家族
好きな事と好きな物...ですか?
そうですね~、食べる事ですかね~。
あと、寝る事...。
あっ! そうそう!
あと、農家出身なんで野菜や植物を育てる事ですかね~。
~ノンスタンスのメンバー、オシイチ~
「当時のソイ=ソース国は共和国じゃなくて帝国だったのは知ってる? 」。
「はい、確か九年前にソイ=ソース国内で革命が起こり、当時の君主であったハセガワ皇帝が失脚して帝国から共和国へ移行したんですよね? 」。
ハリガネがそう答えると、ミツカは荷車を牽きながら小さく頷いた。
「そうそう、そのハセガワ皇帝が実権を握っていた時...。つまり、ポンズ王国や諸国と争っている戦中期真っ只中の時代さ。当時、僕は防衛部隊としてソイ=ソース国内で待機していたんだ。そんなある日、僕はハセガワ皇帝から前線部隊と共に出征するよう直々に命令が下ったんだ。それで、自分は皇帝の命令に従わずにそのまま国家に背いた反逆者として、軍事刑務所に十年間収監されていたってわけさ」。
「じゅ、十年間もっ...! しかし、何でまた当時の皇帝の命令を拒んだりしたんですか? 」。
ハリガネは顔を強張らせ、神妙な面持ちで語っていたミツカにそう問いかけた。。
「当時のソイ=ソース国はポンズ王国のような魔術部隊も充実してなくて、諸国と比べても戦力が劣っていた。だからこそ、皇帝も僕の潜在能力を期待して前線に出して戦況を変えたかったんだと思うけど...。もはや、無駄な血を流すだけの無意味な戦いであると考えていたんだ。このまま前線に出てもソイ=ソース国軍自体の戦力を弱体化させる一方だと、僕は皇帝に直接訴えかけたが...その声は通らなかった」。
「それで、昨日まで軍事刑務所で過ごすハメになったと...」。
「まぁ、そういう事になるね~。でも、昨日いきなり釈放するっていう大統領からの通知が届いてね~。その時は本当に驚いちゃったよ~! ずっと檻の中にいたのに、いきなり娑婆に出ろって言われてもね~。しかも、母国から出て行ってくれって告げられたもんだから、行く当ても無いしね~」。
「確かに、それは困っちゃいますよね~。ところで、ミツカさんご家族は...? 」。
「お父さんは僕が刑務所にいる時に病気で亡くなって、母国のソイ=ソース国にはお母さんと妹がいるんだけど...。もう僕は文通も許されない立場となってしまったわけだからね...。刑務所にいる時は文通ができたけど、国外へ追放されたからそれもできない。だから、今も元気にしているのか心配だよ...」。
ミツカはハリガネにそう答えると、少し寂しげな表情を浮かべた。
(家族...か、家族って何なんだろうな...? )。
今となっては両親が生きているかも分からず、また彼等によって愛が育まれずに生きてきたハリガネには家族と離れ離れとなり、その境遇に悲しむミツカの心情が理解できずにいた。




