表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】制限付きの大聖女 ~弟に溺愛されて困っています!~  作者: 花摘猫
大聖女は自分で行動する編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/190

束縛の理由と、リツキの今

なんだかんだ、二時間くらい触られて、ふらふらになって部屋を後にする。


「なんか分かってきた。女の人って本当にああいう声出すんだ。楽しい」


アンリはお酒も抜けたのか、すっかり元気だった。


「忘れて……」


胸だけじゃなくて、上半身を触られまくった私は、疲労でヘロヘロしていた。

今まで抱き合ってただけだったのに、触るという行為を覚えてしまったので、ずっと色々触られていた。

アンリの場合、くすぐったくても気持ちよくても同じく可愛いになってしまうので、どうしようもない。


「ドレスは触り心地があんまり良くないから、今度は寝る時の服にしよう」

「脱いでほしいとは言わないんだ」

「言わないよ。まだ付き合ってそんなに経ってないし、服を脱ぐみたいなのは嫌だって言ってたから」

「覚えてるんだ」

「当たり前だよ。本当は今日のも今日だけにしておこうと思ったんだけど、戻れなそう」

「言ったのは私だから、それはいいけど」


アンリは予想外に私を大切にしてくれているらしい。

異世界転生する前にいた友達は、わりと付き合ったら、そんなに! そんなに早いんですかという感じだったから不思議。

私はネットとか友達の情報に踊らされているかもしれない。


「具合が悪いとかはないよね?」

「うん。そういうのはないかも。ありがとう~」


まだ陽が高い。

庭を見ると、やっとパーティの後片付けが終わるという所だった。

あんなにイチャイチャしたのに、世界は何も変わらないんだなぁと思う。

リツキみたいな舐めるとかそういう行動を、アンリはまだ知らないみたいで良かった。

されたらたぶん、思い出してしまうし、今は罪悪感からは解放されていたかった。


「今日の夜も触っていい?」


突然、アンリが照れながら言った。


「あんなに触ったのに?」

「これから仕事だし。誕生日だし」

「うん。いいよ」


私の返事に機嫌良さそうに歩いている。

瞬間移動をしないところを思うと、やっぱり私の神聖力を増やしたくないのだろう。


「ねぇ、アンリ」


今なら機嫌がいいから聞けると思って声をかける。


「ん?」

「私、出かけたい」

「また今度ね」


アンリは考えることなく答えた。

やはり外に出す気はないのだろう。


「本当に?」

「うん。一週間後とかで良ければお芝居とか見に行く?」


……一週間後?


嘘ではなさそうな具体的な言葉に、違和感を覚える。

嫌な予感がした。

今まではアンリが私をリツキに会わせたくないから、こんなことをしているんだと思ってた。

だけど、今度ということは、なにか時間が経てば問題が解決することがあるような態度だ。


「ねぇ、なにを隠してるの?」


足を止めて、問う。


「服も、お金も、神聖力も奪ってここに閉じこめるのが、長期間できるとはアンリだって思ってないよね」

「今度って、なにが起きたら問題なくなるの?」


真剣に聞く私に、アンリは振り向いて少しだけ笑う。


「内緒だよ」


優しい声だったが、なにも優しくない。


「私、家に一回だけ戻る」

「無理だよ。この家には行動制限をかけてるから瞬間移動しても無駄だし」

「なんで。アンリの元に戻ってくるよ。何を隠してるの……」


困惑する私の手をアンリはとり、口付けする。


「知られないようにしたかったのにな」


景色が回転して、暗転する。

自分が住んでいる部屋に戻った。


「本当にごめん。でも、勝手に瞬間移動しないで話してくれて嬉しかった」


そう言い残して、アンリは消えた。






一人残された部屋で、やはり軟禁されているのだと理解する。


(リツキに何がが起きたんだ)


