二人と結婚+浮気は業が深すぎて心が死ぬ
荷物をまとめて、帰る準備をする。
両親は、もらったお金で私達の国でも恥ずかしくなさそうな服や日用品を買ってスッキリした顔をしていた。
処刑があったことは知っているが、今日帰ると思って、色々な物を買っていたので見ていないそうだ。
そのほうが良いと思う。きっと現代人にはキツイ気がするから。
「船が来たって!」
お母さんが嬉しそうに呼びに来て、みんなで船に乗りこむ。
三時間の船旅をしながら海を見ていると、キスした時にいたような島があったので、思い出してウワーと思う。
視線を感じてまわりを見るとゾーイがこっちを見ていたので、ヒャーっとなった。
マトモな人と巡り合うまではハグとかはかまわないと言ったけど、もうこれ友達としては無理なんじゃないだろうか。
ダメって言ったら、今までどおり近くにいてくれない気がして怖い。でも失いたくない。
でも、ゾーイがいなかったら、絶対全滅だったから判断を間違えたとも思えないしと、悩みながらこれからのことを考える。
(そういえば、あのポータル、ドロテアが五人までしか使えないって言ってたよね。それにお父さんたちも私達の家のポータル使えるようにしないと)
「ちょっと私、通るポータル五人しか使えないって言ってた気がするから、先にいってドロテアに聞いてくるね」
「えっ、ミユ。ここから一人で瞬間移動で行くの?」
「うん。一人ならいけるって分かったからいってくる。ポータル使って大丈夫だったら戻らないから、そのまま通ってきて」
アンリくらいしか返事をしない間に、ぴょんと瞬間移動をした。
バラリウムの港に向かって瞬間移動する。
突然、目の前にゾーイが現れた。
「えっ、なんで?」
「ユキがいないのに気まずいから付いてきた」
しょうがないので、二人一緒に飛ぶことにする。
「ウィリアムソンも気まずそうだったけど、先に出てこないのが悪い」
「私の両親だし仲良くしとこうって思ってるのかもね」
ピョンピョンと港に向かって飛ぶと、あっという間に港に着いた。
「ところでユキ、さっきキスしたこと思い出してただろ」
突然言われて転びそうになる。
「知らない。忘れたい」
「なんで。良さそうだったのに」
「どんどん積極的にくるけど、なんか頭がおかしなことになってるよ! 友達だからっ!」
騒ぎながらポータルに飛んで、一緒にポータルに乗ると魔王城に飛ぶ。
倉庫のような場所についた。
フッと目の前にドロテアが現れた。
「あら、ミユキじゃない! えっ、アカタイトはどうなったの?」
「助けた! チハラサが王様になって神聖国にポータル作りたいって」
「凄いじゃない。やっぱり私の親友だけあって素晴らしいわ!」
ドロテアはゾーイと私の間に入って、私の肩を押した。
「それで、お父さんとお母さんがいたから連れてきたの。もう一回ここのポータルを通ってもいい?」
「あとから来るってこと? いいわよ。警報が鳴るだけだから、切ればいいだけよ」
「なんかドロテア、自分のこと無視してない?」
「わたくしの親友に勝手にキスする奴なんて嫌いだわ」
「その話? でも昨日もしたよ。昨日は意識があったからめちゃくちゃ良かった」
明るく言うゾーイに、ドロテアが鬼のような形相でギッと睨みつける。
私は両手で顔を隠した。
「ミユキ。なんらかの理由はあったことは分かるけど、とりあえず貴方は帰りなさい。ちょっとゾーイと話したいことがある」
言われて顔を上げると、いつの間にか瞬間移動をしたのか、個人用ポータルの上にいた。
「今回の件はしょうがなかったというか、人の恋心を利用したのは私なので、悪いのは私なんだけど」
「行きなさい」
「……はぃ。ケンカとかはしないでください」
しょぼしょぼしながら、家に戻る。
怖いことになったと思いながら、とりあえず床の上で正座した。
両親がくるから前の家をちゃんとしないといけないけど、恥ずかしいし色んなことで頭がごちゃごちゃする。
両親は私をこう、3人の性……みたいに思ってたけど、キスしたし、二人とはそういうことの回数も多いからそう思われても仕方ない。
回数とかは知られてないだろうけど、そういう雰囲気が滲み出てたらどうしよう。嫌すぎる。
その上、新婚旅行で夫が攫われて襲われて、妻は他の人間とキスするとか最悪すぎる。
(でも、短時間で解決するにはあの手しかなかったように、私には思えた)
事実なのが最悪だ。なぜかアンリとリツキもあまり怒らないのも嵐の前兆な気がする。
ドロテアにも嫌われたらどうしよう。恥ずかしい人間すぎて怖い。
(でも、正座してても何も進まないから、とりあえずここの家と、前の家のガードの張替えをしないと)
ヨロヨロとしながらとりあえず家のガードを張り変える。
