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二次創作に翻弄される人達

夜。

ガードをかけた応接間に四人で入って、二人に本を読ませた。

本を読んだリツキは凄く嫌そうにしていて、アンリはうなだれていた。


(おかしい。ちゃんと選んでリツキとアンリのBL本と、私たち三人の本を持ってきたのに)


「名前を隠すくらいはしてもらわないと困るよね」

「いや、国王で妄想は不敬。大聖女とはいえ、ミューで変な妄想は許せない」

「僕がこいつにやられてる妄想もされたくない。相手が誰でも男相手は嫌だ」


それぞれ違う本で嫌がっていた。

アンリとリツキは私と同じベッドを使っていることもあるから大丈夫だと思ったけど、ダメらしい。


「明日俺がチハラサさんに文章を考えてもらって、新聞社に持ってくわ。国家に関係する人物の本は制作も販売も禁止にする」

「そうだな。それならお前も僕も安心だ」

「じゃあ、リツキお願いね。今止めとかないと増えそうだし」


ゾーイと私が安心じゃないなと思ったけど、バレると怒りそうだから言わないことにする。

殺されるのが嫌なのか、ゾーイも何も言わずにお茶を飲んでいた。


(聖女が書いてるなら、聖女宮にポスターを貼っておけば大丈夫か)


