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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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隊長の苦悩


やぁ、諸君。


大丈夫か?


瞳が死んでいるぞ?



~白いローブを纏った謎の男~


「は~い! ありがとうございやした~! またどうぞ、よろしくお願いしや~す! 」。


魔王を倒すべくカラシ島へ向かっていった集団を見送った後、ハリガネとシアターはしばらくカッテージチーズ高原で通りかかった旅人や傭兵を相手に物々交換の取引を行っていた。


「いやぁ~! 睡眠薬と麻痺薬まで分けてもらえましたね~! これは大きいぞぉ~! “アルマンダイト”の討伐対策にとても役に立ちますよぉ~! 」。


ハリガネは上機嫌な様子で取引で受け取った物資を荷車に積んでいた。


「この間とは打って変わって、このカッテージチーズ高原は通行人が多いですね~! 」。


シアターも物資を荷車に積み込みながらハリガネにそう相槌を打った。。


「まぁ、王国を出る前に調べたんですがカッテージチーズ高原は手前のパルメザンチーズ山脈を通る事なく、この高原から諸国へ直接入国する事が可能ですからね。リスクも大分軽減されるので大陸を横断する際には、ほとんどの人々がこの高原を通っていくみたいですよ~。ん~! 」。


ハリガネはシアターに対してそう答えると、その場で背伸びをしながら深呼吸をした。


「しかも、この高原で野菜や薬草がたくさん採れましたし、今日の成果は抜群ですね~! しかし、これだけ薬草があるのに、どうしてみんな採集していかないんですかね~? 」。


シアターは荷車に積まれた大量の山菜や取引した物資を眺めながら、満足げに頷きつつそうハリガネにそう問いかけた。


「う~ん...安全とはいえ、目の前にはパルメザンチーズ山脈が広がってますからね~。“アルマンダイト”や大型魔獣が山から下りてくる可能性が大いにありますから、やっぱり商人とか一般人は敬遠してるんでしょうね。この高原を通る人間はさっきの旅人達とかハンターとか、それこそ領土近辺を巡回しているソイ=ソース軍の兵士くらいですからね。あと、旅人とかはだいたい回復薬とかの薬品を常備してるんで、薬草をちぎっていく必要も無いですからね~」。


「なるほど~」。


「...しかし、どうすっかな」。


ハリガネがシアターと言葉を交わしていた時、腑に落ちない表情で両腕を組んだ。


「え? どうしました? 」。


「ずっと考えてはいたんですが部隊の人数です。捕虜や基地周辺の監視を実施している中で、隊員は五人しかいないので基地内での人事マネージメントが大変です。王国軍の前線部隊だった僕はこういうサバイバルな境遇には慣れていますが、討伐のターゲットは何と言っても“アルマンダイト”です。長期戦になる事を考えると、現状の部隊構成では身体のケアが追いつかないという懸念材料が次第に部隊内で浮き彫りになっていくと思います」。


「確かに...。そこは捕虜側のノンスタンスのメンバーにも協力してもらって、何とかやり繰りするって感じですか? 」。


シアターがそう問うとハリガネは険しい表情のまま、一息ついて地面を見下ろし考え込んだ。


「いや...今となっては部隊の管轄下にいるノンスタンスのメンバーですが、隊員数が少ないこの部隊がいつ反旗を翻されてもおかしくありません。現時点では基地内において良好な関係を築けているように見えますし、あのメンバーも追い詰められてデイの率いるノンスタンスから離れたっていう経緯があるのは分かってます。でも、ノンスタンスは王国と敵対関係にあり、反社会的勢力集団である事はシアターさんも忘れないでください」。


「は、はぁ...」。


ハリガネはシアターに警戒を促すと、険しい表情を保ったまま地面から晴れた空に視線を移した。


「それに、子供達以外のメンバーは魔法が使えますしね。あと、ローは元々エミールのメンバーだったわけですし、常に目を光らせておかないといけないですよ。油断して脱走されたりでもしたら、他の賊団に基地の場所とか情報を売られる可能性だってありますからね。それゆえに、この間にローが証言した事を全て鵜吞みにするわけにもいきませんし。ホワイトやアゲハラ達だってデイとは距離が近かったメンバーだし、ワンムーンも未だにデイを慕っている傾向が見られます。アネックスもハニートラップみたいな事を始めて意図がなかなか読めないし、基地内でも現時点で全く不安要素が無いというわけではありません。常に警戒しておかないと」。


「す、すみません...。危険と隣合わせなのに、僕の考えが楽観的過ぎました...」。


シアターは申し訳なさそう頭を下げてそう詫びると、ハリガネは神妙な面持ちで小さく首を横に振った。


「いえ...それで、話を戻しますが...。今後、“アルマンダイト”討伐には何よりも部隊の強化が必要です。小規模の部隊において、その部隊強化を考えると人員補強がやはり必要不可欠になっていきます。隊員数が五人というのはやはり少ないですし、様々な困難に直面した際に小回りが利かなくなってしまうと対応が厳しくなってくるかもしれません...。それに、僕等がこうして偵察を実行している間は基地の中に隊員が三人しかいないという事です。いくら個々の隊員の潜在能力が高いとしても、基地が賊団に攻め込まれたらほぼアウトです。基地自体も戦闘的整備が施されていないわけで、実質的に隠れ家みたいなもんですからね。ゴリラ隊員も僕等が続けて偵察行動をする事に難色を示していたのも、そういった隊員不足を懸念していたからだったと思います。基地が手薄になりますからね」。


「あの隊長...話の流れからして...。も、もしかして、通行人に対してスカウトを行うつもりでこの高原に来たんですか? 」。


シアターは困惑した表情を浮かべながらそう問いかけると、ハリガネは即答せずに両腕を組んだまましばらく考え込んだ。


「...その考えは正直ありました。でも、そんな容易に迎え入れるわけにはいきません。パルメザンチーズ山脈は極めて危険な反面、希少な魔獣や資源が眠っています。そんな目先の欲に目がくらんでいる奴の器や人間性なんて、たかが知れています。そんな奴を部隊に入れたら部隊内を搔き乱されたり簡単に裏切られるでしょうし、山脈の賊団に寝返られて情報も漏らされたりでもしたら最悪ですからね。人員補強という考えはありますけど、その選択に関しては現時点では消極的だと思ってください」。


「は、はい...」。


「あと、昨日も言ったと思うんですけど、今日はどうしても会っておきたい人がいるんですよ。だから、この高原を選んだというわけなんですよ。上手く鉢合わせできればいいんだけど...」。


ハリガネはそう言いながら高原を見渡していた。


「あ、隊長そういえばおっしゃってましたね~。その会いたい方って、一体...」。


ピキィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン...ッッ!!


「...ッッ!? 気配がするぞ...ッッ!! 」。


ハリガネはシアターと話をしている時に気配を感じ取り、とっさに肩に掛けているライフルを掴んだ時...。


「オイィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!! コルァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 」。


「...ッッ!? 」。


何処からか怒声が聞こえてきた。



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