右手に長剣、左手に長剣
好きな事と好きな物...?
...。
あんま言いたくないっすね...。
~ノンスタンスのメンバー、アゲハラ~
基地に戻る途中、複数の魔獣達がハリガネ達を目掛けて襲い掛かってきた。
キィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!
ギャァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!
クエェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!
スギャァァァァアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオォォォォウッッッ!!!
そして、一人の屈強な男が両手に握った長剣を高々と構え、向かってくる魔獣達の前に立ちはだかった。
「ぬおぉぉぉぉりゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああッッッ!!! 」。
ズバァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア...ッッ!!
その男は鋭いスイングの縦斬りで叩き落とす様に、力ずくで一頭の二足歩行型魔獣を転倒させると...。
キェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!
ゴォォォォオオオオオオオオオオ...ッッ!!
火炎玉や毒玉を放つ魔獣達の攻撃に、その男は即座に反応して高々と跳躍しながら剣先をその魔獣達に向けながら飛び掛かった。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃぁぁぁぁああああああああああああああああッッッ!!! 」。
空中を舞う男は叫び声を上げながら真下にいる魔獣達目掛けて...。
ズババババババババババババババババババババババババババババッッッ...!!
両手に握った剣から高速乱れ突きを放った。
クエェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!
乱れ突きの餌食となった地上の魔獣達はなすすべもなく、悲痛な叫び声を上げながら地面に倒れ込み動かなくなった。
「...」。
その男の戦闘を荷車と共に後方で見守っていたハリガネとシアターは開いた口が塞がらない様子であった。
(一人で一気に四頭狩っちゃったよ...あの人...。てか、一応は剣を抜いてスタンバってたんだけど...強くね? ソイ=ソース国が誇る伝説の戦士とは聞いてたけど、ミツカ=サウスタウン...強くね? 俺もハンター用の長剣使ってるけど、あの長剣って長さや幅も俺の使ってる物とそんなに変わらないんだよな...。でも、長剣って両手で掴んで構える剣であって、あんな双剣みたいに軽々とスイングするもんじゃねぇって...。どんだけパワー馬鹿なんだよ...マジヤベェな)。
「あの隊長...本当に大丈夫なんでしょうか? ミツカさんと一緒に基地に戻って...。ミツカさんは凄い御方みたいですけど、信用しちゃって大丈夫ですかね...? 」。
ハリガネがミツカのフィジカルにドン引きしていた時、近くにいたシアターがそう問いかけてきた。
「う~ん...。でも、行く当てが無いって言ってたから、このまま山脈を居座る気がするし...。だとしたら、あの人は絶対に敵に回したくないですし、賊団の下へ行かれて敵対関係になるよりはこっちの部隊へ招き入れた方が断然に良いと思いますね~。どういった経緯でソイ=ソース国を追放されたかは分からないですが、同じ元兵士ですし彼が部隊に入ってくれると戦力が段違いで上がりますしね~」。
「でも、異国の方ですし、ゴリラさんが特に警戒しそうな気がするんですが...」。
「何とか僕が説得してみますよ。同じ国家を追放された元兵士という境遇ですし、分かり合えるはずです。それに、ゴリラ隊員もその道の人間なんでミツカ=サウスタウンの名前は知らないはずがないと思いますし」。
「は、はぁ...。でも、ミツカさんが既に賊団と関係を持っているという事は...? 」。
「う~ん、可能性は低いんじゃないですかね~? 昨日追放されたばかりって聞きましたし、賊団に絡まれたくらいで関係性はまだ無いんじゃないかな~。てか、もし敵側になったら部隊の総力を挙げても勝てなさそうだし。ただでさえ、こっちは数少ないのに...」。
「そ、そうですね...」。
後方からハリガネとシアターがそんなやり取りをしている時...。
「お待たせ~!! 」。
涼しい表情をしたミツカが討伐した四頭の魔獣達を背負ってハリガネ達の下へ戻ってきた。
「いやぁ~! ミツカさんお見事っ! 私達が追いついた時には既に魔獣達を一網打尽っ! 一瞬にして狩り終えられてしまうとはっ! やはり歴戦の勇士はモノが違いますなぁ~! 」。
ハリガネは構えていた長剣を鞘に戻し入れ、両手を揉み合わせながらミツカの御機嫌取りを始めた。
「いやいやぁ~! 小振りの魔獣さん達だったからねぇ~! 突きだけで簡単に仕留められたよぉ~! あ、これいる~? 」。
「あ、ありがとうございますっ! 喜んでいただきますっ! 」。
ハリガネはそう答え、ミツカと共に仕留めた魔獣達を荷車に積み込み始めた。
「しかし凄いですね~! 僕は長剣を両手で握らないと振れないのに、ミツカさんは長剣を片手剣みたいに軽々しく振れるんですね~! 」。
ハリガネは荷車を牽き始めたミツカにそう話しかけた。
「ん~? ああ~、僕はもともと工兵でね~。建築物を建てるときはこの長剣よりも重くて、こぉ~んなにどデカい金槌を振り上げてたからね~! 」。
ミツカは両手をいっぱいに広げて金槌の大きさを表現しながらそう答えた。
「そうなんですか~! そういえば、さっきソイ=ソース共和国軍の隊長から聞きましたが、ミツカさんはソイ=ソース国内を流れる河川の開拓工事も当時担当されていたみたいですね~」。
「うん! あれはちょっと大変だったな~! 斧で木々を伐採して地面を整備した後、水路を作るための掘削作業しててね~! 」。
「凄いなぁ~! でも、国家に尽くしていたミツカさんがどうしてソイ=ソース国を追放されてしまったんですか? 」。
ハリガネがそう問いかけると、ミツカは荷車を牽きながら神妙な面持ちで青空を見上げた。
「僕が当時の皇帝にね、歯向かったからだよ」。
「...」。
ハリガネも神妙な面持ちで黙ったままミツカの横顔を見つめていた。




