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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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戦場で繰り広げられる“秋のソナータ”


苦手なタイプですか?


我が強い人が苦手ですかね~。


え? パルス様?


まぁ、パルス様もしっかりとした自身の信念を持たれている方ですけど...。


何だかんだで思いやりのある御方ですからね~。




~討伐部隊“勇者”シアター=アローン隊員~




「あの魔法使いの仲間か...。やはり賊団の人間なのか...? 」。


ハリガネは身を乗り出し、真剣な眼差しでウェーブの下へ歩み寄る男の一人を見つめていた。


『ファイド...』。


ウェーブがそう言うと、ファイドと呼ばれる男は手を振りかざし...。


パァァアアアン...ッッ!!


ウェーブの頬を強く叩いた音が辺りに鳴り響いていた。


『っっ...!! 』。


頬を叩かれた衝撃でウェーブはファイドから顔を逸らした。


『君は一体何を考えてるんだッ!! こんな事をして許されると思ってるのかッ!? 』。


ファイドは厳かな表情を崩さず、ウェーブに語気を荒げて叱り付けた。


『...』。


ファイドに叩かれたウェーブは、自身の頬を擦りながら虚ろな目で黙っていた。


『昨日から様子がおかしいから、心配して後を追ってみれば...。まさかこんな事になるなんて...。監視を付けておいて正解だった...』。


ファイドはそう言いながら後方に控えている三人の男達を一瞥した。


『山脈を下りた君は途中で気配に気づいて監視の目から逃れたつもりだったようだが、こんな派手な事をしておいて気付かれないと思うのが逆におかしいよ』。


ファイドは周囲の惨状を見渡しながら大きな溜息をつき、ウェーブに視線を戻した。


『それに...』。


そして、ファイドはウェーブの細い腕を手に取り、悲痛で顔を歪ませながら魔法焼けで赤黒くなったその手を見つめていた。


『こんな滅茶苦茶な事をして...。さっきだって、君を見つけるのがあと少し遅ければ死んでいたかもしれないんだ』。


そう言うファイドは悲しい目をしたまま、ウェーブの魔法焼けした手を愛でるように擦っていた。


『...ごめんなさい』。


ウェーブは絞り出すような声でうつむきながらそう答えると、ファイドは安堵したように少し表情を緩めて再び大きな溜息をついた。


『こんな事がエスティー様に知られたら、どうなる事やら...』。


厳かな表情と打って変わり、ファイドがウェーブに見せている笑顔は愛くるしく非常に魅力的だった。


ファイドの小柄で幼い雰囲気が漂っている容姿や女性の様に華奢な体格は、屈強で荒々しい風貌の戦士とは縁の遠い男性像であった。


茶色い短髪に澄んだとび色の瞳、そして色白の小顔と一見すると女性と見間違えてしまうような可愛いらしさをファイドは持ち合わせていた。


『...ごめんなさい』。


両手を腫らし魔法の使えぬ今のウェーブには、その場に居合わせていたファイド達に対してそう詫びてうつむく事しかできなかった。


(スクリーンで映像を見てるから余計思っちゃうんだけど...。なんか、ドラマ見てる感覚になってきたな...。それこそ“秋のソナータ”みたいな...。家で煎餅かじりながらお茶啜って見てたな~)。


ハリガネはその事を思い出しながら、華のある美男美女のやり取りを皆と共に映像越しから見つめていた。


ちなみに“秋のソナータ”とはポンズ王国で放送されていた恋愛ドラマである。


そのドラマが放送されると爆発的フィーバーが王国内に沸き起こり、放送終了した今でも王国内で定期的に再放送されている。


これは余談ではあるが、“秋のソナータ”の平均視聴率は七十五パーセントである。


『いや、とりあえず君が無事で良かった。それに、ずっとここにいては危険だ。詳しい話は戻ってから聞こう、いいね? 』。


ファイドは微笑を浮かべてそう言うと、ウェーブの肩を優しく叩いた。


『はい...』。


ウェーブが力無くそう答えると、ファイドは小さく頷いて再び後方に視線を向けた。


『よし、戻ろう』。


ファイドにそう声をかけられた男達は頷きながらファイドとウェーブを囲むと、両手から白い光を放ちウェーブとファイド共々この場から姿を消していった。


「さっき、エスティーと言っていたな...。あのファイドという男もウェーブという女も、どうやらエミールのメンバーのようだな」。


ゴリラ隊員は両腕を組んだまま、誰も映っていないスクリーンを皆と共に眺めていた。


「賊団エミールにはあんな強力な魔法使いを多数抱えているんでしょうかっ? 」。


ヤマナカはそう言いながら地面を見下ろして考え込んだ。


「...」。


「ローはエミール出身だったな。さっきのウェーブとファイドとかいうメンバーの事は知っているか? 」。


ハリガネは険しい表情でスクリーンを見つめているローの様子を察し、そう話を振った。


「...はい」。


そのローはハリガネにうつむき気味にそう答えた。


「映像を見て奴等が脅威的な存在である事は我々もよく分かった。ただ、組織にいたローの口からも聞きたいんだ。あの二人、組織の中ではどのくらい強いんだ? 」。


「勿論、二人というのはウェーブとファイドの事ですよね...? 」。


ローがそう聞き返すと、ハリガネは神妙な表情で小さく頷いた。


「ああ、そうだ」。


「いや...もう他のメンバーとは比較にならないですよ」。


ローはすぐさまハリガネにそう即答し話を続けた。


「ウェーブとファイドはエミール内でも屈指の実力者です。特に...」。


「特に...? 」。


ハリガネは片眉を吊り上げ、ローにそう聞き返した。


「特にウェーブはあんな可愛らしい顔してますけど...。全然可愛くないですよ」。


「それだけヤバい奴って事だ」。


ハリガネはローを見つめたまま、即座にそう相槌を打った。


「...はい」。


ローは力強くそう答えると、真剣な眼差しでハリガネを見つめ返した。




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