。
「じゃあ、またね」
華やかな笑顔で手をひらひらと振るドロテアを置いて、アンリの屋敷に戻る。
アンリは一人でケーキを食べきっていたし、戦闘とダンスの練習は同じ日にやるもんじゃないと思うほど疲れた。
ドロテアが作った膜をアンリに見せたら、実現可能なのかとショックを受けていた。
だけど、私がいない時に練習すると言っていたので、覗き趣味がなくなりそうで良かったとも思っていた。
早めに家に戻って料理を作る。
今日は干し肉と野菜で適当に料理することにした。
なんか、やっぱり二人と付き合うって精神的に折り合いがつきにくいな。
昨日みたいなのをした後だと特に、何をどうしてこうなった感が凄い……自己肯定感とかそういう問題でもない気がする。
「ただいま!」
予定の時間より早くリツキが帰ってきた。
「ミュー、デートに行こ」
「デート? 今から? ご飯少し作っちゃったよ」
「ごめん、明日の朝食べるから。馬に乗るから神聖力を全部落としてきて」
言われて、ベッドの部屋に行って体内のタンクの中から神聖力を出しながら黒い石に吸わせる。
(そういえばリツキと瞬間移動以外で出かけるのも久しぶり)
毎日場所は移動してるから前より閉塞感がなくなっていて忘れていたけど、決まった場所以外に出かけることもあまりない。
(なんかワクワクしてきた。私って単純。おしゃれもいるのかな)
ベッドの部屋から出て、フード付きの上着を着て、ちょっとだけ身支度をちゃんとする。
うーん。人にやってもらうのもいいけど、自分でおしゃれをすると気分が上がるなと思った。
「ミュー、かわいいねぇ。フードかぶろう」
外に出ると、上着のフードをかぶらされてしまった。
そんな遠目から私なんか見る人いないよと思ったけど、デートだしなと思って黙る。
おしゃれしたら他人に見せびらかしたいものじゃないのかと思いながら馬にのせられると、夕方の道を出発した。
パカパカと二人で馬に乗る。
道は民家はあるが、林が多くなってきた。
「あっちの湖のふもとに、すごくいい店があるんだ」
「そうなんだ。楽しみ」
どうしてもくっついてると神聖力が上がってしまうので、定期的にタンクに神聖力を移動させる。
だけどそれでも足りないと思ったので、空の瓶にポーションを詰めた。
「そういえば、リツキも仮面舞踏会行く? ドロテアが連れて行ってくれるって」
「仮面舞踏会? ミューも行くの?」
「……私は他の人とだけど」
アンリの名前は出せないので誤魔化す。
だけど、リツキの顔は少し険しくなった。
「なんで他の男の話をデートの時に出すんだよ」
「だ、だって言うの忘れるから」
本当は国を壊すって話もしなきゃいけないのに忘れちゃってるし、ここじゃ言えない。
それに舞踏会の話はドロテアも関わるので早めに説明しないといけなかった。
「俺だってミューと行きたい!」
「私は招待されてないし、行きたいならドロテアと行かないと。今回は仮面つけるから、誰が誰とペアとかないよ」
「くっそ。でも一人だけいかないのも癪だから行くけど、この前の正装でいい?」
「ドロテアに聞いておくね」
少し機嫌が悪くなったリツキに申し訳なく思いながら、話題を選ばないとなと思う。
もっと行動範囲が広ければマシなんだけど、そうもいかないので難しい。
「リツキは今日なにしてたの?」
「今日は貴族の護衛! 奥さんに気に入られたから、よく頼まれるんだ」
「へぇ、なんで気に入られたの?」
「それは……あ、既婚者なのにこの話ダメ? え、なんでミューよりマシじゃん」
「何の話?」
「えっ、声が……あ、無意識なんだ。怖っ」
何も言った覚えはないのに、リツキは急に慌てて口を閉じてしまった。
なるほど、リツキの仕事は自然に異性とも出会える仕事なんだ。
ふ~ん……と考える。
馬はいつの間にか、湖のふもとについていた。
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