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ジュディとゾーイとのお泊り会【恋の自覚編】

自分の部屋に帰って、みんなでネグリジェに着替える。

ゾーイは自分で持ってきた寝巻に着替えていた。


三人で着ると可愛い! ちょっと透けてるけど白いワンピースにも見えるネグリジェは、野原で花を摘んでも許される可愛さだ。


「アタシが着ると聖女様にある可憐さがないですね。シャーリーはある……体型ですかね?」

「ジュディはおっぱいもお尻もあるのに、ウエストはくびれててすごいね。いいなぁ」

「日頃の鍛錬の賜物ですかね。さ、飲みなおしますか。恋の話とかします?」

「恋かぁ。それより乳の味の酒あるよ。ゾーイの神聖力もらったらもっと美味しいけど、このままでも美味しい」

「神聖力くらい入れてあげるよ。ビンごと渡して」

「わーありがとう! やったー」


ゾーイにお酒のビンを渡すと、神聖力をお酒に入れてくれる。

強いから、小さいグラスに入れてジュディに渡した。

自分のを注いでから飲んでいると、またゾーイに抱き寄せられた。

流石にずっと抱きつきすぎだ。


「わ、本当に美味しい。でもすごく強いですね」


ジュディが一口シャーリーに飲ませてから、グイッと飲む。


「ところで、ゾーイさん、くっつきすぎじゃないです?」

「精神が不安定だからしょうがないかなって思ったけど、長いよね」

「聖女様も突き放してくださいよ。ゾーイさんが正しく生きたいと思っても曲がっちゃいますよ。弟さんがそうだったように」


忠告するジュディに、ゾーイは私を抱えたまま頭に顎を乗せた。


「曲がっててもいいよ。たぶん手遅れだし。別にそういう関係になりたいわけじゃないし、正しく生きるにはこの世界は酷すぎるから」

「曲がってるの? いつのまに?」


それって恋愛的な意味で? と思ったけど、なんか聞けなかった。

だって、聞いたところでどうにもできないし、聞かないほうがいいかなと思ったからだ。

そんなことより、お酒が飲み終わったのに注げない。なんて邪魔なんだ。そろそろ怒った方がいい。


「聖女しゃま! わらしもくっつきま!!」


私にドーンとシャーリーがぶつかってきた。

酔っているのか、胸に顔が当たっている。


「わぁ、アンリと同じようなことをっ」

「一回やってみたかったれす。でもおねーちゃんはヤだし」

「シャーリー。聖女様に失礼でしょ。国王なのに」

「シャーリーちゃんは酔いすぎ。寝な」


ゾーイがシャーリーの頭に手を乗せると、ころりとシャーリーが転がる。

しょうがないなと思いながら、全員でシャーリーを一番端に寝かせた。


「でも、シャーリーが元気で良かったよね」

「そうですね。恋人とも問題なく段階を踏めてるようですし」

「どういうこと? 自分が知らない時の話?」

「シャーリーが私の身代わりで攫われて、瀕死の重傷を負ったの。だからフォーウッドも、酷い貴族も、ガラレオも潰した」

「聖女様は数時間でシャーリーの傷を全部治して、二日分の記憶も全部消してくれたんです。感謝してもしたりない恩があります」

「たった一人の為に国を崩壊させたのか」

「そこまでいかないけど。でもきっかけは一人でも、ゾーイを含めて犠牲者はたくさんいたから後悔はしてない」

「うん。ユキが助けてくれて良かった。殺してくれたことにも感謝してる」


酔ってはいないはずなのに、酔っているような目でゾーイは私を見る。

なんか、少し変な感じかもと思った。

ジュディが突然パンっと両手を打つ。


「さ、寝ましょうか。聖女様とゾーイさんの間にアタシが入りますよ。流石に危ないんでね」


ゾーイはジュディにニコッとした。

次の瞬間。ジュディが目を閉じてその場に転がる。


「え、なんで寝かせたの?」

「なんか、ちょっと邪魔だなって思ったから」


眠ったジュディの身体をシャーリーの横に転がす。

私とゾーイの間においてもいいけど、なんとなく大丈夫かなと思ったからそうした。

ゾーイってこんな人だったっけ? と少しだけ不安になる。


(4日くらい前までは全然そんな感じじゃ無かったよね? ハグしたせいでやっぱりおかしくなっちゃったのかな)


