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犯罪者には死より罰と制裁を

洞窟の宿泊所に戻る。

リツキがチハラサやボニーと話していた。


「ミューがゾーイとキスした!!!!」


リツキと合流した瞬間に叫ばれて、ギョッとする。

チハラサとボニーが、エッという顔をして私達を見た。


「え、な、なんで?」

「ミューはエロいことすると段階ごとに顔が違うし、けっこう残るんだよ! この顔は舌入れられた顔!」

「当たり~。まぁユキは軽いのだと思ってたらしいけどね」


ゾーイが悪びれもなく言った。

私は、耐え切れず両手で顔を隠す。


「なんで迎えに行ったら浮気して帰ってきたんだよ!! どういうこと??!!」

「自分がウィリアムソンのためにはそんなに瞬間移動はしたくないってごねたら、ユキが交換条件って感じで言ったからノッた」

「だって、明日の朝まで待ってたらアンリの貞操が奪われちゃうし、拷問を受けてる可能性だってあるよ」


必死に話す私に、リツキは機嫌悪そうに私を見つめる。


「もう40分くらい経ってる気がするから、貞操とかそれ目的なら終わってる可能性も高いけどね」

「そんな、酷い……」


こんなに頑張ったのに手遅れだったら、私はどうしたらいいんだ。


「よくわかんないけど、ユキを不安にさせるなよ。で、計画とかは練ってるわけ?」


リツキと私の間にゾーイが入って、チハラサに話しかける。


「ウィリアムソンが連れていかれて退却したってことはリツキンが怪我したんだろ? ユキの焦りようはそんな感じだったし。そんな状況なのに、よくのんびりしてられるな。ウィリアムソンが戦闘不能になったら、ユキの神聖力の出力がひとつ減るんだぞ。そしたら全滅の可能性がある」


機嫌悪そうに話すゾーイの言葉に、みんな一気に気が引き締まった。

チハラサは、落ち着いた様子で一歩前に出る。


「ボニー嬢と一緒にザザィが逃げられないように結界を張りたいと思います。拘束もしたいですが、コントロール力が私もないので、ボニー嬢がどこまでできるかですね」

「頑張るっすけど、リツキさん。あの黒い膜であたしの身体を包んでくれません? あの膜、刃物で開けようとしたけど歯が立たなかったんで防具にいいっす」

「あ、それなら怪我しなくていいな。全身タイツみたいな感じでやってみるか」


リツキは自分の身体をズズっと黒い膜で覆う。


「うん。動ける。イイ感じだ。全員やろう」


そういうと、全員の身体を全身タイツのように黒い膜で覆った。

この国の衣装はすぐに下着が見えそうな不安定さがあるので、これで恥ずかしくない。

ゾーイはあまり外側からは分からなかったけど、暑いのかシャツの袖をめくっていたし、腕がしっかり黒かった。

リツキが嫉妬とかで仲間外れにしたらどうしようと思っていたけど、そうじゃなくてホッとした。


「俺がもうちょっと力の加減ができたらいいんだけど、いつも出してる以上の力を出すと理性が飛ぶんだよな。城を壊してミューに怪我させたら困るから絞るしかできない」

「理性は大事だけど……アンリがダメそうなら、最悪お願いするかも」

「やばかったら、自分がみんな連れて瞬間移動するからやっちゃってよ」


気楽に言うゾーイに、リツキは少し冷めた目をしながら頷く。


「申し訳ないのですが、ザザィの宮の中にいる人間は、力が足りないので大聖女が眠らせてください」

「分かった。ついたら即眠らせるね」

「一応、予定としては俺がザザィの相手をして、その間にミューとゾーイがアンリを確保、それから入れるなら即、戦闘に入る。もしアンリが使い物にならなかったら、あいつはもう放って、理性を飛ばすか決める」

「分かった」


全員、小さく頷く。

ザザィとアンリの顔を思い浮かべて、瞬間移動をする。

次の瞬間、全員で扉の前に立っていた。


「部屋の中に移動する予定だったのに」

「結界です。ガードみたいなものですね」


宮にいる人間を眠らせてからゾーイに神聖力を渡していると、リツキがスライムのように黒い粘液を出して、扉をググっとこじ開ける。

ゾーイもそれを手助けするように神聖力でグッと後押しして、私もその背中に神聖力を送った。


バンと弾けるようにドアが散る。

私は状況を確認する前にゾーイを連れてアンリの元に瞬間移動した。


アンリがいたのはベッドの上だった。

近くには、一歩引いてベッドから降りたザザィが立っていた


「お前ら」


突然現れた私達に、ザザィは手をブンと振る。

ゾーイがシールドを張って私達を守ったが、背後で激しく何かが壊れる音がした。

私も眠らせようとしたが、何かで妨害されたのか効果がない。


(眠らせるとか、そういうものはあらかじめ対策済みか)


ザザィは髪は灰色と青色が混じった色をしていて無造作な髪型で、顔はチハラサに似てはいるが性格が悪そうな顔をしている。

アンリは、裸で拘束されていたけど、下着は履いていた。

自分でやったのか、下着の上を私の神聖力を使って強靭な膜のようなもので覆ったせいでとれなかったようだった。


(賢い! 貞操も自分で守れる!! でもなんか変になってる)


