表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/104

ソイ=ソース共和国軍隊長、魔獣&ノンスタンス討伐成功に九百万ゴールド


ハッハッハッハッハ~!!


気性の荒い俺には軍の歩兵が天職だったみたいでな~!!


戦中期はよくポンズ王国とやり合ったもんだわい!!


ん?? あぁ~!!


ポンズ王国軍の前線部隊には随分と手を焼いたなぁ~!!


特に“恐戦士”という異名があった戦士のハリボテ=ポップはなかなか狂った奴でなぁ~!!


司令塔のクセして自分から布陣に切り込んでいって、奴にはよく泣かされたもんだ~!!


その大胆な親父と違って、息子の方はしたたかで要領がいいイメージがあるな~!!


しかし、親父と同様に息子も国を追い出される事になるとはな~!!


いずれにせよ“アルマンダイト”を討伐してもらわなければ困るわい!!


次、ギャンブルで金を擦ったら離婚っていう条件を、ウチのカミさんに突き付けられてるからな!!


ガッハッハッハッハ~!!




~ケチャップ共和国軍歩兵隊、隊長~





「...ゴーダチーズ丘にいる時も気にはなっていたが、やはりノンスタンスの奴等は山脈にいるのか。先に山脈で陣形を整えられていたら厄介だな」。


ゴリラ隊員もハリガネと同様、去っていくケチャップ軍兵士達の背中を眺めながらそう呟いた。


「ただ、近年のノンスタンスは国外で魔法使い等の人員を補充してきたとはいえ、王国に襲撃した際に我々が奴等の戦闘部隊を大分削ったはずなので簡単に立て直しはできないはずです。それに、ノンスタンスも派閥による仲間割れが影響しているようですし...。そして、何よりもパルメザンチーズ山脈です。苦し紛れにノンスタンスが逃げ込んだところで、魔獣の巣窟である山脈内で生きていける確率は極めて低いでしょう」。


ハリガネがそう答えると、ゴリラ隊員は険しい表情で小さく頷いた。


「うむ、いずれにせよ奴等が先に山脈にいるわけだから用心するに越した事はない。人数的にもこちら側が不利である事を忘れるな」。


「そうですね、相手側は魔法が使えるわけですし...ん? 」。


ハリガネは去っていったケチャップ軍の方を凝視した。


ケチャップ軍とすれ違うように、鎧を纏った兵士達の群れがハリガネの下へ近づいてきた。


パッパ~!!


その集団の中にいる兵士の一人がクラクション合図のようにラッパを短く吹き鳴らすと、集団の中にいる兵士の一人がハリガネ達に向けて手を振っていた。


「お~!! お前等~!! やってくれたじゃねぇかよぉ~!! こちとら大変なんだぞ~? 」。


「久しぶりだな~。さっき、すれ違ってたケチャップ軍の隊長から話を聞いたよ。悪いな、そっちにもしわ寄せが行っちまったみたいだな」。


「本当だよぉ~!! 勘弁してくれよぉ~!! ただでさえ、パルメザンチーズ山脈付近の巡回したくねぇってのに、お前等がノンスタンスを逃がしたせいで俺達の巡回する回数が増えちまったじゃねぇかよぉ~!! 」。


ゴリラ隊員は笑みを浮かべながら、その集団の方まで歩み寄った。


「隊長ぉ~、あの旗手が持っている軍旗って...」。


ゴリラ隊員が兵士と言葉を交わしている中、パルスは兵士の一人が持っている軍旗に視線を向けながらハリガネに耳打ちした。


「はい、ケチャップ共和国と同じく山脈付近に位置するソイ=ソース共和国軍の歩兵部隊ですね。ノンスタンスの件もあるんで、この周辺をケチャップ軍と共に巡回していたみたいですね」。


ハリガネはパルスにそう答え、会話しているゴリラ隊員とその兵士の下へ歩み寄った。


「おお~!! “恐戦士”ハリボテ=ポップの息子か~!!久しぶりだな~!! 」。


「隊長、久しぶりで~す! お元気そうですね~! 」。


「全然元気なんかじゃねぇよぉ~!! お前等のおかげでこっちはずっと寝不足だよぉ~!! お前等がノンスタンスとドンパチやってくれたせいで、メンドーな事になっちまったじゃねぇかよぉ~!! 国に抗う覚悟があったんだったら、一人残らず抹殺してくれよぉ~!! 」。


