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お泊り予定とリツキとの感覚同期

ドロテアが魔王に王族の首の話を聞いてみたところ、知らなかったとのことだった。

そもそも首を切ること自体が大変だが、高い鉄柵に複数の首を刺すことは、通常時間がかかる。

短時間で人に知られずに作業を終えられたのは、高い神聖力か何かが必要だろうとのことらしい。

チハラサは身長が高いから、頑張れば鉄柵の先に首を刺すことはできそうだけど。


(だけど、チハラサさんはそんなことはしないと思いたい)


「聖女様、最近ずっと元気がないですね」


朝、着替えを手伝ってくれているジュディが話しかけてくれる。


「最近、いろいろ問題が多くって」

「じゃあ、アタシの家でお泊り会とかしませんか? 夜遊びしたっていいですし。パッと遊んじゃいましょうよ」

「夜遊びって何するの?」

「踊ったり騒いだりですね。怪しい人もいるから、聖女様は誰からも食べ物を貰ったり一人で動いたりはダメですけど」


(元の世界で聞いたことがあるクラブみたいなものかな。リツキとアンリが聞いたら怒りそう)


「ちょっと気になるけど、たぶん二人が知ったら泡を吹いて怒るから、もっと犯罪がなさそうなところがいいな……」

「確かに。でも女性だけで静かなところに行くと、それこそ危ないですからね」

「でもお泊りは楽しそう。いつでもいいからやりたいな」

「じゃあ、明日はお休みですよね? 明日の昼から遊びましょう。そしたら夜遊びしないでいいので!」

「それなら怒らなそう! それにしよう! 楽しみ」

「昼から遊ぶところは考えときますね」


まだボニーの問題もチハラサの問題も解決してないけど、お休みくらい友達と遊んでもいいよね。

ちょっとウキウキした気持ちになってしまった。



ジュディを連れてダイニングに入る。

今朝のダイニングもみんな揃っていた。


「明日、ジュディの家に昼から行ってお泊りしていい?」

「いいけどさ。でも変なところに遊びに行くのは禁止。ミューは可愛いからね」

「でも、ジュディの家って三人寝られるベッドあるの? 別に僕らに会わなくてもいいから寝る時はみんなでこっちに来たら?」

「確かに……ジュディに聞いてみるね」


食事を持ってきたジュディに話をすると、お屋敷に泊まってみたいというので、夜は私の部屋で泊ることになった。

私の部屋のベッドは三人寝られるようになっているし、二人は男性だから本当に広々としたベッドだからだ。

それから、ガードをかけてみんなにドロテアに聞いた魔王の話を情報共有する。


「犯人が危険を顧みず鉄柵に首を下げたのは、誰かに知られたいって意思表示だよね」

「じゃあチハラサさんは、その意思表示を知られないために箝口令をひいたってことか」


アンリとリツキが話す。


「誰かに知られたいって他にも、晒して馬鹿にするとか、色々な可能性があるけどね」

「今回、神殿では国王の遺体は国葬も式典も行ってはいないから、いずれにせよチハラサさんは彼らに関しては腹に据えかねていたんだろう」


ゾーイの後に、のんびりとモーリスは話す。

変な仕事をしていた頃に比べて、モーリスの顔はずいぶん明るく穏やかになった。


「人道的にも、国益的にも酷い状況だったから、そう思っても仕方ないですよね」


チハラサが王族を殺したとしても、忠義を絶望に変えたほうが悪い。そうしないと世界が良くならないのなら反乱は起きる。

でも、チハラサの性格からすると、それを善としたら、世の中は簡単に人を殺すようになるから、彼は犯罪を隠すだろう。


(箝口令をひいた理由も分かるけど、それなら、鉄柵に頭をつけたのは、やっぱりチハラサさんじゃないよね)