アンリは意識があるようだけど、薬でもかがされたのか、ぼぅっとしている。

ゾーイがザザィに向けて、神聖力の矢を出して撃った。

やっと状況が飲みこめてきて、猛烈に腹が立つ。


「アンリを薬漬けにするつもりなんて!! この性犯罪者!!!! 二人とも、殺して早く。生かして帰すわけにはいかない!!!!」


腹を立てながら叫ぶと、最大出力でゾーイに神聖力を送る。

だけど、早くアンリも元の状態に戻さないと状況はよくならないので、一旦神聖力を送るのをやめた。


(1時間くらい記憶を消して、薬を排除……できるといいけど)


額をつけて、祈りながらやってみる。

後ろでゾーイとリツキが戦う音が聞こえていたから、大急ぎで真剣にやった。


「……ぅ、」


額を離すと、アンリが呻いた。

それから起き上がって、オェェ、と何か緑色の液体を吐いた。


「きぼちわるぃ……あ、みゆ」


ヘロヘロと顔を上げたので、回復をかける。


「アンリ! 助けにきたよ!!」

「ぅう~……おとこにキスされたぁ~……」


アンリは耐えられないという感じで泣いた。

美少女も嫌なんだから男はもっと嫌だよね、とは思うけど、どうしようと思う。


「アンリ!! お前、ミューがお前のせいでゾーイとキスしたってのに、男としたくらいで泣くな!! 馬鹿が!!!!」


ザザィと戦いながら、リツキが叫ぶ。

アンリがビクッとして泣き止んだ。

私は、そうだ。ゾーイに神聖力流さないとと思い出して、最大出力でゾーイに神聖力を流す。


「……え、ミユ、浮気したの?!」

「しょうがないでしょ。リツキは刺されてアンリは連れていかれて、このままじゃアンリが犯されて拷問にあうって思ったんだから」

「そんな感じだったけど対抗して、あっ、そうだ。服……下着は履いてるけど、この恰好じゃ戦えない」


アンリがもそもそと服を探すが見つからない。


「もうしょうがねぇなぁ!!!!」


リツキがキレながらアンリの身体も黒い膜で覆った。

パンツも隠れたので、不格好ではあるが恥ずかしくはない感じになった。


「ありがとう!!」


珍しくアンリがリツキにお礼を言った。

アンリにも最大出力で神聖力を送る。


「戦えばいいかな」


アンリに言われて戦況を見る。

状況的にいえば、チハラサとボニーの拘束は、ザザィにまったく効いていない。

ゾーイは矢で串刺しにしようとするが、瞬間移動のようなことをして逃げられる。

リツキもスライムのように包もうとしても、1点突破で切り裂かれてから逃げられたりしていた。

こちらも避けているので、そんなに相手の攻撃が効いていないのがマシなくらいだ。


(統制がとれてない。まずは拘束しないと。でも口に出したら作戦がばれる。ザザィ以外に聞こえるように脳内で話そう)


『アンリ。ザザィを中心に広めに行動制限かけて』

「わかった」


アンリが行動制限をかける。

ザザィが自分のまわりに壁があることを感じて、こちらに矢を放ったので、アンリがシールドを張った。


「クッ」


ザザィが、ゾーイの方に移動する。


『ゾーイ、縮めて行動制限!!』

「ん」


ゾーイがシールドを張りつつ、行動制限をかけた。


『アンリ、ゾーイ、同時に動けないようにして。リツキは行動制限ごと包むように、フォーウッドみたいにして!!』

「わかった」

「ん」

「ヨシ!」


光の剣が輪のように突き刺そうとするのを、ザザィが止めると同時にゾーイが手薄になった足元から身体を切り裂くように巨大な棘で串刺す。

避けようとしたザザィの左足を棘が貫いた瞬間。

リツキの膜が、広く口を開いたようにぱくりとザザィを覆ってから、風船が縮むように包み込んで密着した。

ボキボキと腕と足の骨が折れる音と悲鳴が聞こえる。


「あ、喋れなくするの忘れてた」


そういって、口の内側にも膜を入れた。


長く戦闘にかかるかと思いきや、終わってみるとあっけないものだ。

ゴトン、とその場に大きな塊が転がる。


「とりあえず戦闘不能にはしたけど、これどうしよう」


ベッドから降りて、転がるザザィに近づく。

みんな示し合わせたように、近くに集まった。


「ミユキさんが動いた途端、連携がとれたっすね……」

「大聖女がいたからこそ、ガラレオが堕ち、国も救われたんだと今、実感しました」


ボニーとチハラサが唖然としながら呟くのを、そんなこともないけどなと思いつつ聞いていた。


「それにしても、城の奴ってなんで助けに来ないの? 普通、ドアぶっ壊したらすぐに来ると思ってた」

「結界を二重に張ったので来られませんよ。父に報告に行き、ザザィの処遇を決めてもらいましょう。病気が悪化するかもしれませんが」


ゾーイの言葉に答えたチハラサは、黒い塊になったザザィを背負うと、一人で部屋を出ていく。

私達も、そのあとに続いて歩いて行った。



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