パルスの野望
嫌いなタイプ...。
すぐに消えちゃう人...。
ずっと、いてほしい...。
そうじゃないと、私がおかしくなりそう...。
~ノンスタンスのメンバー、アネックス~
ローへの聞き込みが終わり、ハリガネはゴリラ隊員やパルスと共に基地の外へ出ていた。
「うわぁ...。肉眼で改めて確認すると酷いなこれは...」。
ハリガネは基地周辺の惨状を目の当たりにして顔を強張らせた。
「おい、周囲をちゃんと警戒しろ。もしかしたら気配を隠したエミールの団員がまだ張り込んでいるかもしれん」。
ゴリラ隊員はライフルを構えながらハリガネに警戒を促した。
「ええ、まぁ...。そうですけど...。パルスさん、どうしてまた外へ出ようなんて思ったんですか? 」。
ハリガネは辺りを見渡しながら神妙な表情を浮かべるパルスに問いかけた。
「ん~、うん...。ちょっと、待っててくださいね~」。
パルスはそう言い残し、洞穴を塞いでいる大岩をすり抜けて基地内へ戻っていった。
「...」。
ハリガネとゴリラ隊員はお互い顔を見合わせ、頭上に疑問符を浮かべていた。
「お待たせしました~! 」。
しばらくして、パルスがオシイチを引き連れて姿を現した。
「オシイチ君、さっきの暴動で地面が掘り起こされて土がほぐれてると思うんだけど、これ使えそう? 」。
パルスがそう問いかけるとオシイチは目の前の光景をしばらく眺めた後、小さく何度か頷いた。
「はい、苗を育てるには申し分ないです」。
「うっしゃっ!! 」。
オシイチの返答を聞いたパルスは大きくガッツポーズをした。
「パルスさん...マジで米作り始める気なんですか? 」。
ハリガネはそんなパルスに怪訝な表情を浮かべてそう問いかけた。
「もちろんっ! エミールのウェーブって子は土を掘り起こしただけじゃなくて、我々にこんなプレゼントも残してくれたわけですしねっ! 」。
「え...? 」。
ハリガネはパルスが指差した方向を辿ると、基地から少し離れた断壁に大きな窪みがいくつか出来上がっていた。
「まさか...。あの洞穴の中で田んぼを作るつもりですか!? 」。
「はいっ! そうですっ! 」。
不安げにそう問うハリガネを余所に、パルスは自信満々にそう答えた。
「いや、でも...」。
「窪みの奥行きもある程度広いみたいだし、田んぼを作るには十分な広さだと思いやしてね~。あとはほぐれた土を洞穴に運搬して、上手く整備すれば環境ってもんは作れるもんでさぁ~! 」。
「は、はぁ...(そんな上手くいくもんかね? )」。
ハリガネは困惑しながら洞穴をまじまじと見つめるパルスにそう相槌を打った。
「さて、下見が済んだところで施設作りを始めますかっ! まずはヤマナカさんにほぐれてる土を一緒に運搬してもらって、その後に基地と同様に大岩で入口を塞いでもらって...」。
「...」。
「...」。
すっかりテンションが高まったパルスを見て、ハリガネとゴリラ隊員は困惑した表情でお互い顔を見合わせている事しかできなかった。




