誇れる勇士達
あっはっはっは~! 初登場だね~!
僕は施設部隊に配属されていた元兵士だったんだ~。
施設部隊では話であった通り、お城を建てたりダム建てたり川の開拓したり国境壁建てたりとかしたね~。
ただ、お城の建設工事では結構兵士達が過労で亡くなっちゃってね~。
気付いたら僕一人しかいなくて、結局一人で建てたっていうね~。
~ソイ=ソース共和国軍施設部隊、ミツカ=サウスタウン工兵~
「隊長ぉ~! ご無沙汰してま~す! 御元気でしたかぁ~? 」。
バタバタバタ...ッッ!!
ミツカと呼ばれる屈強な男は背負っていた男達を地面に降ろし、ハリガネ達と向かい合った。
(ニコニコしてる表情とは裏腹に凄い威圧感だ...。これが、猛者が放つ独特のオーラなのかっ...!? )。
ハリガネの隣に立つシアターはミツカの放つ威圧感に圧倒的されつつ、固唾を呑んでその様子をうかがっていた。
「はッ!! ミツカ=サウスタウン勇士ッ!! 私共は相も変わらず、のうのうと軍内に居座っている身分でありますッ!! 勇士も御元気そうで何よりですッ!! 」。
直立不動の姿勢を取るソイ=ソース共和国軍隊長や隊員達は、敬礼してミツカに敬意を示した。
「う~ん、僕は昨日ソイ=ソース国を出たばっかりだから、まだそんなに実感が湧かないんだけどね~。でも、みんな元気みたいで良かったよ~」。
「はッ!! 恐縮ですッ!! 」。
「...ところで、この子は? 見かけない子だね~! 新兵さん? 」。
ミツカはハリガネの方に視線を移し、ソイ=ソース共和国軍隊長にそう問いかけた。
「いえッ!! 勇士と同じく追放処分を受けたポンズ王国の元兵士、ハリガネ=ポップですッ!! この高原で賊人と遭遇したらしく、彼からその旨の通報を受けて今に至りますッ!! 」。
「あ~! 君が起こした事件に関しては刑務所で知ったよ~! 君が恐戦士ハリボテ=ポップの息子さんのハリガネ=ポップだね~? よろしく~! この度はご愁傷様で~す! 」。
ミツカは微笑みかけながらハリガネに握手を求めた。
「は、はぁ...何というか...。お互い大変な境遇になってしまったみたいで...」。
ハリガネは苦笑いを浮かべながらもそれに応じ、ミツカとがっちりと握手を交わした。
(...っ! 身体も厳ついけど、両手も大きくてゴツイなぁ...)。
ハリガネは自身の両手を包み込むミツカの大きな両手をまじまじと眺めていた。
「君も賊団の連中に絡まれてたのか~い? 」。
ミツカはそう問いかけながらハリガネが眠らせた男達を見つめていた。
「ええ、そんな感じです」。
「そうかぁ~、僕もなんだよ~。ケチャップ共和国付近のところを彷徨ってたら、賊団の人間とばったり出会っちゃってね~。あちら側は話に応じる感じでもなかったから、やむを得ず眠ってもらったんだけどね~。でも、部隊が丁度ここにいたから助かったよ~。この人達はケチャップ国方面のヒラメキーナとか言ってたかな~? 」。
ミツカは気絶している傷だらけの男達が身に着けていた防具や兵器を兵士達によって剝ぎ取られ、縄で身体をがんじがらめに拘束されている様子を眺めながらそう言った。
「先程、ミツカ兵士の武勇伝は隊長からも少し御聞きしましたが、ソイ=ソース共和国を身体一つで護り抜いた素晴らしい戦士であると...」。
ハリガネがそう言うと、ミツカは苦笑交じりに自身の顔の前で手を振った。
「いやいやぁ~! 僕はそんな褒められた人間じゃないよぉ~! 今となっては、僕はソイ=ソース国に追い出された放浪者だからね~! 山脈には宿が無くてさぁ~~! さっきも、この賊団の人達に宿屋を聞こうと思ったんだけど聞く耳持ってくれなくてね~! ホント困っちゃうよ~! これからどうやって生きればいいんだってね~! あっはっは~! 」。
「は、はぁ...(出身は違えど国家から追い出されたのに、何っつー爽やかな笑顔してんだ...。しかも、山脈に宿なんかねぇよ。...賊団のアジトならあるけどさ)」。
ハリガネはミツカに相槌を打ちつつ、苦笑いを浮かべていた。
「...」。
そんな楽観的な様子で高笑いをするミツカに対し、表情を曇らせながら話を黙って聞いていたソイ=ソース共和国軍隊長の下に一人の隊員が歩み寄ってきた。
「賊人達の身柄拘束が完了致しましたッ! 」。
隊員がそう告げると、ソイ=ソース共和国軍隊長は厳かな表情を浮かべて小さく頷いた。
「本部に賊人移送の応援を要請しろッ! 」。
「了解ッ! 」。
隊員はそう返答するとハリガネ達から離れていき、ソイ=ソース共和国軍隊長はハリガネとミツカの方へ向き直った。