たぶん、リツキになにか良くないことが起きている。

会わせたくないだけなら、ここまでする必要はない。

嫌われる可能性があるのに徹底するには、たぶん理由がある。


どうしよう。戻らないと。


「行動制限って神聖力だけなのかな」


ネグリジェで靴も室内履きだけど、もういいや。

部屋から出ようと、ドアを開ける。


ドアの向こうにジュディがいた。

紅茶のセットを乗せたワゴンを押している。


「聖女様」

「今、飲めません」


ジュディの横を通る。


「聖女様!」


ジュディが私の腕を掴んだ。


「出られませんよ」


その一言で、アンリとジュディが情報交換しているのだと気付く。


「ジュディさんも、私を軟禁しても良いと思ってるの?」

「思ってません。聖女様はいい人だし。でもぼっちゃんはデロデロのバカだから話を聞かないんですよ!」


ジュディさんはそう言うと、私の手を引いて室内に連れ戻す。


「私は使用人だし、神聖力もないです。並の神聖力だと、ぼっちゃんに殺されますけどね。だから助けられません」

「でもね。聖女様。私は解決方法を知ってますよ」


口に人差し指をあてて微笑む。


解決策なんて、あるのだろうか。


「聖女様は、もっと我儘になっていいんです。言いたいことをぶつけてください」

「好意というものは麻薬です。ぼっちゃんがバカになるくらいだから、好意で交渉できます」

「交渉?」


疑い深く見る私に、ジュディは真剣な顔で私を見つめる。


「したい内容と、その結果が得られないならどんなマイナスがあるかを天秤にかけさせます」

「○○ができないなら、おっぱいを揉ませないとか、そんな感じですね。絶対それができなくなると思えば交渉できます」

「そんな馬鹿な」


そんなもので交渉ができるなら、世の中はもっと平和になっている。


「好きじゃなければこんなことしないですよ。この紅茶なんだか分かりますか? 睡眠薬入りです。犯罪ですよ」


ジュディは嫌そうな顔をしながら、ティーポットの蓋を開けて、閉じる。


「なんで、そんなことを」


あんなに可愛かったアンリが、悪側の人間になってしまった。


「知りませんよ。愛情ゆえって言葉で済ませられたらいいですけど。命令されてるこっちの身にもなってくださいよ」

「だから、かわいさで懐柔できますから頑張ってください。あと、そろそろ替えなくて大丈夫ですか」

「あ、トイレ……」

「夜用も多めに作ったんですよ。なんか月のもの中なのに付き合わせられてるから」


ジュディはポケットから夜用の上に付けるシートを取り出して私の手にのせた。

さっきパーティー中にイチャイチャとかしてたの知られてたのか。

恥ずかしくて赤くなる。


「私も私で悪かったですが、ぼっちゃんも聖女様が疲れてるのに酷いですよ」 

「あれは、多分ケーキにお酒を入れていた私のせい……」

「聖女様は、なんでも自分のせいにしますけど、世の中ってもっとみんな自分勝手ですよ。もっと適当に考えていいんです」



そういうと、ジュディは私をトイレまで連れて行って外で待つ。

終わると、陶器の容器を受け取って、アンリが仕事をしている部屋まで送ってくれた。




部屋の扉をノックする。


「自分の思った意見を、交渉するんだの気持ちでちゃんと言ってくださいね」

「わ、わかった」


ジュディと手を振って別れた。


「声、聞こえてるんだけど」


ドアを開けてアンリが顔を出す。

室内に案内されると、人払いをしてくれた。


「アンリ。今すぐ、一回でいいから家に帰してほしい」


勇気を出してお願いしてみる。


「嫌」


簡単に要望は拒否されてしまった。

でも、ここで引いちゃいけないんだ。

交渉。天秤……ちゃんと考えては来た。


「私の意見を無視する人は嫌いになるから、アンリとエッチなことする度に吐くことになるよ」


胸を張っていう。

私という人間の交渉材料があまりにバカみたいだ。


「今日夜に揉むのもナシ! 吐きたくないもん」


アンリはふーんという顔をしている。

ぜんぜん効いてる気がしない。


「私に薬盛ろうとする人なんて嫌い。軟禁するのも、ぜんぶ犯罪! ちょっと嫌いになってる。好きでして良いことじゃないよ」


少し本音を混ぜて話す。

アンリの表情が、少しだけ気まずそうになった。


(本音かどうか、アンリにはわかるみたい)


それなら、ちゃんと本音で話すしかない。


「もし隠してることがリツキのことだとして、それを後で私が知った時、アンリを好きでいられるかを考えて」


リツキの名前は出したくなかったけど、仕方ない。多分そうなんだから。


「私は、たぶん逃げようと思えば逃げられる。でも裏切りたくないから言ってるの」


真剣に訴える。

アンリは深く溜息をついた。


「でも、あいつは勇者だから、神聖力を無効化できるんだ。僕も魔王も殺せるし、ミユも襲える。今しかチャンスがない」


嫌そうに話す声に、呼吸が止まりそうになる。

勇者ってそんな能力があるの? でも、チャンスって何?


「チャンスって、リツキを殺そうとしてるの?」


アンリはなにも答えなかった。

リツキはアンリに何かされたけどやり返さなかったって言ってた。子供に足を食べられた時も攻撃してない。悪いことはなにもしてないのに。


「リツキは、アンリを殺したり私を襲ったりしないよ」


猛獣が人間を食べるから殺されるとかならわかる。

でも、リツキは人間だし、今までだって攻撃を我慢してた。それは評価されていいはずだ。


「リツキを殺したら、いくらアンリでも一生許さない」


もうアンリのほうにいるのに、リツキを殺す必要はないじゃないか。

語気を強めに真剣に言うと、アンリは諦めたように息を吐いた。


「別に、僕が殺そうとしてるわけじゃないよ」

「じゃあ誰が」


声を荒げる私を、少し寂しそうな顔をして見つめる。

そして、手首を掴むと、私の身体を抱き寄せた。


「とりあえず、神聖力回復させる」


回復ってことは、交渉できたのかな。

アンリの柑橘系の甘い神聖力の味がする。神聖力もくれているみたいだ。


「……ああ、もう。僕はミユに弱い」


耳元で聞こえる声に、気が立っていた心が少し落ち着く。


「別に閉じ込めてもいいし、意識を無くせばいいんだけど、可哀想だし傷つけちゃうからできない」


悔しそうに呟く言葉は、ぜんぶ犯罪だ。

もしかしたらアンリって、危ない思考なのかな。


「今から一緒にミユの家に戻るけど、神聖力が足りなくなったら、絶対僕の方に来て」

「? 分かった」

「もしかしたら、ミユも神聖力が通らなくてだめかもしれないけどね」

「どういうこと?」

「あいつは、神聖力での回復を拒んで、死にかけてる」


死にかけてる?

心臓が、不安で変な音をたてる。


「リツキが、なんで」

「もう生きるのが嫌なんだろ。気持ちはわかるけど」


さらりと言ったアンリの言葉に、心臓が止まりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