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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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ヒステリックウィザード


苦手なタイプ~?


う~ん、自分勝手な奴かな~。


ま、オイラもそうなんだけどね~!






~討伐部隊“勇者”パルス=イン八世隊員~






『何処...? 何処なの...? 』。


映像の中にいる女性は血色の無い薄紅の唇を小さく震わせ、しきりに辺りを見回し誰かを探していた。


「誰かを探しているようですがっ! 仲間達とはぐれてしまったのでしょうかっ? 」。


ヤマナカは神妙な表情を浮かべて泣き続けている女性を真剣に観察していた。


『わ...私の...希望...。私の...大切な...人』。


その女性はローブの袖で涙を拭いながらうつむき気味にそう呟いていた。


『キィィィィイイイイイイイイイイイイイイヤァァァァアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


騒ぎに勘づいた三頭の魔獣達が、甲高い声を上げながら空から舞い降りてきた。


「“タイガーアイ”と“インフィナイト”が上空からやって来ましたッ!! 共に凶暴な翼竜型の竜族魔獣ですッ!! 」。


ヤマナカが声を上げると映像には黄土色の鱗に覆われた竜族魔獣が二頭、深緑の鱗に覆われた竜族魔獣が一頭が女性の前に立ちはだかっていた。


“タイガーアイ”と“インフィナイト”と呼ばれる魔獣達はハリガネが遭遇した“アルマンダイト”と比べると大きくはなかったが、女性を足で踏みつける事など容易い程に体格差は圧倒的であった。


『ギャァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


三頭の魔獣は興奮した様子で小柄な女性に向かって襲いかかった。


『...ましないで』。


女性はポツリと何かを呟きながら持っている杖を高々と振り上げ...。


『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』


襲いかかる魔獣達に向かって...。


『邪魔しないでよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!! わぁぁぁぁああああああああああああああああああああッッッ!!! 』。


そう泣き叫びながら杖を乱暴に振り回し、再び魔法を魔獣達に向けて飛ばし始めた。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


『ガガガガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


『ドゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!! 』。


突如癇癪を起こした女性は狂ったように杖を振り回し、八つ当たりするかのごとく杖から繰り出される光線や光玉を魔獣達に目掛けて放ち続けた。


『何処よぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!! 何処なのぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? 』。


『ピシャァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


女性はそう問い叫びながら魔獣達にいかずちを放った。


『キィィィィイイイイイイイイイイイイイイヤァァァァアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


雷を受けた三頭の魔獣は叫び声を上げながら、堪らず翼をはためかせて上空へ避難した。


『私だけを残して死ぬなんて許さないんだからぁぁぁぁあああああああああああああああああああああッッッ!!! 貴方が死んでたら私も死んでやるんだからぁぁぁぁあああああああああああああああああああああッッッ!!! うわぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 嫌ぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 』。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


すっかりヒステリック状態に陥った女性は威力を弱める事なく、雷やら炎やら光線やらなりふり構わず魔獣達に向かって放ち続けていた。


『ギャギャガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


『ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


空中へ飛ぶ魔獣達は女性が地上から放った魔法の連打を立て続けに食らい、撃ち落とされる様な形でそのまま落下して地上に叩きつけられた。


転倒した魔獣達は翼と手足をばたつかせながら、もがき苦しんでる様子を見せていた。


『私は貴方に助けてもらったのにぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!! 何で私は貴方の役に立てないのぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? 私は貴方のために何もしてあげられないのぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? 貴方は何処へ行っちゃったのぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? うわぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 』。


取り乱している女性は撃ち落とした魔獣達目掛けて魔法で攻撃し続けた。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


『ガガガガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


「なんだ、やけに情緒不安定な女だな。しかも、そういう奴が強力な魔法を持っているという事が何とも厄介なわけなんだが...。しかし、取り乱しながらもあの凶悪な魔獣をたった一人であそこまで圧倒するとは...」。


ゴリラ隊員は険しい表情のまま映像を睨んでそう呟いた。


「う~ん、逆にやりやすい気がしますけどね~。ああいうのは、相手の精神を掻き乱して魔力をゴリゴリに削りながら自滅の方向へ持っていきやすいですからね~」。


ハリガネの神妙な表情を浮かべながら、掌で自身の唇を押えて考える素振りを見せた。


「まぁ、確かにお前はそういう心理攻撃にはけているからな。だが、油断するなよ? もしかしたら山脈の賊団メンバーかもしれん。相手が集団である事を常に想定しておけよ」。