「今、ソイ=ソース国軍の本部へ賊人移送の応援要請を致しました。このカッテージチーズ高原へ間もなく応援部隊が到着します。二人共立場上は反逆者ですので、直ちにお引き取り願います」。
ソイ=ソース共和国軍隊長がそう厳かな口調でそう言い渡すと、ハリガネとミツカはお互い顔を見合わせて頷いた。
「そうだったね~、今となってはソイ=ソース国に接触しちゃいけない立場だった。すまなかったね~。ハリガネ君、僕等は山脈の方へ戻ってからお話しましょうか~! 」。
(危険だらけの山脈へ戻っていくのをカフェでお茶しませんか感覚で言ってんじゃねぇよっ! いちいち調子狂うなぁ~! この変なボディビルダーはっ! しかも、防具も着けずに上半身裸で、下はズダボロの道着とボロボロの黒帯だけ結んである装備だから余計怖いわっ! それに、メッチャ良い笑顔してるやんっ!? )。
親指で山脈を差しながらウィンクして微笑みかけるミツカのテンションに、ハリガネは追いつけずにただただ黙っている事しかできなかった。
「隊長、そろそろ...」。
「おっと...! そうだった! 」。
ミツカのペースに圧倒されていたハリガネは、シアターにそう促されると即座に我に返った。
「それじゃあ、隊長! 僕等はこの辺で...あっ! そうそうっ! あのゴクアクボンドの賊人達は買春の取引をするために、今日ソイ=ソース国の人間と落ち合う予定になってるみたいですよ~! 」。
ハリガネがそう言いながら爆睡しているゴクアクボンドの賊人達を指差すと、ソイ=ソース共和国軍隊長は驚いた様子で目を大きく見開いた。
「それは本当かっ!? 分かった! それも本部に伝えとく! 情報提供感謝するぞ! 」。
「いえいえ...。さて、シアターさん、基地へ戻りましょうか」。
「あ、はい」。
ハリガネとシアターは部隊から背を向け、荷車の方へ足を運ばせようとした時...。
「ハリガネ=ポップッッ!! 」。
「え...っっ!? 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長に呼び止められ、ハリガネが振り向くと複数の銃と弾倉が胸元に飛んできた。
「おわっ!! 危なっっ...!! 」。
ハリガネは飛んできた武器を慌てて抱きかかえた。
「賊人から剥ぎ取ったもんだ。ちょいと抜き取っても本部にはバレんだろう」。
「隊長...」。
ハリガネは神妙な面持ちでソイ=ソース共和国軍隊長を見つめた。
「早く去れッ!! “アルマンダイト”を狩るまで戻ってくんじゃねえぞッ!? 俺達はお前等が討伐する方に賭けてんだからなッ!! 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長がハリガネにそう言い放った時...。
「それじゃあ、隊長さんもみんなも御元気で~!! あっはっはっは~!! 」。
ミツカは荷車のハンドルを握ると、荷車と共に山脈の方へ猛スピードで走り去っていった。
「あっ!! ちょっとっ!! 他人の荷車っ!! シアターさん急いで追いかけましょう!! 」。
「は、はいっ!! 」。
ハリガネが部隊から再び背を向け、荷車と共にその場から離れていったミツカを追いかけようとした時...。
「ハリガネ=ポップッッ!! 」。
再びソイ=ソース共和国軍隊長がハリガネを呼び止めた。
「は、はいっ...! 」。
ハリガネは足を止め、部隊の方へ再び向き直った。
「ゴリラ兵士にも伝えてくれ。そして、お前にも言っておく」。
「はい」。
ハリガネは神妙な面持ちでそう答えると、ソイ=ソース共和国軍隊長は厳かな表情で話を切り出した。
「今回に限らず山脈内で活動する以上、賊団と交わる機会があるであろう...。だが、戦士としての魂と誇りは決して忘れるなよ」。
「...」。
ソイ=ソース共和国軍隊長の言葉を聞いたハリガネは引き締まった表情で黙ったままソイ=ソース共和国軍隊長や部隊に向けて深々と一礼すると、再び皆から背を向けてシアターと共にミツカと荷車を追って武器を抱きかかえながら走り去っていった。
「御武運をッ!! 誇れる勇士達ッ!! “アルマンダイト”ッ!! 何するものぞッ!! 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長がハリガネ達の背中に向けて敬礼しながらそう叫ぶと...。
「何するものぞッ!! 」。
ソイ=ソース共和国軍の隊員もハリガネ達に向けて敬礼しながらエールを送った。




