会いたい人
好きな物や好きな事ですか~?
裁縫とか、お掃除とかパルス様の御世話ですかね~。
ちょっとした小物を作るのも好きですね~。
ご飯を食べるのも好きですね~。
~討伐部隊“勇者”シアター=アローン隊員~
ピィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!
ハリガネは警笛を勢い良く吹くと、けたたましい音が辺りに鳴り響いた。
ピィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!
ピィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!
ハリガネが間隔を空けて何回か警笛を繰り返し鳴らしていると、パルメザンチーズ山脈の方面から鎧と兜を装着している兵士らしき集団がハリガネ達に銃口を向けながら近づいてきた。
「毛皮を羽織っている貴様等ッ!! 貴様等は山脈をホームにしているハンターだなッ!? 動くなッ!! 手を挙げろッ!! 」。
厳かな表情の兵士らしき男性がそう叫びながら両手を挙げているハリガネのフードを外すと、一変して驚愕した表情を浮かべた。
「...ッッ!? お前はポンズ王国のッ!? 」。
「どうもぉ~! ちょっとソイ=ソース国軍の皆さんに用事がありまして警笛鳴らさしてもらいました~! あ、隊長もどうもぉ~! パルメザンチーズ山脈周辺の巡回お疲れ様で~す! 」。
ハリガネの方へ歩み寄ってくるソイ=ソース共和国軍隊長は困惑した表情を浮かべていた。
「おいお〜い! 困るぞ~? そんなみだりに警笛を鳴らされたら~! 本国にいる奴等から不審に思われるからよ~! ただでさえ、お前が本国近くの高原にいるって事だけでも大問題なのによ~! 」。
(隊長が会いたい人って、ソイ=ソース共和国軍の人達...? )。
シアターは向かい合っているハリガネとソイ=ソース共和国軍隊長を交互に見ながらそう思っていた。
「いやぁ~! すいませ~ん! 緊急だったもんで~! ちょっと、ここいらで薬草採集してたら山脈にいる賊団ゴクアクボンドの団員に遭遇しまして~! 」。
ハリガネはソイ=ソース共和国軍隊長にそう説明し、地面で爆睡中の男達三人を指差した。
「ゴクアクボンド...? あの山脈に拠点を構えている大規模賊団か~。しかし、何でそのゴクアクボンドの団員がこんな所で寝そべってんだ~? 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長は眉をひそめて爆睡している男達を見つめながらそう問いかけた。
「どうやら、この高原はゴクアクボンドの縄張りだったらしいんですよ~。それで、僕等は山脈を荒らしているハンターだと勘違いされて少し絡まれたんで、成り行きで睡眠薬を飲ませて今眠らせたところです」。
ハリガネがそう説明するとソイ=ソース共和国軍隊長は苦笑し、呆れた様子で首を横に振った。
「成り行きって...。説明もざっくりし過ぎてるし、絡まれてからどうやって睡眠薬なんか飲ませたんだよ...。まぁ...何はともあれ、確かにゴクアクボンドの団員みたいだな。腕や首、顔にシンボルマークのタトゥーが入ってるしな。まぁ、ゴクアクボンドは本国にも侵入してたりしてて結構厄介な奴等だからな~。俺達も奴等の活動範囲内というのは知っていたし、ここら辺をうろついてるのは確認してたんだが奴等逃げ足が速くてなかなか捕まらないんだよな~」。
ソイ=ソース共和国軍隊長は兵士達がその場で爆睡している男達の防具を剝ぎ取っている様子を眺めながらそう返した。
「それで、ここに放置してもアレなんで、ソイ=ソース共和国軍さんの方に引き取ってもらおうかと思いましてね~。ほらぁ~! ここって旅人とか通行人が多いでしょ? ソイ=ソース国軍の管轄下にあるカッテージチーズ高原にこういう反社がうろついてたら、隊長も本部に何か言われ...あたっ! 」。
ソイ=ソース共和国軍隊長は手に持っているライフルの銃口で、ハリガネの頭を小突いて話を強引に遮らせた。
「お前が言うな、お前も反社なんだぞ? 」。
「いやぁ~! そうでしたぁ~! はははっ! 」。
頭を摩りながらヘラヘラするハリガネを見て、ソイ=ソース共和国軍隊長は呆れた様子で溜息をついた。
「脅威的な山脈賊団の弱体化に協力してくれるのは嬉しいが、この高原にはもう入ってこないでくれよな? この範囲は、お前がさっき言った通り俺達ソイ=ソース共和国軍の管轄下なんだ。国家反逆者として諸国からも指定されたお前にうろつかれるのは不味いわけなんだよ。現に、ここで俺達が話をしてる事自体も問題なわけだしさ~」。
ソイ=ソース共和国軍隊長は真剣な眼差しでハリガネにそう警告した。
「了解です。それで、ついでと言っては何ですが…。ちょっと隊長に聞きたい事があってですね...」。
「...ん? 」。
ハリガネは神妙な面持ちでそう話を切り出すと、ソイ=ソース共和国軍隊長は怪訝な表情を浮かべた。
「ソイ=ソース共和国では国際指名手配犯になってる赤髪のデイの懸賞金って、上がってたりとかしてます? 」。
「いや、上がってないし...お前にも懸賞金は懸けられていない」。
「...! 」。
ハリガネが意表を突かれたような反応を見逃さなかったソイ=ソース共和国軍隊長は、荷車の中からおもむろに魔獣の角を取り出しながら微笑を浮かべていた。