ソイ=ソース共和国軍隊長は笑いながらそう言ってハリガネの背中を叩いた。


「いやぁ~! 良い所まで追い詰めたんですけどねぇ~! すいませ~ん! 逃がしちゃいました~! 」。


ハリガネは苦笑交じりに自身の頭を掻いた。


「ったくよぉ~!! 王国から追い出された身分なのに、相変わらずお前はヘラヘラしてんなぁ~!! こういう所は親父と大違いだなぁ~!! 」。


「へへへ~! 仲間達からよく言われま~す! 」。


あっけらかんとしたハリガネの様子を見て、ソイ=ソース共和国軍隊長は肩をすくめた。


「とはいえ、俺達も報道でお前等の事情は聞いてたからな~。まぁ、気落ちしてないみたいで安心したよぉ~! 」。


「気落ちしてたらパルメザンチーズ山脈でやっていけませんよ~! 」。


「ほう~! 頼もしいな~! ただ、俺達もノンスタンスに侵入を許してしまったという落ち度があるからな~! 」。


「ああ、その話もケチャップ軍の隊長から話を聞いたよ。どうやら奴等はおたくの領土に侵入して、そこでしばらく潜伏していたらしいな」。


ゴリラ隊員がそう言うと、ソイ=ソース共和国軍隊長はがっくりとうなだれた。


「そうなんだよぉ~!! その事で上官がお冠なんだよぉ~!! ホント困っちゃうよぉ~!! 」。


「まぁ、俺達側も言える立場ではないが反逆集団を領域に侵入させてしまった事はマズかったな...」。


ゴリラ隊員の言葉にソイ=ソース共和国軍隊長は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、首を小さく横に振った。


「もう、やべぇよ...。上官の怒りがずっと収まらなくてよ~! 山脈の山頂から渓谷まで隈なくノンスタンスを探し出して奴等の首を獲ってくるまでは戻るなって、俺等に命令する始末だしよぉ~!! 」。


「え!? マジっすか!? じゃあ、ソイ=ソース軍も一緒にパルメザンチーズ山脈奥で魔獣討伐しましょうよぉ~!! 」。


そう嬉々とした様子で討伐に誘うハリガネに対し、ソイ=ソース共和国軍隊長は更に心底から嫌そうな様子で首を激しく横に振った。


「ふざけんなっ!! 冗談じゃねぇよっ!! しかも、何さりげなく魔獣討伐に誘ってんだよっ!! “アルマンダイト”みたいな悪魔なんか相手にしたくねぇよぉ~!! それだったら、まだ国家間戦争の方がマシだよっ!! 」。


「えぇ~?? そこまで言いますかぁ~?? 」。


ハリガネはそう言ってつまんなそうに口を尖らせた。


「そもそも、俺達は反逆者扱いされてるお前等に手貸せないからよ~。それに、あんなのを相手にするなんて命がいくつあっても足りねぇよ。俺達には終戦を迎えて現在に至るまで、国家の防衛していく使命があるんだ。つーか、あんな悪魔を狩るために命を落としたくねぇしよぉ~。まぁ、これから山脈に向かうお前等には悪いけどな~」。


「フンッ! まぁ、俺達は処刑されても仕方がない身分だったからな。国の都合がどうであれ、一度救われた命だ。ここまで来たら、俺達はもう引き返せないんでな」。


ゴリラ隊員は毅然とした態度でそう答えると、ソイ=ソース共和国軍隊長は納得したように何度も頷いた。


「さっき、ケチャップ軍の隊長とすれ違いざまに言葉を少し交わしてたんだけどよぉ~。やっぱお前等は変わってねぇな~。根拠は無いけどお前等なら何となくやってくれそうな気がするわ~」。


「フンッ! 討伐が完了したら運ぶのくらいは手伝ってくれよな」。


「ああ、討伐できたらな~! …あ、そうだ。俺達は討伐の応援はできないけど情報くらいなら教えてやるよ~」。


「情報...? 」。


ハリガネは怪訝な表情を浮かべてソイ=ソース共和国軍隊長を見つめた。


「昨日チェダーチーズ山の裏にあるモッツァレラチーズ渓谷やブルーチーズ川で、ノンスタンスのメンバーらしき若い男女集団の存在が確認できたらしい。これは偵察隊からの情報だ」。


ソイ=ソース共和国軍隊長の言葉に、ハリガネ達がばつが悪そうな表情を浮かべた。


「えぇ~!? あの川の奥にあるブルーチーズ湖の辺りをしばらく拠点にしようかと思ってたのに~!! んだよぉ~!! ソイ=ソースから山脈越えてきたのかよぉ~!! つーか、こっちに向かってきてんじゃねぇよぉ~!! クソうぜぇ~!! 」。


