異変
好きな事と好きな物~?
お酒と寝る事~。
あと、強くて頼りになる人~。
...ところで、隊長さんは独身かな?
え? 気になるってぇ~??
んふふ~!
~ノンスタンスのメンバー、アネックス~
「周囲に敵はいないか? 岩陰から頭を出すんじゃないぞ。あと、荷車はちゃんと岩の裏に隠したか? 」。
ハリガネ達は基地を繋ぐ魔法陣の前にしゃがみ込んで身を伏せていた。
「敵の気配はありません。荷車の方も問題ありません」。
ハリガネがそう答えるとゴリラ隊員は小さく頷いた。
「この通路魔法陣は基地の入り口となっているが、身体に認証魔法陣を描いておかないとこの魔法陣を通り抜ける事ができない。今からパルスさんを呼んでくるから、ちょっと待っててくれ」。
ゴリラ隊員はハリガネ達にそう言い残して魔法陣の中へと消えていき、しばらくして入れ替わりようにパルスが魔法陣の中から姿を現した。
「うわぁ~! あなたがソイ=ソース国の伝説的戦士ミツカ=サウスタウンさ~ん? すっげぇ胸の筋肉と肩の筋肉だな~! まるで岩じゃ~ん! 」。
「はぁ~い! そうで~す! どうもどうもぉ~! 」。
興味津々な様子のパルスに対してミツカは満面の笑みで手を差し出し、お互いその場で握手を交わした。
「いやぁ~! 隊長、スゲーや~! 偵察しながらそんな強い異国の兵士をスカウトして連れて来るなんて~! これで部隊の層がまた厚くなりますね~! 」。
すっかり気分を良くしたパルスはその場ではしゃぎ始めた。
「い、いや...色々と成り行きがあってこういう事になったというか...。それでパルスさん、僕等にも魔法陣を利用できるようにしていただきたいんですが...」。
「あ、そうか~! 隊長達はちょうど外に出てたから認証魔法陣を描いてなかったですね~」。
「はい、そうなんですよ」。
「了解っす! それじゃあ皆さんっ! 今からこの魔法陣を通れるように皆さんの身体に魔法陣を刻印しま~す! 身体に魔法陣が描けるように肌を露出させておいてくださ~い! 」。
「僕はスタンバイばっちりだね~! 」。
ハリガネに出会った時から既に上半身裸のミツカは、得意げな表情でフロントダブルバイセップスというポージングを取りながらそう言った。
「すんばらしい~! しかも身体大きいから描きやすそうだなぁ~! 先にミツカさんの身体に魔法陣を描きましょうか~! じゃあ、背中に描きましょうかね~! 後ろ向いて下さ~い! 」。
「よろしくお願いしまぁ~す! 」。
ミツカはパルスの言われた通りに背を向けた。
そして、パルスは人差し指から青白い光線を放つと、レーザー光線を扱う様にミツカの背中の中心に魔法陣を手早く刻印した。
ミツカの背中に描かれた魔法陣はしばらく青白く輝き続け、やがて光と共に消えていった。
「うん! 背中が大きかったからノリで大きめに描いちゃったけど、ちゃんと刻印が完了したよ~! 」。
「どうもありがと~! 」。
ミツカは深々とパルスに頭を下げた。
「いえいえ~! それじゃあ続けてちゃちゃっとやっちゃいましょう~! 」。
そう言ったパルスはシアターと牽いてきた荷車にも魔法陣を手早く描き終えた。
「あとは隊長さんだけですね~! 」。
「お願いしま~す」。
「それじゃあ、ちょいと肩出してもらっていいですか~? 」。
「は~い」。
ハリガネはそう言いながら着ている服の裾をまくって肩を露出させた。
「ちょっとくすぐったいですけど、肌の上から指で魔法陣描きま~す! 動くと陣形が崩れるんで我慢しててくださいね~! 」。
「了解で~す」。
「じゃあ、描きますよ~! 」。
パルスはそう言うとハリガネの肩に魔法陣を描き始めた。
「...痛っ! 」。
その時、ハリガネは首の後ろを針でチクリと刺された様な痛みを感じ取った。
「...おかしい」。
そんなハリガネの反応を余所にパルスは表情を曇らせ、自身で描いた魔法陣をしばらく見つめながらそう呟いた。




