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チハラサの秘密と、ご褒美のおねだり。

次の日。

アンリの実家で大聖女姿になり、チハラサさんと話すことになった。

場所には、リツキとゾーイとボニーもいる。

ガードを張りなおすのは大変だったけど、これで安心だ。


「今日は、安全な場所を用意していただきありがとうございました」

「あたしも入ることができて良かったです。この問題は二人いた方がいいっすからね」


感謝する二人を目の前の席に座らせ、私達三人もテーブルを挟んだ反対側に座る。

大聖女姿でも、ボニーは全く気にしていないようだった。


「それで、王族の首を跳ねて鉄柵に刺したのは誰なんですか?」

「アカタイト国の第一王子、ザザィですね」


チハラサはあっさりと教えてくれた。


「王が来ていたんですか?」

「まだ父が生きているので王ではありません。ただ病に伏しているので、ザザィが実権を握っています。この国は、もう少しで他国に侵略されるところだったので、侵略を止めたとしてもアカタイトが攻め入る算段でした」

「あの時にはもうガラレオの侵略は止めていたけど、アカタイトも狙っていたんですね」

「王族の頭をあと30分下げるのが遅れていたら、控えていた者が城にいた者を全て惨殺し、成り代わるはずでした」

「あの頭は、その合図だったということですか?」

「はい。本来もう少し後の予定だったのです。想定外のことが起きて反乱を起こす場合の合図でした」


本当に間一髪の状態だったんだ。


「けれども、私は大聖女らしき人物が聖女宮と神官の問題だけでなく、侵略を止め、死にかけた子どもたちを救うという行動を見て、そちらに期待をかけたかった。だから逮捕したことを確認後、首を降ろしました」


子供を救う……? 逮捕……?


「もしかして、大聖女の正体を」

「知っていますよ。ミユキさんですよね。その情報は私がボニー嬢に頼んで得たものですから、私も知っています」


(確かにボニーさんが知っているのなら、チハラサさんも知ってるか)


「なんか恥ずかしいですね……逮捕しなかったら危なかったんですか?」

「あちらがどの程度情報を把握しているか不明でしたし、大聖女が死んだのにザザィを裏切るのは悪手なので、逮捕が一番安全だという判断です」


確かに。どちらかに付くなら、ついた方を守らないと身を亡ぼす。


「ザザイには、大聖女が怪しんでいるので中止だ。今はあの女たちの仕業にしてやりすごそうと言いました。あの聖女は王族を一人殺しましたが、他は生きていましたからね。ほとんどを殺したのはザザィです」

「そんなに生きていたのに、メイナ一人に罪を……」

「ほとんど瀕死、王族が1人死亡であれば妥当です。放っておけば死んでいましたし。それに今も彼女は生きていますから」


チハラサの目は、メイナもザザィも死ぬべきだといっているかのように冷たかった。


「あとは牢にいる大聖女が首のことを思い出さないように、神力で催眠をかけたりしました。大聖女の記憶操作ほどではないので微力ですが、思い出されるとザザィがまだ国にいる状態だったので危険でしたので」