心底から嫌そうな表情でそう嘆くハリガネを見て、ソイ=ソース共和国軍隊長は天に向かって高笑いをした。


「ハッハッハッハ~!! これで“アルマンダイト”とも鉢合わせになったら地獄だなぁ~!! 」。


「最ッッッ悪ッ!! マジうぜぇ...」。


ハリガネは溜息をついてガックリとうなだれた。


(魔獣達がゴーダチーズ丘に下ってきていたのも、奴等の影響か…)。


ゴリラ隊員は神妙な表情を浮かべてそう思っていた。


「でも、あの出来事から一か月も経ってるわけでノンスタンスの方は全滅してるだろうし、デイも殺されてるんじゃないかな~? 」。


「え?? どういう事です?? 」。


ハリガネがそう問いかけると、ソイ=ソース共和国軍隊長は神妙な面持ちで遠くから見えるパルメザンチーズ山脈を眺めた。


「最近は狩猟士ハンターや賊団がお前等と同じく“アルマンダイト”狩りのためにパルメザンチーズ山脈に潜伏しているという情報もあるんだ。“アルマンダイト”は凶暴だが、その分奴等の部位は希少性があるからな。要は一攫千金いっかくせんきんを狙っているという事さ。奴等を討伐すればどんな悪党で小汚い賊人でも、一気に英雄扱いになるだろうからな。つまり、命知らずな奴等も山脈付近にいるから余計俺達は警戒しなきゃいけないって事よ」。


「マジか...。そうか、ゴーダチーズ丘まで下ってきた魔獣達は山脈付近に潜伏しているハンターから逃げてきたのか...。うわぁ...。メンドーな事になってきたな...」。


ハリガネはげんなりとした表情を浮かべ、再び溜息をついた。


「まぁ、戦中期のポンズ王国軍と俺達ソイ=ソース軍は敵対関係だったしな...。お互い何度も戦場で血を血で洗うような争いを続けていたわけだ。当時は仲間や国民が殺されてお前等を憎んでいたものだが、終戦後の今となってはお互い国家を護るために戦う運命さだめだったと受け取っているさ。...これに関しては仕方がない事だ」。


ソイ=ソース共和国軍隊長はチェダーチーズ山を眺めながら、静かな口調でそう話した。


「それはお互い様だ。国家のために戦い続ける事が兵士の使命であるが、戦争は非情かつ残酷だ。戦争で産むものは決して癒えない傷と消す事のできない怒りや憎しみ、そして事が起きたしまったという現実しか残らない。俺達は泣き叫び,狂い,抗う民や敵軍の兵士も容赦なく殺し、死んでいく味方達を横目で見ながら戦い続けてきた。その意志は王国から追放され野良の戦士となった今でも変わらない。俺達は生きていくために戦い続けなければいけない」。


ソイ=ソース共和国軍隊長は小さく頷き、毅然とした態度のままそう答えたゴリラ隊員の肩を軽く叩いた。


「ああ...。それに、“アルマンダイト”やノンスタンスのせいでお互い仲間達を随分と失ったもんな。母国のために命を落とした英霊達の無念を全てではないにしろ、それを少しばかり晴らすことができるのはお前等しかいない。厳しい条件下である事は承知の上だが、生きて王国へ帰還しろよな」。


「ああ、勿論そのつもりだ」。


ゴリラ隊員は微笑を浮かべてソイ=ソース共和国軍隊長に親指を立てた。


「それにお前等が討伐成功する方に賭けてるから期待してるぜ~! さて、俺達もそろそろ行くわ! それじゃ、達者でな~! あと、俺達の領土には入らないようにしてくれよな~! お前等を殺したら賭けた金が戻ってこねぇからな~! 」。


「分かった、お前等も達者でな」。


「お元気で~」。


ソイ=ソース共和国軍隊長は、ハリガネ達とそう言葉を交わすと軍を率いてその場から離れていった。


「ノンスタンスがモッツァレラチーズ渓谷にか...。立場は違えど同じ兵士であり戦士だ。ソイ=ソース国隊長の言葉をしっかり受け止め、改めて気を引き締めて構えないとな」。


「そうですね...。山脈付近はただでさえ凶暴な魔獣がいるってのに...。奴等に遭遇したら...もうヤるしかないっすね...」。


「...おう」。


ハリガネとゴリラ隊員は一言交わし、去っていくソイ=ソース共和国軍を見送っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