犯人とチハラサは繋がっていないのだろうか。ボニーなら、親交のあるチハラサは隠すかもしれないけれど。

でも、想像でしかないことだったので、口に出すことはできなかった。





午前中の仕事を終えて、お昼の時間になる。

久しぶりにジュディとシャーリーと遊ぶのが楽しみでウキウキしていた。

昔、女の子でお泊りした時はトランプとかオセロで遊んだけど、この世界にはどれもない。


(作っちゃおうかな! お泊りなんてこれからまたあるだろうし。他の人もあったら楽しいだろうし)


今日の夜は、リツキと一緒に寝るつもりだったけど、その前にトランプの絵を書いて暇な時に作る方法をみんなに聞こう。

それに、お菓子もいるかな。お呼ばれしてるし!

完全に浮かれていた。


「明日、お菓子作っていっちゃおうかな~」

「多めに作って置いていって」

「わかった~」

「いいな。自分は友達がいないから」

「俺ですら友達いるのに。ゾーイってあいつ……アンリよりは人付き合い上手いのにな」

「監禁から戻って友達作れると思ったけど、聖女がみんな発情したからな。ドロテアのせいだ」


そうだよね。ドロテアがあんなことを広めなかったらまだマシだったのに。

リツキは貴族のアーロンさんの所の息子の繋がりで友達が増えたのに、ゾーイにはまだ誰も紹介できていない。


「可哀想。あ、ゾーイも来る? ジュディに聞いてオッケーだったらだけど」

「え。いいの」

「いいよ。ちょっと聞いてくるね」


ぴょんと瞬間移動してジュディの元に飛ぶ。

ジュディは二つ返事でオッケーだった。


「シャーリーにも恋人がいますからね。大丈夫でしょう」


サラッと言われて、そうなの?! と思う。

明日詳しく聞こう~と思いながら別れる。


仕事部屋に戻ると、ゾーイとリツキの機嫌がちょっと悪そうだった。


「ゾーイ。明日オッケーだって! お昼に家に来て~」

「ありがと。嬉しいよ」

「リツキも、よくわかんないけど機嫌直してね」


リツキはこちらを見て、少し頷く。

機嫌が悪くても、午後も顔を合わせて頑張るしかないので、みんなで仕事した。





その夜。

リツキも平等に大事にしよう~と思ってリツキの部屋で寝ることにした。

感覚同期も平等にアンリと同じようにやるのだ。今日はリツキの機嫌も悪いしちょうどいい。

寝っ転がるリツキの上に乗っかる。


「新しいことをしてもいい?」

「いいけど。ミューが積極的だとエロいんだよな」


はは、と笑うリツキの上をにょこにょこ這い上がって、キスをする。


「?! む、ぅ」


リツキの足が動く。

この前のお返しだよ、という感じで続けて口内を遊んだ。


「みゅ、うぅ」


リツキの手が、私の口を塞いだ。


「ちょ、ミュー、どっからその知識……」

「この前の本。嫌?」

「俺が下の本だったのかよ。面白いけどさ、ハマったら嫌だからやめといて」


やっぱりリツキもダメなんだ。

おもしろいな~。


「なに笑ってんの。すげー人ごとだと思ってさぁ。こっちにもやり方教えて」

「いいけど、リツキで神聖力足りるかな」

「足りなかったらミューがくれたらいいんじゃん。結婚してるんだし」

「……そっか。そうだよね」


当たり前のことに少しだけ嬉しくなる。

寝よ寝よ、と私を体の上に乗せたまま起き上がると、リツキは明かりを消す。


リツキは覚えがめちゃくちゃ早かったし、勇者の力を使うと二重に使えることを発見して喜んでいた。

私は鬼に金棒。リツキに感覚同期だと思いながら教えたのを心から後悔した。




ミユキのいない隙に、リツキがゾーイに「同じベッドで寝るな」と言って、「嫌だ。ユキが言ってないのにリツキンが勝手に決めんな」と返されて、二人とも不機嫌になっている。(番外編に書くまでもない内容)

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