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探偵の初仕事Ⅱ

「しゃーせー」



 あのまま玄関前で話を聞くとなると、おばさんがうるさそうだったので、赤毛の少女を連れて近くのファミレスにやってきた。



「適当になにか頼んでいいぞ?」

「い、いえ、私は結構ですので」

「あ、そう。じゃ、とりあえずドリンクバー2つで」



 注文をすまし、ドリンクバーからそれぞれ飲み物をついで、戻ってくる。



「じゃあ、聞かせてもらおうか。……えっと、朱莉(あかり)だっけ?」

「はい、永嶺朱莉です。まず、東雲さんはどこまでご存じなんですか?」

「いや、ほんともう、何もって感じ。樹斗って子供を探してくれとしか言われてないな」

「そうですか。では、順を追って話しますね。樹斗は私の弟で今は小学3年生です」



 クソガキって年頃だな。



「その弟が昨日から帰ってきてないんですよ」

「迷子ってことか?」

「いえ、恐らく違います。弟の行方が分からなくなったタイミングが、昨日の学校の帰り道なんです。流石に下校中には迷子にならないと思うので」

「それもそうだ。警察には届けたのか?」

「はい。それとDDDの方にも母は連絡したみたいです」

「DDDか一般人が行方不明だけじゃ動かなさそうだけど」

「そうみたいですね。警察も同じ感じでした。調査してみますと言ったきりで一向に連絡がこないんです」



 それでしびれを切らしたあのおばさんが俺に連絡して来たって感じか。



「迷子じゃない可能性を考えると誘拐くらいか? 犯人から取引の電話は来てない感じか?」

「全く音沙汰がないです」



 だろうな。犯人から何かアクションがあれば、警察の対応もう変わっただろう。



「迷子ならいいんです。けど、もし誘拐だったと思うと……」



 そう言う、彼女の肩は震えていた。

 怒っているのか、それとも……。



「迷子でもない、誘拐犯から連絡が来ない。そうなると後は……」

「何か心当たりがあるんですか?」

「確認なんだが、弟の異能力って分かるか?」

「弟の、ですか? えっと、空間操作系だったと思いますよ? 小さな空間に一時的に小物を入れておけるとかその程度ですけど」

「空間操作系ねぇ~」

「え、何か関係があるんですか?」

「能力者狩りを知っているか?」

「もちろん知っていますよ。異能力を持った人間だけを狙った人攫いですよね。でも、その組織なら2年前に紫苑さんが壊滅させたって聞きましたけど」

「そうだ、よく知ってるな」

「当然ですよ! 私、紫苑さんが関わった事件は全部覚えてますから!」

「おおぉ」



 急に声がでかくなったな。

 紫苑のオタクか?



「ARコンタクトの壁紙も紫苑さんにしてるんですよ」



 って言ってめっちゃ見せびらかしてくるけど、別にいいです。見慣れてるんで。

 と言うか今はそこは重要じゃない。



「話を戻すが、その能力者狩りは別に一つの組織ってわけじゃない」

「え、そうなんですか?」

「セントラルの異能力は謎が多いからな、それを研究したい組織や世界はいくらでいるさ。その研究のために必要な被験体を外部委託で集めてるって話だ。こんな金になりそうな話があるんだから、一つの組織を潰したってゴキブリ見たいにホイホイ湧いてくんだよ」

「それじゃあ、樹斗はもう連れ去られちゃったんですか!?」

「さぁな」

「さぁなって……」

「でも、心配はいらないだろう。もし、能力者狩りが犯人ならDDDの管轄だ。彼らも率先して動いてくれるだろう」

「本当ですか!?」

「ああ、多分もう動いてくれてると思うぞ」

「よかったぁ~」



 朱莉はホッと胸をなでおろす。



「DDDが出てくるなら俺に出来ることはそんなになさそうだな。とりあえず連絡先だけ教えてもらえるか? こっちでも何か進展があれば連絡する」

「あ、そうですね。よろしくお願いします」

「それと後、一応聞いておきたいんだけど、弟君の下校ルートを教えてもらっても?」

「いいですけど……何に使うんです?」

「まぁ、一度は頼まれたからな。何もしないってわけにもいかないだろう。だから、ちょっとでも何かのヒントになればいいかなって、弟君がいなくなった下校ルートでも見ておこうかなって」

「そんな、わざわざ……ありがとうございます」



 朱莉から連絡先と樹斗の下校ルートを教えてもらい、その後、俺は少し用事があると言って、彼女を先に帰らせた。



「さてと……」



 俺は仮想PCを起動し、樹斗の下校ルートにある監視カメラを全てハッキングする。



「DDDが動くから大丈夫とは言ったけど、時間があんまりないんだよな」



 誰が異能力者を欲するか。そのほとんどがセントラルとは違う世界のお偉いさん方だ。

 かと言って、攫った人間を素通りさせてくれるほどアウローラの警備はざるではない。

 だが、警備ががばがばになる時がある。

 それは異世界の重鎮たちが元の世界に帰る時だ。

 大物のゲストの場合、必要以上に手荷物検査をすることは戦争の引き金になりかねないので、軽く済ませることが暗黙の了解となっている。

 あくどい連中はそこを狙って能力者を自分たちの世界に持ち込んでいるらしい。

 これはあくまで噂の範囲でしかないから決めつけは出来ないが。

 なんにしても、樹斗がもし能力者狩りにあったのだとしたら、異世界に連れていかれる前に見つけなければならない。

 でなければ、手遅れになる。

 どこの世界に連れていかれたか分かった時にはもう既に実験で体がボロボロになっていることだってある。

 最悪の場合、死ぬことだって……。



「そうならないように、気張らないとな」


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