女子達の甘い戯れ
苦手なタイプ?
カッコつけてて、口だけの人かな?
あと、人を馬鹿にするような人。
それにナヨナヨしてて筋の通ってない人は見ててイライラするわね~。
~ノンスタンスのメンバー、ワンムーン~
パルメザンチーズ山脈の有力賊団エミールのメンバー、魔法使いのウェーブによる襲撃。
そして、そのウェーブの後を追ってきた同じくエミールのメンバーのファイド。
緑や木々が生い茂っていた基地の周辺はウェーブによってすっかり荒れ果ててしまった。
そんな荒れ果てた誰もいない外のスクリーンが映し出されたまま、ハリガネや隊員達は神妙な表情を浮かべてテーブル席に座っていた。
「まぁ、外もあんな状態だし...。まだエミールの団員が基地の周囲にいるかもしれないから当分は基地から出ない方が良いでしょう。それに、せっかく外を看視してくれる監視カメラ的な物もあるわけだし、魔法陣のスクリーンがその場を映してくれてるから今日は何とか大丈夫でしょう。有事に備えて、今後の“アルマンダイト”討伐のために我々も手を打たなければ...」。
ハリガネがそう話を切り出すと、チャールズはすかさず挙手をした。
「あ、すいませ~ん! 外で撮影してるブロックって操作式の魔法なんで、今も魔力をずっと消費し続けて操作してる状態なんで効率が悪いんですよね~。スクリーン越しからこの辺り一面を監視したいのであれば、撮影魔法陣を各場所に設置しておいた方が適切だと思いますね~」。
チャールズがそう答えると、ハリガネは納得した様子で小さく頷いた。
「そうか~、その魔法陣の設置とかはできるの? 」。
「お任せあれ! 」。
フユカワは自身の胸をポンッと叩き、自信満々な様子でハリガネにそう答えた。
「よしッ! そうと決まれば早速、魔法陣を外に配置しようッ! ヤマナカッ! まだ賊団の連中がいるかもしれんから、護衛の為に俺達も同行するぞッ! 」。
「了解ッ! 」。
「えっ!? 」。
ハリガネはすっかり乗り気のゴリラ隊員とヤマナカに困惑した。
「それじゃあ隊長ッ! 基地はよろしく頼むッ! 」。
「い、いや...っっ!! マズいですよ...っっ!! まだエミールのメンバーが近くにいるかもしれないし...」。
「フンッ! 賊団の輩なんぞ細切れにしてくれるわッ! 」。
「えぇ~!? 」。
鼻を鳴らし自信満々にそう言い放ったゴリラ隊員に、ハリガネは依然として困惑した表情を浮かべていた。
「即決即断、何事も善は急げだ。それに、奴等の話を聞いていた限りそのまま自分達のアジトに引き返していったに違いない。それにお前もさっき言ってただろう? 手は早いうちに打っておいた方が良い」。
「は、はぁ...」。
「よしッ!! そうと決まれば行くぞッ!! 」。
「行って参りますッ! 」。
ゴリラ隊員とヤマナカはハリガネにそう言い残すとチャールズとフユカワを引き連れ、入口を塞いだ岩をすり抜けて外へ出て行った。
「あっ! オイラも周囲に魔力の気配がないか、確認がてら魔法陣設置の補助に行ってきま~す! 」。
「あっ!! ちょ...っっ!! 」。
そして、パルスも後を追うように外へ出て行った。
「だ、大丈夫かな…? 」。
ハリガネは人差し指で自身の頬をポリポリと掻きながら入口を塞いでいる岩を見つめていた。
「ははは...。まぁ、旦那様は好奇心旺盛ですからね...」。
シアターも苦笑しながら基地の入口に視線を向けていた。
「まぁ、あの二人がいれば大丈夫でしょう...多分」。
「ははは...」。
「さて、じゃあ隊員が外にいる間はローから色々聞かなくちゃならないな~。シアターさん! すいません! 入口見張っててもらっていいですか? 」。
「あ、はいっ! 分かりましたっ! 」。
シアターはハリガネにそう指示されると、慌ただしく入口付近へ向かっていった。
「じゃあ、ローは椅子に座ってもらって、他の人間は各自の作業に戻って! 」。
ハリガネは続けてそう指示を出すと、ノンスタンスのメンバー達は薬の調合や毛皮の裁縫等の作業に戻っていった。
「ほら! お前もだよ! 」。
ハリガネはそう言いながら、恋人の様に自身の腕に抱きついているアネックスを半ば強引に振り解いた。
「んもぉ~! 隊長さんの意地悪ぅ~! 近くにいたっていいじゃ~ん! 」。
「良くない、これから大事な話をするんだから。...ほら! 戻った! 戻った! 」。
「えぇ~? 」。
アネックスは上目遣いで唇をしぼませながら不貞腐れた様子を見せた。
「アネックスちゃん、ダメだよ。隊長さん困らせたら...ねっ? 」。
キュンは苦笑いしながらアネックスにそう促した。
「分かったよぉ~」。
アネックスはつまんなさそうに溜息をつきながら、ハリガネから背を向けて隅の方へ戻っていった。
「...」。
皆が作業に戻っていく中、ワンムーンは不満げな様子でその場に突っ立ってハリガネを睨んでいた。
