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ジュディとゾーイとのお泊り会【事件編】

次の日。


睡眠不足だと思いながら、お菓子を作る。

しばらく感覚同期は禁止しなければ身がもたないなと思った。

久しぶりにお酒入りのミルクレープを作る。

ジュディの家にはオーブンも冷やせるような設備もないので、作れるものが限られている。

作り方を聞かれた時に設備がないから難しいというのは悲しいから、ジュディの家でも作れるものにした。

普通のと二種類作って、半分ずつ取り替えて、一人二個食べられるようにする。


(アンリとリツキは男の子だから四つ分あればいいよね)


リツキは熟睡しているので、アンリにミルクレープを持っていく。


「あ、ミユ。もう行く時間?」

「うん。そろそろゾーイが来ると思うから、アンリに持ってきた。お酒入りと普通のどっちがいい?」

「お酒入り。あと、昨日さ、あっちとも感覚同期した?」

「アンリと同じことしたら嫌がってた」


お皿にケーキをよそいながら話す。

アンリは眉をしかめている。


「ミユは僕たちをなんだと思ってんの」

「だんなさま」

「じゃあいいけど!」


シンプルな言葉にアンリは気を良くしたのか、ケーキ皿を渡すと少し拗ねたように笑って受け取る。

ゾーイが来る時に開くお知らせの貝が開いた。


慌てて厨房に戻ってケーキが入ったバスケットを持つと、ゾーイがやってきた。

休日仕様なのか、少しラフだけどきまっている。芋っぽい私とは正反対だ。

ジュディの家に行くのは、瞬間移動で一瞬だった。



「聖女様! ゾーイさん! いらっしゃいませっ」


部屋をノックすると、シャーリーが出てきてくれた。

屋敷の場所が変わっても、まだ二人は同じ場所に住んでいる。


「今日はありがとう。ケーキ作ってきたの。半分がお酒入り。半分は普通のやつ」

「聖女様の手作りですか! 嬉しいです! お姉ちゃ~ん。聖女様たちがケーキくれたよ」

「お昼作ってたんですけど、じゃあもうそんなに作んなくてもいいですね」


そういうと、ジュディは大皿に作っていたパスタをよそった。

トマトソースのパスタだった。


「まぁ顔は汚れますけどね。気取る関係でもないんで。ゾーイさんは辛いの大丈夫ですか?」

「あ、得意」


気取らないジュディに圧倒されているのか、ゾーイはかしこまりながら答える。

シャーリーに言われてみんなで席に座って、渡されたタオルで服をカバーしながら大皿からパスタをとって食べた。

パスタはアラビアータみたいな味で美味しい。


「ジュディ、お料理上手だね」

「うん。美味い」

「これしか得意料理がないんで、いろいろ汚れたとか怒らないでくださいね」

「お姉ちゃん、他のも上手いよ。でも初めては顔が汚れるくらいのほうが仲良くなれるんだって」

「シャーリーは余計なことを言わないの」


ヒヒ、と笑うシャーリーと、少し照れているジュディにホッとする。

遊びに来て良かったと思った。


「これからどこに行きます? 貧民街のほうに乙女の本屋みたいなものがあったんですけど、禁止の本をたくさん売ってたとかで潰れちゃって」

「わたし行ってみたかったのにな~。彼氏と行くのには恥ずかしい本が売ってるとかでいけなかった」


私とゾーイは少し固まった後、少し苦笑してごまかす。

読まれていなくて本当に良かった。

ああでもないこうでもないと言いながら、パスタを食べ終わってミルクレープを食べる。


「お酒入りのケーキって美味しいんだな。あとさっぱりしてる」

「ゾーイもしつこいの嫌いだから、しつこくない感じにしたの」

「聖女様のケーキ、一回食べてみたかったから嬉しい。美味しいな」

「真似して作りたいですね、コレ。オーブンがなくてもできそう」

「あとで教えるよ。簡単だよ」


キャッキャとしながらケーキを食べる。

この前話していたクラブみたいなところの話になった。


「そういえば、昼間に踊ったりお酒飲んだりする似たようなとこありますよ。夜より危なくないらしいけど行きます?」

「あー、入るだけなら今は無料って見た。わたし行きたいっ!」

「大聖女だから、何があっても大丈夫な気がしてきたかも」

「ユキが自分から離れないならいいよ。大聖女になにかあったら大変だから」


お酒が入っていたからか、みんな気分が緩くなる。

そんなわけで、全員でクラブっぽい場所に行くことにした。



着いた場所は、なんか大きくて広い建物だった。

