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二話:変わりうるもの

 見渡すと壮大な景色が広がってきた。豊かな緑、大きな街、元の世界ではあまり見られない組み合わせだ。


 街は石造りの家が……いや違うな。コンクリートに似てる? 不思議に思うと何かが壊れる音がした。さっき撥ねられたのを思い出して身構えたが、ただの建物の撤去作業のようだ。


 さっきの家の材質は……鉄筋コンクリート。壊される建物を見てわかった。あれは19世紀頃の発明だしかなり発展しているようだ。この情報はネットで知った。


 魔法あるらしいし、もしかしたら俺がいた世界より発展しているかも。それに何やら売出しでもやっているのか活気づいている。


「兄ちゃん、見ない顔だな。これでも買ってけば?」


 売っていたのは穴が空いた……まんまドーナツである。 無駄遣いは良くない。ーーが……耐えられると思うな。甘いもんは食いたいんだよ好きだから。


 結局、神様にもらったお金で買って昼飯代わりにさせてもらった。買うときに思ったが、しっかり紙幣が存在しているようだ。どの世界はもうこの時点で間違いなくかなり発展している。


「ここの人はあったかいな」


 さっきのお店のおじさんもそうだが、道行く人が俺を歓迎してくれる。ここなら気持ちよく暮らせそうだ。


「まあ、のんびり過ごすか」


 だけど、これからお世話になるならなんにもしない訳にはいかない。ゴミ拾いでもするか。


 そういえば、ここに住みたいという人は住民書を登録しに区役所に行かないといけないらしい。……区役所あんのか……すごいな法までしっかりしてやがる。


 入ってみたが内装が綺麗だった。法に関してはよく知らないのでこれしか言いようがない。個人情報を新規作成したせいか自由になるまでかなり時間がかかった。


 こうして俺はこの町の住民になった。あまり実感はわかないのだが。適当な集合住宅を家にして生活を始

めることにした。一週間も持たなかったがな……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 全てが狂い出したのは住みだしてから五日ほど経った頃、日銭を稼ぐために仕事を探しにいったとき。


「誰か、私のバッグが!」


 ひったくりが現れた。まあ、これは他の人の協力もあって奪い返したから別にいい。心からバスケやっててよかったとも思った。主にディフェンス。


 だが問題は……


「はいどうぞ」


 持ち主にバッグを返すときに違和感に気づいた。あんなに賑わっていた街から一切の音が消えた。人々が恐ろしいものを見るような目で俺を見ている。


「いやああああ! こっちに来ないで!」

 

 気づいたら思いっきりビンタされてた。うまく何をされたのか理解できない。ただその直後に頬の痛みと恐怖が体を通り抜ける。


「誰か、こいつをなんとかしてくれ!」


「退治しろ! こいつは生かしてはいけない!」


 その叫び声を皮切りに辺りが騒然としだした。警察まで来て、怖かったから逃げ出してしまった。


「待て、止まれ、大人しくしろ!」


 おい待て待て待て!なんでこうなった俺が何をした!ひったくり捕まえただけだぞ!


 とにかく逃げ切らなければ。それが先決だ。にしても、なんでこんなことになってんだよおおおお!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「陛下、重大なご報告が!」


 天理が入った国、アルライ厶の王は通達を受けた。危険人物が逃げ出し、逃走中であると。


 驚き確認してみるが、牢に異常はない。脱獄が起こったわけではないようだ。


「牢が破られた訳では無いようだが、一体何が問題なのだ」


 衛兵は恐る恐る口を開く。


「オッドアイの出現でございます……」

 

「何だと!? 馬鹿な、周期はまだのはずだ!」

 

 なんということだ……と王は頭を抱える。だが、幸い、逃げるだけで攻撃はして来なかったそうだ。凶暴性はない。


 ならば平和的にと連れて行くことができるかもしれない。"力"がないから襲ってこないのだとしても育てるだけだ。 


「衛兵、余がこの目で確かめる。出発の準備をしろ」


 慌てた様子で準備を進める衛兵を見て、本当に現れたのだと思う王。


 それでも彼本人が向かう理由は他の国より優位に立ちたいからである。周りの国が戦争を匂わせていることが大きい。それをうまく使えばとてつもない戦力になるかもしれない。


 なぜなら、それは、オッドアイの人間は例外なく今まで人並み外れた異能を所持していたからである。


 だが、同時に持ち合わせる凶暴性で大破壊を繰り返したため、オッドアイは基本存在そのものが罪であり、忌み嫌われるのだ。


 彼にとってこれは賭けである。人を襲わない、そのたった一つの情報に賭けて、彼はその目でその危険因子を見極める。果たしてそれは自国の希望になり得るか。


 果たしてその危険因子は災禍をもたらすか、戦力の増強となるか。はたまたどちらでもないのか。


 それは、その危険因子の心の有り様次第である。

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