「何だよ、どチビ。お前も早く戻れや」。
ハリガネは眉をひそめてワンムーンにそう急かした。
「...何よ、自分だってちんちくりんのクセに。偉そうにしちゃってさ~」。
「...あ? 今、何つった? テメー」。
ハリガネは仏頂面でワンムーンにライフルの銃口を向けた。
「あら? 聞こえなかったの? だから、ちんちくり...」。
ハリガネとワンムーンがひと悶着している時...。
「ちょっ...!? きゃあっ...!? 」。
元の場所に戻っていたはずのアネックスが、背後からワンムーンの服の中をまさぐっていた。
「ワンムーンちゃ~ん、隊長さんにアプローチしてんの~? 」。
「ちょっ...!! やだっっ...!! やめてよっっ!! そんなんじゃないもんっっ!! 」。
ワンムーンは激しく首を振って抵抗するも、アネックスは気にも留めず身体を密着させて楽しんでいた。
「こんなに小っちゃくて可愛いのに、相変わらず胸もお尻も大きいのね~! 何か妬けちゃうな~! なぁに~?? ワンムーンちゃんも隊長さん狙ってるの~?? 」。
アネックスは片手でワンムーンの胸部、もう片方の手で臀部を撫で回しつつそう問いかけながら首筋を舐め始めた。
「や、やだぁっっ...!! だ、誰がっっ...!! あ...あんな、ちんちくりんなんかとっっ...!! 」。
ワンムーンは顔を真っ赤にし、涙目でアネックスにそう反論した。
「誰がちんちくりんだ、お前は女同士で乳繰り合ってんだろうが」。
ハリガネは不快感を露わにしながら椅子に腰を下ろした。
「見...見んなぁっっ...!! 馬鹿ぁっっ...!! 変態っっ...!! もう最悪っっ...!! 」。
「んふふ~! ワンムーンちゃん、本当に可愛い...んっ」。
アネックスは卑しい目付きで濃紫のロングヘアーを手で後ろに靡かせつつ、背後からワンムーンの唇に吸い付いた。
「んぅっっ...!? んんぅ~~っっ!! 」。
ワンムーンは必死に手足をばたつかせて抵抗を続けるも次第に動きが鈍くなっていった。
そんなワンムーンとアネックスに、傍にいたハリガネとローは冷めた視線を向けていた。
「そんな事されて悦んでる奴に変態なんて言われる筋合いなんかねぇよ。アネックス! こっちは取り込んでんだから、向こうでやってくれ! 」。
ワンムーンの唇を離したアネックスは、引いていた唾液の糸を小指で拭いながらハリガネに卑しく微笑んだ。
「んふふっ...。それじゃあ、ワンムーンちゃん~。奥の方で楽しみましょうか~。マーシュちゃんも手伝って~」。
「はぁ~い! 」。
アネックスとマーシュはワンムーンを抱きかかえて基地の奥へと移動していった。
「はぁ...はぁ...」。
そんな二人に抱えられたワンムーンはのぼせた様に蕩けた表情を浮かべ、すっかり放心状態になっていた。
「ち、ちょっとっ! みんなっ! 」。
そして、キュンも困惑しつつ三人の後を追うのであった。
「...」。
既に着席しているローはアネックスとワンムーンの甘いやり取りなど気にも留めていない様子で、思い詰めた表情を浮かべたまま手前の卓上を見つめていた。
「すまん、悪かったな...。周りが色々と騒がしくて...」。
ハリガネは神妙な面持ちでローに向き直ってそう詫びた。
「いいえ...大丈夫です...」。
ローはハリガネにぎこちない愛想笑いをした後、表情を曇らせたまま大きな溜息をついた。
「...」。
ハリガネはそんな思い詰めたようなローの様子を察すると、咳払いしてワンクッション置きながらゆっくりと口を開いた。
「...ノンスタンスの女性陣はいつもあんな感じなのか? 特にアネックス...随分と刺激的なスキンシップでコミュニケーションを取ってるんだな」。
ハリガネがそう言うと、ローは小さく頷いた。
「はぁ...。私はノンスタンスに加入して歴が浅いですが、女性陣というよりは...アネックスですかね...。アネックスは両刀という事らしくて...。男女限らず寝ていたという事みたいですが...」。
ローがそう答えると、ハリガネは半ば呆れた表情を浮かべつつ小さく頷いた。
「ふ~ん...。まぁ、基地内の風紀を乱されては困るな...マークしとこ」。
「は、はぁ...」。
ローはハリガネにそう相槌を打ちながらも依然として浮かない顔をしていた。
「...」。
ハリガネは少し間を置き、ローを見つめたまま話を切り出した。
「何はともあれ、邪魔者が消えたところで早速だけど本題に入ろうか。今回の件も含めて色々と引っ掛かる所があるからな...話してくれるよな? 」。
「...」。
ローは険しい表情でハリガネを見つめ返した。
「話して...くれるか...?」。
そんなローの瞳を逸らさずに見つめたまま、眉間にしわを寄せるハリガネは念を押すように静かな口調でそう訴えた。
「...はいっ! 」。
ローは思い詰めた面持ちのまま、ハリガネに対して力強くそう答えた。