兵士兼ボディビルダー
好きな事と好きな物...ですか?
読書ですかね...。
あと、薬草と魔法を使ったヒーリングですかね。
私は薬草を用いたヒーリングティーを作るのも好きなんです。
~ノンスタンスのメンバー、キュン~
「...」。
ゴリラ隊員に深々と頭を下げるハリガネ。
「...」。
そして、難しい顔で考え込んでいるゴリラ隊員。
二人の間とその周囲は水を打ったようになり、その場に居合わせているミツカとシアターも神妙な面持ちで二人の様子を見守っていた。
「あの~、私からもお願いします~! 僕もソイ=ソース国や本国と友好関係にある諸国には入国する事ができないし、本当に行く当てが無くて困ってまして~! “アルマンダイト”の討伐でしたら僕も手伝いますし~! さすがに元兵士としてのプライドはありますから、賊団に入る事は母国を裏切るという意味合いになってしまいます~! それだけはしたくないんです~! あの~、迷惑はかけませんから~! お願いします~! 」。
そんな状況を見かねたミツカもハリガネと共に頭を下げ、ゴリラ隊員に入隊を願い出た。
ゴリラ隊員は固く目を閉じたまま、唸り声を上げて困惑した様子を見せていた。
「...理屈はだいたい理解しているつもりだ。ウチの部隊は隊員が圧倒的に少なく、機動力も全く足りてない事は俺も分かっている。だがポテンシャルの高い人間だからといって、面識の全く無い外部の人間をこの環境下で加える事はあまりにも危険過ぎる。そのミツカさんとやら、せめて何か身分を証明する物はないのかね? ドッグタグとか名前の刻まれた武器とか...」。
ゴリラ隊員がそう問いかけると、ミツカは困惑した表情を浮かべた。
「う~ん、証明書どころか自分の所持品もドッグタグも軍事刑務所に没収されたまま追い出されちゃったからな~! しかも、家族から送られてきた手紙も独房に置きっぱなしだし...。この長剣だって賊人から失敬したものだしたなぁ~! う~ん、何も無いなぁ~! 証明できるものがあるとすれば、ソイ=ソース国内のボディビル選手権でタイトルを総なめにしてきたこの身体かなぁ~? 」。
ミツカはそう言うとその場でポージングを取り、上半身の筋肉を隆起させ始めた。
「ん...? ミツカさんはボディビルダーだったの? 」。
「そうだよぉ~! それに、この身体を鍛え上げて最強のボディビルダーになるために兵士になったわけだからね~! 」。
ミツカはモスト・マスキュラーというポージングを取りながらハリガネにそう答えた。
「あ、ゴリラ隊員! もしかしたら、ヤマナカがミツカさんの事を知っているかもしれませんよ? アイツもボディビルダーだし」。
「え? ヤマナカって、ポンズ王国のヤマナカ=マッスル選手~? 」。
ミツカがそう言うとハリガネは大きく何度も頷いた。
「そうですっ! ミツカさんはヤマナカの事知ってるんですか? 」。
「知ってるよ~! 当時のソイ=ソースはポンズ王国と敵対関係だったから会う機会はなかったけど、ヤマナカ選手の事は刑務所にいた時にニュースで知ったよ~! 彼もなかなか良い上腕三頭筋を持っているね~! 去年の大陸間ボディビル選手権の映像も独房内で見てたよ~! あの時に披露してたラットスプレッド・フロントは見事だったなぁ~! 背中がしっかりと鍛えられていて、本大会に向けてしっかりと仕上げてきた感じだったな~! 」。
ミツカは神妙な面持ちで両腕を組み、空を見上げながら当時のシーンを思い出していた。
「ゴリラ隊員! ヤマナカをここへ呼んできてください! ヤマナカに確認させましょう! 」。
ハリガネがそう頼むと、ゴリラ隊員は困惑した表情を浮かべながらも小さく頷いた。
「分かった...今から呼んでくるから、くれぐれもそのミツカさんから目を離すんじゃないぞ? 」。
「はい」。
ハリガネがそう返事をするとゴリラ隊員はミツカの顔を一瞥し、すぐさま岩陰の方へ戻っていった。
(ヤマナカ...。ミツカさんの事...知ってたらいいんだけど...)。
ハリガネはそう思いながら険しい表情を浮かべ、大岩に塞がれた基地の入口を見つめていた。




