隊長、芝居を打つ
む? 好きな物だと?
煙草にラーメン、魔獣狩り。
そして家族...。
はぁ...。
~討伐部隊“勇者”ゴリラ隊員~
「ざっと、こんな感じだな。一応、山脈に拠点地を構えてる賊団はこんな感じだ」。
一人の男がそう言うと、賊団の勢力図が書き上げられた地図をハリガネに渡した。
「ありがとうございや~す! もう本当っ! 何から何まで~! 」。
ハリガネは何度も深々と頭を下げながらその地図を受け取った。
「俺達のテリトリー内で商売する気でいるみたいだから、念のために忠告しとくぞ。賊団に入らず山脈内で商売をするのであれば、常に中立的立場でいなければならない。だから、賊団内の事情に部外者の自分が突っ込んだり、余計な詮索をするような行動を取ってたら殺されるから気をつけろよ」。
「はいっ! もちろんでやんすっ! (お前等こそ大丈夫か? ちょこちょこ内部事情とか話してなかったか? )」。
ハリガネは内心でそう思いながらも男達にそう答えた。
「それと...」。
その男は煙草をくゆらせつつ、ハリガネの胸を指差して神妙な面持ちで話を続けた。
「山脈内で勝手に居座ってやがるノンスタンスとかいうクソな連中とは関わるな」。
「ノン...スタンス」。
ハリガネが神妙な面持ちでそう言うと、その男は小さく頷きながら煙草の煙を空に向かって吐き出した。
「おう、一か月くらい前に山脈に乗り込んできた礼儀知らずなギャング集団だ。俺達の縄張りだけでなく他の賊団の所にも侵入しては荒らしまくりやがって、今でも山脈内を暴れまわっているっつう救いようのない奴等でよ~! エミールっていうデカい賊団の縄張りの中にもアジトを作ってたらしいんだわ~。そのノンスタンスは今もなお山脈の賊団達から追われてる身分だ。まぁ、小規模な集団らしいから賊団に全員惨殺されるのが目に見えてるが、もしノンスタンスに遭遇したら賊団に知らせてくれや。変に相手にすんなよ? それに、ノンスタンスと組むなんて事になったらお前等も殺されるかもしれないからな」。
その男がそう言った時、ハリガネは少し表情を曇らせた。
「勘弁してくだせぇ、あんな奴等なんかと組む気なんかありやせん。むしろ、出くわしたら怒りの衝動で殺しそうでゲスよ」。
「...ん? 何だ? ノンスタンスを知っているのか? 」。
その男は怪訝な表情を浮かべてハリガネにそう問いかけた。
「もちろんでやんすっ! アイツ等は俺達の稼ぎ場を潰した憎き相手でやんすからねっ! 」。
「ん? どういう事だ? 」。
「あっし達はポンズ王国にある酒場にお酒や物資の流通協力をしていたんでゲスがね...。ノンスタンスの奴等がポンズ王国で騒動を起こしたせいで、その店は潰れて儲けもパーになるわ...。あっし達も王国を追われてソイ=ソース国へ逃げ込んで今に至るわけなんでやんす。もう、散々でおじゃる~! 今思い出しても腹が立つでごわすぅ~! 」。
ハリガネはそう言って悔しそうにその場で地団駄を踏むと、男達は神妙な表情を浮かべながらお互いの顔を見合わせていた。。
「ポンズ王国...酒場...? 」。
「ポンズ王国での騒動って...。ノンスタンスが王国軍に喧嘩売ったけど返り討ちに遭ったってやつ...? 」。
「酒場って、もしかしてユズポンって都市にあるパブの事か? 」。
男達の問いかけにハリガネは大きく頷いた。
「そうでやんす! あっし達は都市ユズポンに存在していた“PUBオニヤンマ=キャロルズ”から商品の発注を承っていたんでやんす~! 」。
(“PUBオニヤンマ=キャロルズ”...? 隊長、一体何の話をしているんだ? )。
シアターは顔を強張らせたまま、ハリガネを一瞥してそう思っていた。
「あ~! そうか~! お前等もあのパブの利権を持ってたのか~! 」。
「俺達も王国の外からそのパブへの支援を手伝ってたんだよな~! 」。
「そうそう、先輩達が王国内で活動してたからサポート役としてな~! 」。
一方、男達は納得した様子で何度も頷いていた。
「まぁ、その話から遡るとノンスタンスの奴等本当にやってくれたよな~! 俺達みたいな山脈賊団とは異なる反国家集団だけど、同じ志を持った仲間だと思わせといてよぉ~。最終的にはパブの売上も店からパクって、軍の連中と山分けしてやがったみたいだしな~」。
「軍の連中と山分け...? 」。
ハリガネが怪訝な表情を浮かべてそう聞き返した。
「ノンスタンスが王国を制圧しようと乗り込んできただろう? その時も王国軍の関係者がノンスタンスに協力していたみたいでな~。金を握らせてたのもあるし、特にノンスタンスと軍は密な関係だったんじゃねぇかな~」。
その男はそう答えると、ハリガネは神妙な面持ちで地面を見下ろした。
(軍の関係者がノンスタンスに協力...? 俺を国家反逆者に仕立て上げた軍の関係者と何か関係があるのかもしれないな...)。
『そうそう、メディアもカスだし民間も軍の放送局もクソだし。メディアが流してる軍法会議の内容もみんな信じていないし、“それになんか...”』。
「...」。
ハリガネは王国を去る当日、王国軍本部の会議室で元同僚である職員の一人が発した言葉を思い出していた。




