工兵、ミツカ=サウスタウン
好きな物や好きな事でっか...?
う~ん、そうですね~。
魔導書を読む事と、魔法陣の研究ですかね~?
ワイ、こういう魔術研究って好きですねん。
もうちょいと研究できる時間があれば、ええんでしょうけど...。
今は立場的に...ちょっとね...。
~ノンスタンス副頭領、白装束のホワイト~
「隊長さぁ~ん!! どうもぉ~!! お久しぶりで~す!! 」。
その屈強な男はたった一人で積み重ねた十数人の男達を背負い、苦悶した様子も見せずに微笑みながら隊長に声をかけていた。
(パッと見たところ年齢は隊長やゴリラ隊員よりちょっと下かな...? 上半身裸で下は白いボロボロの道着に、ズダボロで色あせた黒帯を絞めてて防具らしい防具は着けていない...と。しかし、岩みたいにゴツイ身体してんな~。ヤマナカより体格大きいし)。
ハリガネは男達を背負いながら近づいてくる屈強な男を観察していた。
七三分けにしたオールバックの茶髪に褐色な肌、そして筋骨隆々なその肉体はまさにブロンズ像の傑作とも思えた。
「直れッ!! 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長が号令をかけると、ソイ=ソース共和国軍の部隊は接近する屈強な男に向けていたライフルの銃口を下げた。
「隊長、あの男は...? 」。
ハリガネがソイ=ソース共和国軍隊長にそう問いかけた。
「...お前は、ミツカ=サウスタウンという我がソイ=ソース共和国軍に属していた男を知っているか? 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長はハリガネにそう聞き返した。
「ミツカ=サウスタウン...。確か、ほとんど一人でソイ=ソース国周辺の国境壁を完成させたという伝説の工兵ですよね? 」。
ハリガネがそう答えると、ソイ=ソース共和国軍隊長は小さく頷いた。
「ああ、工兵として国境壁だけでなく、様々な障壁や防壁をたった一人で...しかも物理のみで築き上げた。それだけでなく、パルメザンチーズ山脈に近い我が国ソイ=ソース共和国は常に魔獣や賊団等の反社会的勢力組織団体から襲撃されていたわけだが、工兵ミツカはあの屈強な肉体のみで立ち向かっては奴等を返り討ちにしてきた。工兵という身分ではあったが本国の防衛部隊も兼任し、彼もまた武道や剣術を掌る戦士として本国を護り続けてきた偉大な兵士であった」。
「あ~、ミツカ兵士に関しては色々な逸話を聞いてますね~。複数の大型魔獣を魔法道具や罠を使わずたった一人で討伐したとか、ソイ=ソース国がまだ帝国期だった時に当時の皇帝の新しい城をほぼ一人で完成させたとか...。戦中期、サトウ帝国が侵攻してきた部隊をほとんど一人で壊滅させたとか、その凄まじい怪力で河川開拓をほぼ一人で行ったとか...」。
「その通りだ。ミツカ=サウスタウンという男は我が国ソイ=ソース共和国が何度も危機に晒されても、あの強靭な肉体と鋼鉄の様な精神でその勢力と逃げずに立ち向って我が国を護り続けてきた。我々ソイ=ソース国共和国軍の兵士にとって、まさに戦士の鏡だ。そして、ソイ=ソース共和国の最高傑作として、我々ソイ=ソース軍の間では語り継がれている偉大な戦士だ」。
「そんな人が何故に山脈から現れたんですか? 隊長達と違うルートを巡回してきたんですか? 」。
「いや、そうじゃない。彼は...お前達と同じだよ」。
「...え? 」。
怪訝な表情を浮かべるハリガネは眉をひそめてそう声を上げると、神妙な表情を浮かべるソイ=ソース共和国軍隊長はハリガネに視線を合わしてこう付け加えた。
「今、ミツカ=サウスタウンは本国を追放された身なんだ」。
「えぇっ...!? ソイ=ソース共和国の最高傑作なのにぃっ...!?」
男達を背負ったまま依然として微笑んでいるミツカという男に、ハリガネは懐疑的な視線を送っていた。