前の家に瞬間移動をすると、そっちのガードも張り替えた。
(全員に愛想を尽かされたらどうしよう。あれしか道がなかったけど、あまりに恥ずかしい人間すぎる)
しょんぼりとしながら昔の家に入ると、懐かしい感じがした。
定期的に清掃を入れているので綺麗だったけど、シーツくらいは取り替えないといけないだろう。
この家でも色々、とんでもなかったなと考えながら、シーツを取り替えたりいろいろなことをする。
(洗ったとはいえ、そういうことをしたシーツに両親を寝かせるのは嫌だけど、新品がないから仕方ない)
お金も、子どもに直接貰うのは嫌だろうから、自分の部屋に置いてある非常用のお金から持ってきて、棚の中にまとめて入れておいた。
半年分は困らないくらい入れたから大丈夫だろう。
火や水も使えるようにして生活できるくらいになったので、家に戻ってから魔王城にもう一度戻った。
(両親を待つべきか、ドロテア達の様子をみるべきか……)
どうしようもない気持ちになったので、とりあえずポータルから降りて、目の前の床の上に正座する。
考えれば考える程、私って本当に汚い人間な気がする。やっぱり血ってあるんだろうな。
私は、本当に、なんて状況を作り出してしまったんだ。
「気配がすると思って来てみたら、何してるのよ」
「あはは、かわいい。小さくなって座ってる」
ふと顔を上げると、ドロテアとゾーイがいた。
「ドロテアに呆れられたと思って」
「ゾーイには呆れたけど、ミユキには呆れないわよ。それにゾーイにはアカタイトで何をしたのか詳しく聞いただけよ。ケンカはしてないわ」
そういうと、ドロテアは私を起こしてくれた。
「アカタイトはよくやったわ。まぁ、キスはね。きっと軽くチュってすると思ってたのよね。あなたはそんな感じだから」
「うん。それくらいなら戻れるって思ったんだけど、もうだめかも。でもどうしたらいいのか分からない」
「戻らなくてもいいじゃん」
ゾーイは悪びれもせずに言うけど、強くゾーイを拒絶して相手が離れたりおかしくなるのは、今の私にはきつすぎる。
でも、本人がその危険性にまだぜんぜん気付いてないところが怖い。押せ押せでいけると思ってる。
「浮気はしないってば。軽いキスならあんなこともあったねで済むと思ったけど、これからどうするの。辛くなって消えたり遊び人になったら嫌だよ」
「そんな難しい問題? あぁでも、もうキスしちゃいけないって無理な気がする。本当にもうだめなんて思ってなかったけど」
「なるほど。ミユキは甘酸っぱい思い出程度ならこのまま友達でいけると思ったのに、ゾーイが無理だと思う程度にやったってことね」
「うん。でもゾーイの気持ちを利用したのは私だから私が悪い」
反省を促すように、まわりに警告音が聞こえる。
ドロテアが手を動かすと、音は消えた。
「それにしたってミユキが萎れてるじゃない。アカタイトを救って萎れるって可哀想よ。アンタは引きなさい」
「やだよ。だってユキは自分のこと嫌いじゃないし、今度二人にまた仲間に入れてもらうように聞いてみるよ」
「好きとか嫌いとかの問題じゃなくって、もうキスとかしないって言ってるのに……」
「なんなのあんたは。こんなに物分かりが悪かったかしら。しつこいと本格的に嫌われるわよ」
「だって別に仲を引き裂こうとかしてないし、今とほとんど変わらないんだし、なんか、もう色々無理だし」
「もっとご両親が聞こえない場所でやってくれるかな」
声が聞こえて声の方向を見ると、アンリがものすごく不機嫌な顔をして立っていた。
さっきの警告音は、両親が到着した音だったのだと、いまさら気付く。
両親が戸惑った顔をしていたし、リツキが怒った表情でカツカツ歩いてきた。
「あの。ガードを直して、前のお家のシーツ変えて、生活できるくらいにはしておいた、けど」
近付いてきたリツキに説明すると、リツキは何も言わず、私を抱きかかえる。
「ゾーイ。お前、あとで説教」
心底軽蔑した顔でそう言うと、私を抱えたままポータルまで歩いて行った。
「ミュー帰ろう。親はアイツが連れてくるから」
どうしようと思ったけど、どうしようもない。
両親の前で弟に抱きかかえられてるって恥ずかしすぎる、と思ったけどこれもどうしようもない。
この状態になったリツキは、本当にどうしようもないからだ。
(今日は、話しあいか……恥ずかしい。しにたい)
とりあえずドロテアにだけは挨拶しようと思って、ドロテアに力なく手を振る。
恥ずかしい状況をどうにかすることもできず、そのまま家に戻った。
この章でゾーイさんと恋愛バトルです。本当に怖い。よければ死にそうな私にブクマ登録や★、感想などで応援していただけるとありがたいです。本当に怖すぎる。