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アンリの告白と、甘いキス

次の日。


正装の服のデザイン画が来るかもとのことで、アンリの家に行った。

今日も今日とて神聖力タンクは拡大させて、コントロールを上手くする訓練をする。

昨日、リツキの足に膜を張った時に子どもたちまで膜を張ってしまった。

結果的に良かったとはいえ、これが爆発させるとかだと大惨事になりかねないのでコントロールが必要だった。


ソファにアンリと並んで座り、遠くに畳んである洗濯物を10mほど神聖力で運ぶ訓練をする。

アンリは私とは違う、難しそうな本を読んでは勉強していた。


「む……」


神聖力にムラがあり、畳んだ洗濯物が崩れて袖がだらりと落ちる。

強すぎても、それはそれでクシャっとなってしまうから難しかった。


「今日のミユは集中力がない。だめだ」

「ごめん。せっかく時間を作ってくれてるのに」

「それはいいけど、なんで集中力がそんなにないんだ? 弟となにかあった?」

「あんまり……くだらない話すぎて、言いたくないかもしれない」


頭がごちゃごちゃして、なにが問題なのか分からないのも問題だった。

それに、アンリが男性だとわかった今、簡単に相談はできないような。


「ミユは、心の整理できた?」


私の心情を考えてか、アンリが話題を変えてくれる。

前に言われた杯を満たすために誰かとイチャイチャしなきゃいけないって話を思い出した。

それにしても、杯ってなんなんだろう。そんなに大きいのかな。


「心の整理……あ、魔王と結婚しなくても、誰かと……ってやつ」


「そう。こんど魔王と会う時に、それなりのことさせられると思うからね」

「えっ? 一週間後あう時も何かするの?」


初耳だ。それなりのことって何? エッチなこと?

会合みたいなことをするんだと思ってたのに!


「だって、杯に貯まるかどうか見極めるんだから、どのくらい神聖力が上がるかチェックするよ」


えぇぇ!!! やっぱりその系なんて最悪だ!!!!


「ただ会って話しあいするだけだと思ってたのに!!」

「そんなわけないじゃん。だから弟まで呼ぶ話をしたんだから」

「えっと、じゃあ魔王の前でリツキといちゃつかないといけないの?! やだ!」

「弟の前に僕だよ。付き合ってることになってるんだから。だからそろそろ練習しないとまずい」


え……。


思わず止まってしまう。

練習ってなに。いちゃいちゃの練習?


「本気で言ってる? アンリはいいの、私で!」

「嫌だったらその場で魔王に引き渡してるけど」


なんでもない感じでアンリが言った。

じゃあ、あんなに汗をかいて助けてくれたのは、私だからってこと……?


「待って。じゃあ、あの。好きだってこと?」

「うん。ミユのこと好きだよ」


アンリは私の目をまっすぐ見つめて、不思議そうな顔をしながら答える。

なんでそんなことを聞くのかわからないという表情だった。


「この前人類愛って言ってた……」

「それは冗談だけど、魔王と結婚を妨害するって冗談でできるわけないよ。それなりに責任いるし」

「確かに……でも、心の準備が……」

「ミユの心の準備を待ってたら、いつまで経っても進まない」


確かに……でも今聞いたばっかりだよ。

アンリは、ずいとこちらに顔を寄せる。


「ミユは、僕のこと嫌?」


赤色で猫に似た目がこちらを見つめていて、思わず言葉に詰まる。

可愛いんだか、かっこいいんだか分かんなくなってきた顔で聞かないで欲しい。

そんなに人間は簡単に切り替えられない。


「嫌じゃないよ、嫌じゃないけど」

「嫌じゃないなら、恋人として進もう? 状況が状況だから、別に弟と同時進行でもいいし」


突然の提案に、サーっと血の気が引く。

一般的に言ってそれは、しちゃいけないことだ。


「そんな同時進行する女やだ~……最悪の女だ……」

「でも、どちらにしろ魔王と会う時までに、そうならないといけないってミユもわかるよね」


アンリの恋人だから結婚を免除されているのなら、それはアンリとは絶対にそういうことをする関係だと証明しなければいけない。

きっとアンリは親切心とか、私が弟とでもくっつけるから都合のいい女性なのだと思っているからかもしれないけど。

神聖力が高いことを証明するなら、リツキの協力もいるのかもしれない。

でもそれというのは好意を食い物にするか、受け入れなければ得られないものだ。


「わかるけど……」


でも、それしかないの?! 逃げ場は??!!

だけど断ったらもう魔王の嫁か。アンリは抱きついても嫌悪感どころかって感じだったから相手としては問題ないし、魔王よりはいい。でも弟もいなくなったら天涯孤独だし、離れたくはない……それなら同時しかないの?


でも今世の私の人生、頭おかしすぎない?!


