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兵器を使わない戦術


やぁ! みんな!


また出番がやってきたね~!


嬉しいな~!


え? 好きな物?


う~ん、ハプニングかな!


僕は野次馬根性があるから、何か揉め事があると近づいちゃうんだよな~!


だから、ハリガネが王国にいる時は毎日が楽しくてね~!


だって、アイツは毎日何かしらの厄介事に巻き込まれてるからね~!


ちなみに、アイツが王国追放になったのをニュースで見て、笑い転げちゃったのはここだけの話って事で~!



~道具屋“オードリー”の従業員、ハリガネの友人ミドル=ヘップバーン~


青空の下、涼しい風がそよぐカッテージチーズ高原。


その高原で商人に変装し偵察活動をしていたハリガネとシアターは、その高原を組織の縄張りとしている山脈賊団ゴクアクボンドの三人組と遭遇してしまった。


そんなハリガネ達は人気の無い場所に移動していた。


「ぷはぁ~! 美味ぇな~! 確かに上等な酒だ~! 」。


「おう! 久々に飲むよなぁ~! 」。


「山脈に入って下っ端だから、酒も娯楽もやっちゃいけないからな~! うぉ~! 酒が身体中に染み渡るぜぇ~! 」。


ゴクアクボンドの三人組は自分達の縄張りで酒盛りを始めていた。


「ささっ! まだ何本かありやっせ~! どうぞどうぞぉ~! 」。


「おうっ! 気が利くじゃねぇか~! んぐっ! んぐっ! 」。


男達はすっかり上機嫌になった様子で、勢い良くラッパ飲みをし始めては干し肉を頬張っていた。


(...欲に飢えた奴を手玉に取る事なんて朝飯前だぜ。さてと、酒が回ってきて大分ガードが緩くなってきたかな...? )。


ハリガネは酒を飲む男達を後方から観察していた。


「ささっ! 煙草もサービス致しますでゲス~! 」。


ハリガネはゴリラ隊員から調達した煙草を一箱ずつ男達に差し出した。


「おお~!! サービス良いじゃねぇか!! 気に入ったっ!! お前等ボスの所へ挨拶しに行く時、俺達の名前出してもいいぞ~!! 」。


「馬鹿か! 俺達の名前を出してもほとんど意味ねぇよ! 俺達は賊団の中でも底辺なんだからよぉ~! 」。


「それを言うなっ! お前っ! てか、ライター貸してくれよっ! 今持ってねぇんだよ~! 」。


「ほらよっ! しっかし、カッテージチーズ高原でこんな上等な酒を堪能できたのはラッキーだったな~! 」。


男達の間で会話が弾んでいた時、ハリガネは懐からペンと地図を取り出した。


「あのぅ~、御取込み中で大変恐縮でゲスが...。今度、ゴクアクボンドの親分様へ御挨拶に伺いたいのでありんすが、いかんせんあっし達は新参者でして...。ゴクアクボンド様の御住所が分からないでやんすが、どの辺に拠点地を構えていらっしゃるか教えていただけないでやんすか? 」。


ハリガネがそう言って地図を広げると、男達は受け取った煙草を吸いながらその地図を凝視した。


「これパルメザンチーズ山脈の地図? あ~、ブルーチーズ湖の先をそのまままっすぐ行って...だいたいこの辺だな」。


男の一人はハリガネから受け取ったペンで、ゴクアクボンドのアジトがある場所にバツ印をつけた。


「ちなみに、ゴクアクボンド様のテリトリーって分かりまっか? 」。


「え~と、だいたいこんな感じだな」。


その男はハリガネにそう問いかけられると、ゴクアクボンドのテリトリーを丸で囲った。


「度々申し訳ないでござるが、その...ここは挨拶しておかないといけないっていう組織とかはあるでごわすかね? 」。


ハリガネがそう問いかけると、男達は神妙な面持ちでお互いの顔を見合わせていた。


「まぁ、何処にも属しないで山脈を通る商人だとエミールとヒラメキーナは絶対だな。あとの系列賊団なんて俺達のゴクアクボンドと、その二つの賊団に挨拶して商売の許可が下りてたらどうにでもなるしな~」。


「なるほど~、それじゃあゴクアクボンド様のテリトリーじゃないところが、だいたいエミールさんとヒラメキーナさんのテリトリーって感じなんでござるね? 」。


「まぁ、そうだな~。え...と、エミールのアジトって何処だっけ? ここか? 」。


「違ぇよ、ここで...。それで、テリトリーが...」。


「ヒラメキーナのアジトは確か...」。


男達は意見を出し合いながら、地図上に賊団の勢力図をペンで書き足していった。


(物資を利用して賊団のメンバーからここまで情報を聞き出すなんて...。これも武力を用いない心理的戦術なんだ...。ケチャップ軍での取引といい、人間の弱みを握ったり欲をかざして人を引きずり込んだり...。ハリガネ隊長、恐ろしい人だ...)。


シアターは顔を強張らせ、隣に立っているハリガネを横目で見ながらそう思っていた。


「...」。


一方、神妙な面持ちのハリガネは、目深に被ったフードによって落とされた影の奥から鋭い眼差しを地図に向けていた。



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