ジュディとシャーリーはちょっとおしゃれな恰好にしたけど、私は危ないからという理由で芋っぽい恰好のままだ。

建物の外側では、おしゃれな女の子たちが男性と一緒に話していて、とても怖かった。

前の世界だってオタクだったんだから、相容れない世界だ。


「面白そうですね、聖女様」

「聖女さま。入場無料、女の子はドリンク一杯無料だって」

「危なくないの?」

「そんなに無料ってことは、なんかあるんじゃないか? 怪しいな」

「流行ってる店なんで、昼からも客が来てほしいだけだと思いますよ。女がくると男も入ってくるんで」


ジュディとシャーリーは、なんてこともないように、建物の中に入っていく。

なんか、入りたくないとは言えない雰囲気だった。


「ユキ、大丈夫?」

「うん。なんか苦手な雰囲気だけど、ダメならすぐ帰ろう?」

「そうだね。まぁ雰囲気だけ」


ゾーイが後ろから肩を抱いて歩きはじめたので、そのまま建物の中に入る。

中はギターや太鼓に似た楽器の音、歌声や歓声が入り混じって凄い音だった。

人もすり抜けて歩ける程度の混雑ぶりだが、クラブというよりは、もうちょっと華やかで和やかな曲調で少しだけ安心する。

照明がぼんやりと光る中、ジュディとシャーリーがよっつ飲み物を持ってきた。


「お酒! 女の子四人で来たって言ったらくれましたっ」

「えぇ、確認もなく?」

「ちょっと怪しいですけど、ちゃんと樽から出すところから見てたので大丈夫だと思いますよ。どの味が良いですか?」

「自分は余ったのでいいから、二人が先に選んでいいよ」

「私も、飲んだことないから何が何の味だか分かんないし」


二人はじゃあ、といって好きな味を選んで、残りを私たちに渡す。

よく分からなかったので、好きな色で選んだ。


「ユキ。とりあえず飲まないでおこう。二人が飲んで具合が悪くなったら拾わないといけないし」


耳元にゾーイの声が聞こえて、少し驚く。

でもこんなことは大声で話す内容じゃないので、小さく頷いて答えた。


二人は慣れた感じで踊りに行ったので、とりあえず様子見で私たちは椅子に座ってその様子を見る。

ゾーイはさっきから、ちょいちょい人に話しかけられては断っている感じだった。


「モテているけど大変だね」

「話しかけられたくないからハグしてくれない? 男女除けに」

「もうしないよ~。ドロテアにゾーイの優しさに甘えるなって怒られたし。しょっちゅう私と恋愛みたいな目でみられて可哀想だし」

「別にいいのに。気にしないよ。ユキは気になるの?」

「気にならないけど。ゾーイが嫌になって消えるかもしれないっていうのは嫌だ。困るし悲しい」

「なんで消えるんだよ。しいていうなら、ハグされない方が嫌……ん?」


ゾーイが突然止まって、まわりを見回す。


「どうしたの?」

「ボニーの気配がする。こんなに人が多いのにするって、近い……」


突然、隣のなにもない空間から、クセが強い三つ編みが現れる。


「ばれちゃいましたか。流石ゾーイさん」

「近いな」

「その飲み物、飲まない方が良いっすよ。利尿作用があってね。でもここのトイレは危ないんすよ」

「危ないって」

「それは内緒っす」


えぇ、と思いながら、ジュディとシャーリーを見る。

シャーリーは知らない人と話していたが、ジュディがいなかった。


「ジュディがいないんだけど!」


席から立ち上がって、見回す。

薄暗くてよく見えないが、やっぱりいないように思えた。


「ボニーさん、トイレどこ。教えて」

「えぇ、行くんすか?」


言いながらも、ボニーは立ち上がり案内するように走り始める。

私たちもその後を追って走った。


「なにもないといいけどな」

「もしジュディが危ない目にあってたら、こんな店壊してやる」


腹を立てながらボニーの後に続いてトイレの中に入る。

中には女性が一人だけいて、他には誰もいなかった。


「仲間」


ボニーが一言女性を指しながら言う。

仲間か、と思いながら通りすがりに気絶させた。

トイレは全部で四つあって、その一番奥の個室の扉をボニーが開ける。


「もう入っちゃったっすね。奥の壁、壊すしかないっす」

「壁ね。壊すのは得意!」

「待て、危ないから三人とも透明にする!」


そう言いながら、ゾーイは三人に透明化させる。

次の瞬間、私は振りかぶって壁を爆発させた。




文字数が増えるから、タイトルからシャーリーは削った。

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