賊人の長剣
好きな事と好きな物ですか~い??
酒と祭りに宴会とか賑やかな所ですね~!
そこで俺の媚売りと諂いが発揮されるわけなんですがね~!
だから、好きな事は幇間なんですわぁ~!
まぁ、幇間は簡単に言えば太鼓持ちと同じ意味になるんですがね~!
そこで色んな偉い人をヨイショしてね~!
世を上手く楽しく渡るわけなんですわぁ~!
これも一つの才能でっせ~!
~ノンスタンスのメンバー、ロー~
「それで、僕等はパルメザンチーズ山脈の手前にあるチェダーチーズ山の方に基地を構えてまして~」。
ハリガネとシアター、そして一人で荷車を牽いているミツカは基地へと続く道中を歩いていた。
「チェダーチーズ山に? パルメザンチーズ山脈の方じゃないんだ~」。
「いや...山脈内には複数の賊団が拠点を構えているし、“アルマンダイト”を含めた大型魔獣の巣窟になってて大変危険なので山脈外のチェダチーズ山中に潜伏しつつ山脈の動向をうかがってるというのが我々部隊の現状です」。
「そうかぁ~! いやぁ~、僕は当日に追放処分を受けたからね~。何も準備してない上に手ぶらで追い出されちゃったから、パルメザンチーズ山脈の事情は全然知らないんだよね~! はっはっは~! 」。
「手ぶら...? え? でも、その背負ってる剣は...? 」。
ハリガネはミツカが背中に背負っている二本の長剣を指差した。
「ああ~! これ? 」。
「はい」。
「これはさっきの賊人達から失敬した剣でね~! いや、一応は断りを入れておいたんだよ? いただきますって~。でも、眠っちゃってたからね~」。
「ああ~、さっき高原で背負っていた賊団の連中の物なんですね? (眠っちゃってたじゃなくて、眠らせたんだろ? )」。
「そうそう! それで、ハリガネ君達の基地はどの辺なの~?」。
「ここを下っていけば少し広い場所に出ます。そこにある洞穴が我々部隊の基地になっているんです」。
「へぇ~! 洞穴が基地なんだね~! 」。
「はい、ちょうど奥の方に大岩が立ち塞がってますけど、これは基地の入口を塞いでおいて外敵からの侵入を防止しているんです。あの岩には魔法を操る隊員によって魔法強化がされていまして、物理及び攻撃魔法で簡単に破壊されないように防御強化されています。身体に魔法陣の刻印を施す事によって岩を通り抜ける事ができます」。
「へぇ~! 便利だね~! しかし、地面が掘り起こされていたり木々は倒れてて炎上した痕跡も所々で確認できるし、この辺の周囲は随分と荒れちゃってるみたいなんだけど...? 」。
ミツカは怪訝な表情を浮かべながら周囲を見渡し、ハリガネ達にそう問いかけた。
「昨日、エミールという山脈に拠点を置いた賊団のメンバーに荒らされましてね~」。
「え? それじゃあ、そのエミールっていう賊団に基地の場所がバレたって事? 」。
「いや、相手は遭遇した複数の大型魔獣との戦闘に追われてて、幸い我々の基地が賊団側にバレる事はありませんでした」。
「そうだったんだぁ~! それは大変だったね~! 」。
「おいッ!! 」
基地付近でハリガネとミツカが談笑していた時、その基地から少し離れている岩陰からゴリラ隊員が姿を現した。
「あれ? ゴリラ隊員? 何でそんな所に隠れていたんですか? 」。
足早に向かってくるゴリラ隊員にハリガネがそう問いかけた。
「キッチンはやっぱり換気設備があった方が良いって、パルスさんが基地から離れたあの岩陰に魔法陣を描き直したんだ。エミールの侵入を防ぐために一時的に通路式魔法陣を消去していたからな。あと、入口からは通り抜けられないようになった。昨日はそのエミールが周囲を襲撃した件があったし、入口を塞いである岩を通り抜けた様子を外敵に見られたら、侵入は防げても居場所がバレるから不味いという事だ。これからはあの大岩の裏にある魔法陣が基地へ入る唯一の入口だ。それと、新たに基地の入口となった魔法陣はパルスさんが魔力の気配と配置場所も隠してくれた。勿論、その魔法陣を配置した場所にも監視魔法陣が配置してある。ただ、話によれば足で踏んだ時は一時的に魔法陣が光るらしいから、使用する際には周囲の確認を怠るなよ? 」。
「了解しました」。
「まぁ、色々と成り行きがあったが、これにより外での見張りは不要となった。これで隊員が外に姿を晒すリスクが大分減ったぞ。怪我の功名ってやつだな」。
「まぁ、結果オーライですね~」。
「それはともかくだッ!! この上半身裸で黒帯を締めた武道家っぽい男は一体何者だッ!! まさかお前ッ!! 諸国の傭兵をスカウトしてきたのかッ!? 」。
ゴリラ隊員はハリガネにそう言いながら険しい表情でミツカを睨め付けた。
「この方はミツカ=サウスタウンというソイ=ソース共和国軍の元工兵です。出身はもちろんソイ=ソース共和国です」。
ハリガネがそう答えると、ゴリラ隊員は両目を見開いてやや驚いた表情を浮かべた。
「ソイ=ソース国のミツカ...サウスタウンだと...? 」。
少し動揺した様子を見せるゴリラ隊員は、眉間にしわを寄せたままミツカをじっと見つめていた。
「はぁ~い! ミツカで~す! 」。
ミツカは特に緊張している素振りも見せず、爽やかな笑顔をゴリラ隊員に向けながら白い歯を輝かせていた。