今までゾーイからはずっと抱きついてきてたし、今日はしないと死んじゃいそうだったから間違ってないと思うけど。

でも、これが恋愛的な感情のせいだったら、人間はやっぱりホルモンで狂ってしまうんだ。


「ゾーイ、ちょっとおかしくなってるよ。別に私をどういう目で見ててもいいけど、浮気はしないしずっと一緒にいたいんだから狂っちゃ困るよ」

「ずっと一緒にいるつもりなんだ」

「そうだよ。大切なの。幸せになってほしいから助けたのに、恋愛なんて性欲の名前が変えたものに狂ったら不幸になっちゃうよ」

「ユキは、自分が恋愛的に好きだって思っても嫌じゃないの?」

「話を聞いてる? 困ってるって話をしてるじゃん」

「いや、生理的嫌悪的な」

「えぇ? 気持ち悪いならこんなに抱きついてくる奴殴ってるよ。でも恋愛じゃないから、アンリとかリツキみたいに不幸になっちゃダメ」

「二人とも、別に不幸ではないと思うけど」

「そんなことないよアンリもリツキも、本当は自分一人だけ好きでいてほしいんだよ。でもできないから、たぶん幸せじゃない」


はぁ、もう疲れたと思いながら、私もベッドの中に入ってジュディの横に寝ころぶ。

ゾーイも私の隣に横になると、こちらをジッと見た。


「ハグしていい?」

「今日のハグは在庫が切れました。浮気はしませんので、恋愛的な感情を抜いてからまたお越しください」

「恋愛感情ってなにかよくわからない……」

「私が他の人と感覚同期したって言ったら、自分とはしてないのに? とか思ったらアウト」

「え、やったの……ってアウトじゃん。えぇ」


ゾーイは片手で顔を隠した。


「もうゾーイはジュディとかとも仲良くして、親交する人を増やそ。私が身近すぎて勘違いしてるだけだよ」

「人生って上手くいかないな。ユキは発情してないのに、なんでこっちが発情したんだろう」

「人生ってそんなもんだよ。おやすみ。ゾーイ。いい夢みてね」


ゾーイの頭を撫でて、神聖力を流して眠らせる。

適当に聞き流したけど、アウトって言ってたからやっぱり恋愛感情があるのか……。

穏やかに眠る顔を見ながら、人生って本当に思った方向にいかないなと思った。




次の朝起きると、ゾーイはいなかった。

三人でジュディの家に帰ると、全員で朝食を作ってから、トランプの話をした。

作りたいという話をしたら、バラバラの絵は大量生産以外は難しいとシャーリーに言われてガッカリした。

裏に柄が入った白紙のトランプサイズの硬い紙自体は手に入るらしいので、ジュディがサンプルを手書きで作ることを引き受けてくれた。

仕事が暇なときの内職が欲しかったとのことで難しい絵以外の柄は書いてもらえることになった。


そんなこんなで、色々話して解散する。

楽しかったし満足したけど、心の片隅でやっぱりこれはゾーイを振ったことになったのかなと思って気が散ってしまった。

でも、大切だってことも伝えたし、あれ以外私にはどう言うこともできない。



「ただいまぁ」


家に戻ると、珍しくアンリとリツキが一緒に話していた。

珍しいこともあるものだと思う。

でも、二人の顔は険しくて、何事かと思ってしまった。


「どうしたの? そんな深刻な顔をして」

「あ、ミュー……今朝、ゾーイが話に来たんだけどさぁ」

「ゾーイが? 昨日、恋愛感情があるなら抜いてきてって言ったけど」

「そうらしいけど、ミューが浮気が無理らしいから、自分も仲間に入れてくれって頼みに来た」

「仲間って」


どういうこと? 恋人や配偶者は海賊団じゃないんだよ。


「ミユが二人も配偶者を作るから、ゾーイが増やせるって勘違いしてるんだ」

「ゾーイはそんなに馬鹿じゃないはずだけど、なんでそんなことになったんだろう。おかしいな」

「バカかよって断ったけど、ゾーイのことは嫌いじゃないから殺せないし、いなくなると国も回らなくなる……」


リツキにも嫌いじゃないって感情ができたんだ。

やっぱりみんなの中にいたらリツキも丸くなるんだ。良かった!


「なに笑ってるんだよ。僕らは朝から嫌な気分なのに」

「二人がゾーイ相手だと丸くなったなって驚いちゃって」

「だって仕事をゾーイの代わりに誰かを入れるにしてもだよ? ミューがいる限り同じ問題が出てくるし、それならゾーイの方がマシだし」

「僕も自分の仕事したいから王宮に入れないし……でも、ゾーイと同レベルの頭があって神聖力もある奴っていないから困る」

「私もどうしたらいいか分かんないけど、とりあえずショックで消えるとかがなくて良かった。いなくなったら悲しいし」

「でも仲間に入れる入れないの問題じゃない。コイツとはもう一緒に裸でいるのも慣れたけど、ゾーイは気まずいし」


リツキの言葉に、えっ、と思う。

別にゾーイは私と付き合いたいとは思ってるけど、他の人には裸を見せたいと思ってないよ。ネグリジェも着たくないのに。


「ゾーイの裸を見ようとしてるの? 最低!」

「僕は慣れてないし、ゾーイのも見たくないよ。こいつと違って」

「気まずいって言ってんだろ。なんなんだ一体」

「嫌なのは、ミユもゾーイを振ってるけど、別に嫌じゃなさそうなことだよ。女の子だから男よりはマシかもしれないけど」

「ハグくらいしかしてないし……想像できないよ。そんなこと言ったら二人の時だって想像なんてできてなかったけど」


私の返事に、二人ともため息をつく。

それにしても、何をどう間違えてこうなったんだろう。

最初にハグしたのが悪かったのかな。調子に乗って人の人生を狂わせてしまった。

でもハグに慣れてなかったら、昨日の折れた木のようだったゾーイは壊れてた気もするし。

そう思うと、一時、自分が止まり木のような存在で居られるのであれば、好意がどうでも、どうでもいいかなと思った。


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