「そうっすね~、やっぱり仲間がいるんかな~? 」。


ハリガネはゴリラ隊員にそう相槌を打ちながら女性の様子をうかがっていた。


「隊長さ~ん! 私の心の中も搔き乱して~! 」。


そんな緊迫した空気の中にいるにもかかわらず、アネックスは声を弾ませてハリガネの首に再び抱きついた。


「...」。


ハリガネは真顔で映像を見つめたまま、抱きついてきたアネックスの頭を押さえて拒んでいた。


「む~っ! 隊長さんのいじわる~! 」。


冷たいあしらい方をしたハリガネに対し、アネックスはむすっとした表情で口を尖らせた。


基地内にいるハリガネ達の注目の的になっている事など知る由もなく、女性は絶叫しながら再び魔法を乱発し続けた。


『まだ名前も知らないのにぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!! 私が握ったおにぎり食べてくれたのにぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!! こんなの酷いよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!! 嫌ぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 』。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


『キィィィィイイイイイイイイイイイイイイヤァァァァアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


女性が杖から放った紫色の光線に直撃した魔獣達はのたうち回りながら苦しんでいた。


「名前を知らない...? おにぎり...? 一体、どういう事だ? 」。


ゴリラ隊員は片眉を吊り上げて首を傾げた。


『何処ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? 金髪で背が高くてお鬚が素敵で茶色いスーツを着た名の知らぬダンディズムな御方は何処ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!?!? うわぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 死んじゃ嫌ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああッッッ!!! 』。


『ガゴゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!! 』。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


『ガギャァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


女性はその怒りや悲しみをぶつけるように、地面に這いつくばっている魔獣達に向けて魔法を放ち続けた。


「金髪で背が高い...? 」。


「お鬚が素敵で...」。


「茶色いスーツ...? 」。


そう呟いたハリガネとヤマナカ、そしてゴリラ隊員はお互いの顔を見合わせてその思い当たる人物像を無言で確認し合っていた時...。


『痛っ!! 』。


女性は顔を歪ませながら掴んでいる杖を地面に落とした。


『...』。


そして、火傷したかの様に赤黒く腫れあがり黒い煙が立ち上る自身の両手をじっと見つめていた。


「あ~あ、やっちゃったぁ~。魔法焼けだぁ~」。


パルスはその様子を見て首を横に振りながら肩をすくめていた。


「...魔法焼け? 」。


ハリガネはパルスに視線を移しながらそう聞き返した。


「膨大な魔力を体内に取り入れていたとしても、さっきみたいに魔法を過度に召喚させると身体が耐えきれなくなって両手が火傷とかしちゃうんですよ~。でも、杖とかの魔法強化武器を使った時でも魔法焼けってするんだな~。だいたい魔法焼けって掌から魔法を乱発したり、魔力が制御できなくてそのまま魔法が暴発した時に起こる事が多いんだけど...。あのロッドステッキにかなりの魔力を長時間注入し続けたんだろうな~。どちらにせよ、恐ろしい魔法使いだな~。一人で三頭の翼竜を狩っちゃったもんな~」。


(そういえば、デイも魔法がコントロールできなくてあんな感じになってたな...。一応、魔法使いのウィークポイントとして頭に入れておこう)。


ハリガネはポンズ王国の王立図書館でデイと遭遇した時の事を思い出していた。


「その魔法焼けになった時には魔法は使えるんですか? 」。


ゴリラ隊員がそう問うと、パルスは神妙な面持ちで小さく頷きながら映像を見つめ続けていた。


「使えるは使えますよ~。でも魔法焼けになると魔力が円滑に放出できなくなるから、魔法の威力は格段に下がりますね~。あと、魔法焼けって火傷ですから超痛いんですよね~。だから、魔法自体がまともに出せないんじゃないかな~? 」。


「ふむ...なるほど...」。


『ギャギャガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


ゴリラ隊員とパルスがそんなやり取りをしている時、倒れていた魔獣の一頭が悲痛な金切り声を絞り出しながら力強く起き上がった。


『...っっ!? 』。


『ボァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


我に返った女性が振り向いた先には、口から炎を吐き出しながら襲いかかる魔獣の姿が映った。


「あっ!! 」。


皆がそう声を上げた時...。


『ビシュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウ...ッッ!! 』。


何処からか放たれた白い光線が魔獣が吐き出した炎に接触し...。


『バガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


魔獣が吐き出した炎は光線の威力に力負けして消え去り、その光線はそのまま魔獣に直撃した。


『キィィィィイイイイイイイイイイイイイイヤァァァァアアアアアアアアアアアッッッ!!! 』。


そして、光線を直撃した魔獣は派手に吹き飛ばされ...。


『ビシュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウ...ッッ!! 』


『ババシュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウ...ッッ!! 』。


『ドガァドガァアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!! 』。


更に同じ方向から立て続けに放たれた白い光線の追撃を食らい、再び地面に倒れたその魔獣は遂に動かなくなった。


「...ッッ!! やはり仲間がいたかッ!! 」。


ゴリラ隊員は血相を変えてそう声を上げると、灰色のマント付きコートを羽織った一人の男が同じコートを羽織った三人の男達を従えて女性の下へ近づいてきた。


『ウェーブ...探したよ』。


男は厳かな表情を浮かべ、ウェーブと呼ぶ女性に静かな口調でそう声をかけた。




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