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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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直談判


好きな事と好きな物?


食べる事ね~!


好きな食べ物?


脂たっぷりのお肉とかお魚が大好きね~!


だから、パルスさんの料理ってとっても美味しくて大好きなの~!




~ノンスタンスのメンバー、ワンムーン~




「ミツカさんからはソイ=ソース帝国時代の君主であった皇帝からの出征命令を拒み、十年前に投獄されて昨日出獄されたばかりと御聞きしました。詳しい内容はまだ聞いてはおりませんが、このミツカさんも我々と同じく国家反逆者として国家を追放された身であるとおっしゃられてました」。


「どうもぉ~! ソイ=ソース共和国軍の工兵部隊のミツカ=サウスタウンで~す! 防衛部隊も兼任しておりましたぁ~! よろしくぅ~! 」。


ハリガネに紹介されたミツカは満面の笑みでゴリラ隊員に手を差し出し握手を求めたが、そのゴリラ隊員は険しい表情を浮かべたまま両腕を組んでいた。


「ミツカ=サウスタウン...戦中期では幾多の外敵を退けてきたというソイ=ソース国が誇る強戦士...。そして、工兵としての能力を存分に発揮し、国内における施設や整備の向上に大きく貢献してきたソイ=ソース国の偉大なる功労者でもある...。しかし、信じられん...この男は本当にミツカ工兵なのか? 戦中期に投獄された事は後々知った事だが、ミツカ工兵に関しての情報は当時のソイ=ソース国の資料で確認できた程度でほとんど伝説の兵士扱いになってる人物だからな」。


「...」。


ハリガネは神妙な面持ちでゴリラ隊員の話を黙って聞いていた。


「だからこそ、そんなソイ=ソース国の英雄が目の前にいるという状況が俺には信じられんのだ。国家反逆者として扱われてきたミツカ工兵は身内との面会も謝絶されていて、収監されている刑務所から近況はおろか、ミツカ工兵に関する情報がほとんど外部へ流れてきていないんだぞ? 事実、ソイ=ソース国内では死亡説も流れているくらいだ。それに、俺達自身も情報社会から遮断された危険な山脈付近で生活しているわけだから、諸国の情報収集もまともにできない状況下にある。つまり、十年間も牢獄にいた伝説的戦士がほぼ同じ時期に国を追われ、同じ山脈付近で国家反逆者という同じ立場で出会うなんていう好都合過ぎる展開があるはずは無いと言っているんだ! ...お前、この男に騙されたんじゃないか? 」。


警戒した様子でミツカを睨んだままそう問いかけるゴリラ隊員に対し、ハリガネは首を横に振って口を開いた。


「いや、カッテージチーズ高原で偵察していた時、僕等はソイ=ソース共和国軍の部隊やミツカさんと鉢合わせしたんです」。


「む...? ソイ=ソース国の部隊だと...? 」。


ゴリラ隊員は眉をひそめてハリガネにそう聞き返した。


「はい、ミツカさんや部隊と出会ったのもホント偶然だったんです。それにミツカさん事をその場で紹介してくれたのはソイ=ソース共和国軍の隊長だったんですよ」。


ゴリラ隊員は神妙な面持ちでそう答えたハリガネに視線を向けた。


「何...? 隊長が...? 」。


「はい、隊長達もミツカさんを勇士と呼称されてまして、接していた際の態度や様子からも大変リスペクトを示されていた感じでした。あと、基地に戻る際に四頭の魔獣と遭遇しまして、ミツカさんはこの通り防具を身に着けず装備していた長剣で四頭まとめて討伐しました。しかも、乱れ突きのみで」。


ハリガネがそう言うと、ゴリラ隊員は眉間にしわを寄せつつ再び険しい表情を浮かべていた。


「う~む、出身国の隊長がそういう対応をしていたのであれば信用はできるかもしれんが...。俺はその戦闘を見たわけじゃないから何とも言えん。いや...。別に、同じ長剣使いのお前の目を疑っているわけではないんだが...」。


「隊長、僕は太刀よりも長くて幅広い長剣を両手で構えます」。


ハリガネがそう言うと、ゴリラ隊員は気分を害した様子で顔をしかめた。


「おいッ!! 長剣を両手で持つのは当たり前だろうがッ!! 俺を馬鹿にしているのかッ!? 」。


「ミツカさんは長剣を片手で構えます。背負っている長剣を二本とも鞘から抜き、双剣を扱う様に軽快に剣を振ってました」。


ハリガネは荷車に積んである討伐した魔獣達を指差しながらそう答えると、ゴリラ隊員は驚愕した表情を浮かべてミツカが背負っている二本の長剣を見つめた。


「何っ...!? 長剣の二刀流だとぉっ...!? 」。


「信じられないでしょう? 間近で見てた僕だって未だに信じられないですよ。てか、信じたくないですよ。そりゃあ、同じ長剣使いだから余計へこみましたよ。常識的に考えて長剣の二刀流なんてあり得ないっすもん」。


ミツカの戦闘をその場で思い出していたハリガネはすっかりセンチメンタルな気持ちになってしまい、表情を曇らせたまま小さく溜息をついた。


「む...。その打ちのめされたような顔を見ると、相当の手練れだったみたいだな」。


「いやいやぁ~! 十年間も刑務所にいたから大分動きが鈍ってましたよぉ~! 刑務所内ではずっとトレーニングしてきたつもりだったけど、実戦から遠ざかっていたブランクはどうにもならなかったみたいだなぁ~! あっはっはっは~! 」。


神妙な面持ちの二人に対し、ミツカは能天気な様子で虚空に向かって高笑いをしていた。


「こういう境遇にいる以上、プライドなんて言っている場合じゃありません。ミツカさんは昨日追放されたばかりです。賊人や他の人間からの声は...かかって無い...ですよね...? 」。


ハリガネはミツカの顔色をうかがいつつ、そう問いかけた。


「うん? ああ~! 賊人には宿屋がないかを聞いたくらいで、それ以外賊団とかに声をかけられたりとかは特に無かったよ~! 」。


「宿屋...? 一体、どういう意味だ? 」。


ゴリラ隊員がそう問いかけながら怪訝な表情を浮かべた。


「ああ~、実はですね。偵察してた僕とシアターさんがソイ=ソース国軍と鉢合わせした時に、ミツカさんは山脈から高原の方まで下りてきて...」。


ハリガネはカッテージチーズ高原でミツカと出会ってからここまで行動を共にしている経緯を、ゴリラ隊員にその場で説明した。


「つまり、自分で撃退した賊人をどうしようか途方に暮れていたところ、お前や部隊と遭遇したと...。それで、そのままソイ=ソース国から放り出されてしまったから路頭に迷っていたという事か...」。


ゴリラ隊員は納得したように小さく頷きながらそう言った。


「ゴリラ隊員! ミツカさんを部隊に迎え入れましょう! 彼は反社の賊団連中みたいな野蛮人とは違います! 僕等と同じ諸国に仕えてきた元兵士です! しかも、同じく母国に尽くしてきたのに投獄されて最終的には追放された身分ですよ!? ミツカさんには“アルマンダイト”討伐の事や僕等の境遇についても少し話しました! この部隊には彼の力が必要なんです! お願いします! ミツカさんの加入を認めてください! この通りです! 」。


ハリガネは語気を強めてそうお願いすると被っていたフードを外して素顔を晒し、ゴリラ隊員に深々と頭を下げた。


「...」。


ゴリラ隊員は険しい表情で瞳を固く閉じ、両腕を組んだままその場で長考した。



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