「忘れてたのは、ただ私がボケてたからじゃないんですね」

「大聖女は勘が鋭い時があるので、ザザィを欺いてアカタイトを救うためには必要なことでした。お許しください」

「ボニーさんからアカタイトの話と奴隷の話も聞きました。酷いところのようですね」

「神聖国とアカタイトは似ています。ミユキさんのような人間が時々発生するんです。アカタイトはそれを奴隷として扱います」

「元の世界から人がそんなに?」

「神の采配というのでしょうか。ボニー嬢もその一人ですが、資源の代わりに人が発生します。神聖力を持つ人間はわずかですけどね」

「神力を持っているんじゃないんですか?」

「神力を持ってるのは王族のみっす。あたしはチハラサさんの神力を使う契約をしてるっす。そういう能力持ちなので」

「えっ、チハラサさんって王族?!」

「そうですね。第二ですが。知識があったからこそ、数年でそこの地位につけましたし、維持し続けることができたのです」


そりゃあ、神聖国の王になるのは拒むよ。だって違う国の王位継承権があるんだもん。


「じゃあ、チハラサさんはそのうちアカタイトに戻るってこと? 困るんだけど!」


悲痛な顔をして叫ぶゾーイに、チハラサはフッと笑う。


「だから最近は大聖女に色々任せて鍛えているんですよ。後輩も育成していますし」

「でもチハラサさんじゃザザィを倒すことは無理っす。かろうじて生きてる現在の王が死ぬ前なんで、今が殺し時なんすけどね」

「ザザィの神力は強いので、私だけではなんとも……だから大聖女の力を借りたかったのですが」

「すみません。でも、侵略をしたらいけないと魔王側から言われていて。国間の侵略行為は基本的にしてはいけないので」

「国ではなく、私が殺すために手伝ってもらうので国間の侵略行為にはあたりません。力を貸してほしいのです」


そういうものなの? 手伝うならいいのかな。助けたい気持ちはあるけど、聞かないとわからないな……。

それにリツキとかアンリの力も必要なら、二人を危険にさらすことになる。

私だけの力でいいならいいけど、それでも全員の許可を得る必要があるから即答はできない。



「魔族領の魔王たちを説得する材料はありますか? あと、許可が出ても、アカタイト国に行ってから決めたいです」

「私が調べた限り、大聖女と同じ世界から来た人間の中にはアーロンさんレベルの知識がある方も奴隷として存在しています。ザザィはその価値をしらない。彼らは殺さないようには処理していますので、引き渡しましょう」

「複数人いるんですか?」

「ええ。そういった知識がある人間は神から与えられる能力というのはないのですが、神聖国よりは多いですね」


それなら、神聖力と合わせて国がとても発展できる。


「それと、私が王位に着いた後は、同盟国としてすべて優先的に品物を仕入れます。ザザィが無能なだけで一応資源もあるので、役に立つかと」

「一応聞きますが、無能だと思うのに、なぜ逆らえなかったんですか?」

「母親を人質にとられているんです。幽閉されてはいますが、逆らわなければ殺されません」


それは逆らえないだろう。私が母親を人質に取られても、同じことになると思う。

それなのに、私に期待を託してザザィを欺いて私の国を助けてくれているんだ。ドロテアにダメと言われても手を貸したい。


「俺は別にチハラサさんを助けてもいいけど何日も国を空けられないよ。チハラサさんも俺もミューもいないんだろ? ゾーイが死ぬぞ」


リツキの言葉に、ゾーイはゲッという顔をした。


「アカタイトまで頑張って片道一日かからないくらいだっけ? 暗殺にどのくらいいる? 二日だとしても 最短4日くらいいるじゃん!」

「ゾーイ頑張れる?」

「二日は休日を入れるとして、二日は四人分の仕事ォ?! 嫌なんだけど! しかもその後にチハラサさんが消えるとしたら激務一色じゃん」

「一応、引継ぎとかもして、どうにかしますので。私の分だけでも三人後任を育ててますし」

「三人であの仕事量捌けないよ! 嫌だ。ユキからご褒美をもらわないとやっていけない。自分は楽して生きたいのに!」

「お菓子とか作ってあげるから」

「やだ! お菓子じゃ割に合わない! 嫌だ!」

「え~……じゃあ後から話そうね」


嫌な予感がしたので、曖昧に笑ってごまかす。

リツキがコイツという顔をしていたので、多分予感は当たっている。

ボニーはニヤニヤしていたし、チハラサは、なるほどという顔をしている。

嫌だ! 国王なのに変な目で見られている!! 嫌なのに事実すぎる!!!


とりあえず、前向きに来週の休み前に行くこと検討するという話をして、解散する。

本当はトランプを持ってきたのでみんなでやろうかなと思っていたが、仕事が大変になることが分かっているので、そんな余裕はなかった。

仕事場を全員で別室に移動させて、仕事に集中することにする。


夜、ドロテアにアカタイトの件を許可を取りに行くことにした。








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