能力
起き上がるやいなや、ポラリスが指示を飛ばした。
「アルトゥーロ!リゲルの様子を見て来い!レグルスはドアが開き次第僕と車両前方の確認に行くぞ!他は待機だ!」
「ベガ、いい子で待ってるんだぞ」
「王子様……」
ベガに優しく言い聞かせたアルトゥーロは、後方車両へ駆けていった。
その時、車両のドアがぎこちなく開く。
ポラリスとレグルスが外へ出て、前方へ向けて走り去っていった。
太陽は、ベガの姿になりながら、心配そうにアルトゥーロが去っていった方向を見るベガを見つめていた。
それからしばらくして、車両の前方から爆発音が聞こえてくる。
「何の音!?」
「レグルスさんの能力でしょうか……」
「能力!?」
「太陽さんが他人と同じ姿になれるのと同じように、私達メトロに迷い込んだ者はみんな不思議な能力が使えるようになっておりますの。しかし……」
「しかし?」
「似たような能力を持つ怪物が、このメトロの中を徘徊している事も分かっているのですわ。それらは一見人間に見えるものも多くて、判別が難しいのです」
「このメトロ結構クソゲーだね」
また爆発音が響く。
「大丈夫でしょうか……」
「みんなどのくらい強いの?」
「確か、ポラリスさんは遠心力を操れて、レグルスさんは爆発を起こせます。王子様は透視が出来るようになりましたが、元々剣術に長けていらっしゃって、そっちの方が強いんじゃないかしら」
「シンプルに強いね。それで戦闘班とか決まってるんだ」
「ええ。ちなみに私は"出来ない事を出来るようにさせる能力"ですわ」
「え、強い」
そこでカペラが口を開いた。
「そして私は"一時間だけ相手を従わせる能力"よ、命が惜しければ私の機嫌を損ねないことね」
「ええ……」
太陽の姿がベガからカペラのものに変わる。
「何故か発動する時としない時がありますけどね」
「ぐ……」
ベガの言葉にカペラは言葉を詰まらせる。
「……なんか私だけやたら弱くない?」
「そうかしら?存外コピー能力だったりするかもしれませんわよ」
「ここでそれは強過ぎない?」
そう話していると、ドアが閉まり、車両が動き出した。
ゆっくりと、車窓の向こうに薄暗い駅が滑り込んでくる。
そして電車が停車し、ドアが再び開くと、前方からポラリスとレグルスが走り帰ってきた。
「電車を止めていたエンティティを倒せた。食料調達を始めよう」
「エンティティ?」
「先ほど話しました、メトロを徘徊する怪物の事ですわ」
「そいつって食べられる?」
太陽の言葉に、乗客達は唖然とした
そんな中ポラリスが淡々と答える。
「太い針金を絡み合わせた塊みたいな奴だったし食べられはしないだろう」
「そんな事より麺よ、麺!決着を付けようじゃない!」
「そうだね!吠え面かかないでよ!」
太陽とカペラが元気よくホームへ降り立つ。
そしてカペラがしたり顔で返事をする。
「是你!你会后悔的!」
「!?……中国語になった……?」