(私は、自分の未来のために、自分の倫理観を叩き潰すしかない)


グッと無意識に握りこぶしを作る。


「魔王と会うって、服を脱ぐとか触りあうみたいな深いのは、ほんとに早すぎて嫌なんだけど、それはダメなのかな」

「それは、そう言って許してもらおう」


それなら、たぶんリツキに関しては今とあんまり状況は変わらない。

ここにアンリが同じ分くらいするだけと思えば、大丈夫な気がしてきた。


「じゃあ、わかったけど、嫌になったらやめていい? 罪悪感とか色んな感情で死にそう」

「いいよ。でも、弟には僕が説明するから大丈夫」

「大丈夫なことないと思う……」

「ミユは家で待ってたら大丈夫だから」


なんか、いろいろ死にそうだ。

昨日も複雑な感情で死にそうだったのに、今日から別の問題が入ってくる。

アンリと付き合って、リツキもなんて、心がついて行かない。


顔を上げるとアンリがこちらを見ていた。


「キスしていい?」

「もう?!」


こっちは死にそうなのに。


「慣れとかないとって思って。僕もしたことないし」


ああ、そっか。

リツキは初めてじゃなかったけど、普通はしてないよね。

まぁ私も、もう適当な感じで初めてじゃなくなっちゃったけど。


(ああ、そうか。アンリは私とリツキがしてるところ見てるからか)


「私もほとんどしたことないよ」


なんとなく二回とは言えなくて誤魔化してしまった。


「じゃあ、練習しよ」


近づいてくるアンリを拒否できずに、目を閉じる。

なぜかリツキに対する罪悪感が頭にあった。


そっと、ついばむようにキスをされる。


目を開けると、アンリが照れていた。その表情があまりに可愛かったのでこちらも照れてしまう。


「アンリのファーストキスをもらっちゃった」

「なにそれ」

「はじめてキスすることを、うちの国ではそう言ってたの」

「じゃあミユでよかった」


アンリがふわっと笑う。

胸がきゅんとしてしまった。


(なんだこの可愛い生き物ォ。私も相手が適当な気持ちだったならアンリにあげたかったよ!)


心の中で叫んだ次の瞬間、倫理観! と思う。

私は、こんなにも簡単に流されて、こんなにも簡単に気持ちが変わる。最悪だ。


「ミユ。口開けてやるやつやりたい」

「口? そんなのしたことないよ」

「恋人はみんなやるらしい。ベロベロするの。公園で見た」


ああ、あの舌出てるやつ

どうしよう。でも、恋人になったし、そういうことしなきゃいけないなら、そのうちするよね……。

もうここまできたらやってもいい気がしてきたよ。可愛いし。これなら初めて同士だし。


「私は詳しく見たことないよ。どうやるの」

「舌を絡めてみよう。口開けて」

「うん」


しやすいように顔を斜めにすると、すぐに口が塞がれた。

ネロ、と舌が入ってきた。


うわぁぁ、タンだ!!! エイリアンみたい!


(絡め……?)


頑張るけど、ネチュネチュしててよく分からなすぎた。


「はぁっ、まっれ」


息継ぎをしようとした瞬間に、また口を塞がれる。

むずかしい。息もどこで? 鼻息もはずかしいけど、死にそうだ。


「んぅっ、もっ!」


大きく息ができなすぎて、肩をパンパン叩く。

口がやっと離れた。


「息できなくて、しぬっ」


はぁ、はぁ、と息をするが、胸が苦しいのは落ち着かないし治ってくれない。


「ごめん。なんか止まらなくて」


アンリはポヤポヤしていた。


「よだれ拭きなね」


ハンカチを出して拭いてあげて、その後に自分の口も拭く。

やっと心臓が落ち着いてきた。


「もう一回」

「今日はもうやめよ。人が入ってきたら困るし。正装のデザイン画来るんだよね?」


これ以上は死んでしまうと止める。

アンリはガッカリという顔をしていた。


「ああ、そうだった。ちょっと行ってくる」


アンリはポヤポヤしたまま部屋を出ていってしまった。


ソファの上に耐え切れなくなって、ウワーっと転がる。


(なんか……恥ずかしすぎる!!!)

(なんか、本当に付き合って……る? 頭がボーっとする)


急にこんなことになってしまったので、現実感がない。

しかも、なんかさっきの後ろめたさがどっか行ってしまったくらいホワホワしてる。


(まだ、関係が始まったばかりだから、恋じゃないと思う……じゃあ、このホワホワはホルモンかな?)

(激しい感情と、ホワホワしてる感情は、どっちも恋という感情じゃないのかもしれない。正解ってなんなのかな)


それに、リツキに説明してくれるって言ってたけど、いつ言うんだろう。


部屋のドアが開く。

アンリが入ってきた。


「デザイン画きてた。邪魔されたくなかったから、下で受け取るようにしてたんだ」


紙束を渡されると、上は同じで下のスカートの形状が違うものがいくつも書いてある。

その中の、ひだが多いフレアタイプのスカートか、ストーンとしていて、スリットがきわどくないスカートが気に入った。


「こっちかこっち。アンリはどっちがいいと思う?」

「ふわふわしてる方が可愛いから、こっちかな」

「じゃあ、このひだが多いスカートを頼んでおいてほしい」

「わかった。使用人に持っていかせる」


アンリは紙を持ってドアの外に行くと、外にいる使用人に紙を渡した。

どう考えても年下なのに、全ての行動がスマートで感心してしまう。


(そういえば、年齢って鑑定で見られたよね)


鑑定をしてみると、17と年齢の欄に書いてあった。


17!!!!!!!!!


4つも下はともかく、若すぎる!

リツキも似たようなものだけど、あっちは大きいから忘れてた。

べつに違法じゃないだろうけど、あんまりこういう……ことは良くない気がするな。

といってもするしかないんだけど。

なんとなく正気に戻りながら、その日は家に戻った。











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