「じゃあ、これでこの件は終了だね。三人は自分の本読みたい? 読みたいなら部屋に入れるようにしとくけど」


話が終わったなという感じで、こちらに質問を投げる。


「僕は読みたくない。処分してほしい。本屋に流通しているなら燃やして消してほしいくらいだ」

「俺も興味ない。書かれるのは別にって感じだし、ミューならちょっと読みたいかもしれないけど、大聖女じゃなぁ」


ゾーイの質問に、二人は素直に答えた。

確かに本屋に国王のいかがわしい妄想本があるのは困るから、あとで処分してもらわないといけないな。

でも、本の内容はちょっと興味がある。


「私は読むから、入れるようにしておいて」

「えぇ、ユキが読むの?」

「うん。気になるから。はじめてこういう本読んだし」

「ミューがいかがわしい本に興味を持ってしまった!」

「別にエッチなのが見たいってわけじゃ」


でもちょっと興味ある。

だって今まで全然見たことないから! 自分で買ったらどこに置いたらいいのかわからないけど、今なら読み放題だし。


「わかった。まぁでもユキはもう入れるようになってるから、いつでも入って良いよ。王宮も出入り自由だろ?」

「うん。王様だからね。いつでも瞬間移動できるよ」

「ミュー。エロ本を読むのにそんな元気に答えるもんじゃないよ。俺とコイツのエロ本持ってきたし妙な目で見てるのは分かったけど」

「それは、妙な目じゃなくて、だって他の本の方が傷つくと思ったから」

「そんなに酷い本ばっかりなんだ。僕とモーリスのも多分あるな。嫌だな。燃やしてほしい」


アンリがしょんぼりしてしまった。

現代人の私やリツキと違ってアンリは潔癖なのかもしれない。


「……ミユは今日はそういう本読むんだろうし、今日はもう寝るよ」

「えっ、そうなの? 俺、ミューとイチャイチャしようと思ってたんだけど」

「発売禁止処分になったら、王宮にも置いておけないだろうから、今読むしかないよ」

「ウィリアムソンは賢いな。うん。持ち帰るなら良いかもしれないけど、あそこに置いておけるのはニ、三日だと思う」

「そうなんだ。実はすごい作家がいるかもしれないから探さなきゃ!」


ちょっと読んだ感じ、私達の人物像がちゃんと掴めてるのは、ゾーイと私のやつしかなかった。

だから細かいことを気にしなければただの恋愛小説だ。恥ずかしいけど、二人とマンネリになる前にそういう知識もつけたいのもある。

でも50冊以上あったから、なかなか大変だろうな……。


力ない二人と別れて、王宮に飛ぶ。

部屋の中に入ると、なぜかゾーイもいた。


「ゾーイも来たんだ」

「分けたの自分だから案内しようと思って」


そういうと、ゾーイはどこの区分けがどういう間柄なのかを教えてくれた。


「おすすめ作家とかいる?」

「そこまでは読んでない。自分が入ってるのは読んでるけど。あ、自分のはここ」

「やっぱり椅子のとこなんだ」


思ったことを言うと、ゾーイはこちらを見て、少しだけギクシャクとした。


「こっちが大聖女、こっちがユキ。もう帰るから、自分がいる時に読まないように」

「大聖女は多いけど、私のは四冊だけなんだね」

「一人で書いてるんだから四冊でも多いよ」

「え……ポスターでゾーイの本禁止って書いて聖女宮に貼ろうと思ってたけど、そんなに熱心なのに申し訳ないな」

「でも、まぁ色々具体的で……なんていうか、困るから、自分もこの辺で止めてもらいたい」


ぼそぼそと話すので、よほど話しにくいことなのだろう。

確かに私と恋愛関係の本なんて、それは話しにくいだろうなと思った。


「わかった! 適当に読んで、適当にゾーイの小説を書いちゃダメってポスターも作るよ!」

「うん。よろしく。じゃあ、自分はもう帰る」


そういって、ぎこちなく笑うとゾーイは消えてしまった。


「さて、まずは三人のやつから読もうかな!」


むむ……と読んでみる。

全然参考にならない。私が最初に読んだやつのほうがまだ人の心がある。

三人で付き合うのはさぁ! 無理があるよね! ちょっとそれはどうなのかな! と思ったところで我に返ってしまった。

どっちがふられても可哀想。二人と付き合うと私がとんでもないことになる。現実が一番優しいじゃないか!

二次創作には愛をもってほしい! 仮にも国王の大聖女を殺さないでほしい。とりあえず生きてる! マンネリ回避とか言ってる場合じゃない。

どちらかと付き合ったやつのほうが多分ロマンチックなんだろうな。三人は良くないんだ。


(本当に、ちょっと読んだゾーイとの奴の方が愛があった。なんか詳しくて怖かったけど)


さっきゾーイに手渡してもらった私の本を、もう一回手に取る。

読んでみると人物に無理がないし上手い。でも他人として読みにくいから、それはそれで恥ずかしい。


(でも愛がある……すっごくなんか照れて読みにくいけど)


二冊目を手に取って、ペラペラと読んでいると、どんどん大人の感じになってきて、本を閉じる。


(うん……読めない。明日からどんな顔をして会えばいいのか分かんないし)


でも、なんでこんなに詳しいんだろう。

私がお菓子を差し入れするとかは、どっかで聞くチャンスがあるとしても、なんか見てきたのをそのまま書いたみたいな。

それに、ゾーイが一回経験済みみたいなことまで書いてある。そんな偶然あるのかな。

覗き見してたってことかな。

それなら、ゾーイのガードを上回る高い神聖力が必要だろうけど、ガードが壊されたならゾーイが気付くだろうし。


(もう少し……読むか。そっか。だからゾーイは昼にこれを読んでたのかも。夜にこんなエッチなの読んでられないよ)


薄目を開けて、続きを読む。

大人の雰囲気になってきて、あわわーと思ってエッチなシーンを飛ばしながら読むけど、時々身に覚えがある出来事が出てきてびっくりする。

メイナに殴られそうになってゾーイが助けてくれたところなんて、メイナを違う人物に変えて上手く小説にそのまま入っていた。

それより聖女同士はこうするんだ! と無駄な知識がついてしまった。


(この作者の人、かなり色々詳しいけど、どこまで知られてるか分からなくて怖いな。リツキが弟とかも知ってたりして)


私が二人と結婚してて、一人は弟なのが知られている恐れがあるとか怖すぎる。

でもそのくらい詳しすぎてドロテアかゾーイが書いてるって言っても信じてしまいそうだ。

でもゾーイが自作自演してるとは思えないし、ドロテアは子育てで忙しい。


(ドロテアに見せてみたら誰が作者か分かるかも。他人の秘密を知って小説にしてしまうのは、いくらファンでも良くないと思う)


作者名は、ハニーとだけ書いてあった。

もし、ガードを一時的に無効にして覗き見る能力があるとしたら、脅威でしかない。

小説が上手いというのは置いておいて、誰が書いているかは突き止めなきゃなと思った。





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