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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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積極的な女の子


苦手なタイプですかっ?


基本的に悪人ですねっ!


私利私欲のために人を欺く連中は許せませんっ!






~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~






『ドガァドガァアアアアアアアアアアアアアアン...ッッ!! 』。


『バガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン...ッッ!! 』。


『ゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオン...ッッ!! 』。


『バゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオン...ッッ!! 』。


『ゴァァァァアアアアアアアアアアアアアアン...ッッ!! 』。


スクリーンは依然として上空から基地手前の爆心地を映し出していた。


凄まじく鳴り響く爆発音とその人間が放っているであろう魔法による眩しい光が現場では交互に発生しており、基地周辺も未だに砂埃や火煙に包まれていて敵の正体がまだ確認できない状態であった。


そして、基地内の地響きもまだ続いており、皆も険しい表情で映像を通じて戦況を見守っていた。


「う~ん、上空からの映像でも立ち込める煙が邪魔で周囲が全然見えませんね~」。


フユカワは唸りながらも外で飛行する監視ブロックを両手で操作し続けていた。


「う~む、しかし長い攻撃だな...。まだ収まらんか...」。


ゴリラ隊員は険しい表情で両腕を組んだまま、映像から周囲の様子をうかがっていた。


「私は戦士ですがっ! これだけ強力な魔法を間髪入れずに連発してくると厄介ですねっ! 」。


ヤマナカも渋い表情を浮かべ、画面を見つめながらゴリラ隊員にそう相槌を打った。


「オイラも魔法使えるけど、よくこんなに魔法攻撃を絶え間なく出せるよな~! どんだけ体内に魔力積んでんだ~? ホワイト君、ノンスタンスのデイとか戦闘組の魔法もこんなに火力あるの~? 」。


パルスは近くで静観しているホワイトに話しかけた。


「いや~! デイも攻撃魔法は豊富ですが...ここまで威力のある魔法はちょっと...。それに、こんなに魔法を連発できる程の魔力を所持してるなんて考えられへん...。これ、ありえへんよな? 」。


ホワイトは隣にいるアゲハラに話を振った。


「正直、考えられませんね。というか、本当に一人だけであんな魔法攻撃を放ち続けてるんですかね? やっぱり、仲間が合流したんじゃないですかね? でも、何でこの周辺を攻撃してるんだろう...? まさか、この場所がバレたんじゃ...」。


アゲハラは神妙な面持ちでそう答えながらパルスに視線を向けた。


「ふ~む」。


アゲハラと視線が合ったパルスは、小さく頷きながら険しい表情で映像に視線を戻した。


「軍の魔術部隊の総力にも引けを取らないかもしれないな...。この基地は気配や気配を遮断しているから大丈夫だと思うけれども...。なんか、怖くなってきたから基地を塞いでいる岩に一応、魔力をもうちょい積んで強化しておいた方が良さそうだな...」。


パルスはそう言うと入口の方へ歩き出した。


「あっ! 僕も手伝いますっ! 」。


シアターもパルスの後を追ってこの場から離れた。


「...」。


ハリガネは神妙な表情を浮かべ、混乱している基地周辺の映像を見つめていた。


(う~ん、上空からの映像でも状況が分からんな~。でも、山脈にいる賊団の魔法使いって、あんな奴等ばっかなのかな~? 軍で例えると弾道ミサイルやら砲弾やらを実弾積まず、それ相当の威力がある魔法が出せるって事? 何それ? ヤバくね? えっ? チートじゃね? こんなのチーターじゃん)。


「...」。


ハリガネに密着しているアネックスは、黙ったまま紫の瞳でハリガネの顔をじっと見つめていた。


「おい、顔が近ぇよ。あと、もういい加減離れろ」。


ハリガネはうんざりした様子でアネックスの両腕を掴み、強引に引き剝がそうとした。


「そんな冷たい事言わないでよぉ~! 地震も続いてて怖いんだからぁ~! ちゃんと捕虜の私を守ってよね~! 」。


アネックスも負けじと強引に自身の両腕をハリガネの首に絡ませて抱きつき、またしても引き剝がされる事を頑なに拒んでいた。


「お前、本当いい加減に...」。


「振り解こうとしたらキス...しちゃうよ? 」。


アネックスはやや憤った様子で睨み付けるハリガネに対し、怯む事なく白い歯を見せながらさらに顔を近づけてそう言った。


ふっくらとした涙袋、そして鮮やかで艶やかな腰までかかった瞳と同じくすみれの様な紫色の長い髪を揺らし、アネックスは鼻と鼻がくっつく程の至近距離でハリガネを誘惑していた。


(こ、コイツさっきから何考えてるんだ...? しかし、何だ...? この鼻につくこの甘ったるい香りは...。コイツの身体から放出されてるのか...? )。


ハリガネは花や香草の様な鼻を強く刺激する甘い香りをアネックスの身体から感じ取っていた。


「何処にだよ」。


ハリガネはそんな違和感を感じながらも映像を見つめたまま、アネックスの言葉に意に介した様子も見せずそう問いかけた。


「...何処にしてほしい? 」。


アネックスはハリガネの耳元でそうささやきながら、桃色のアヒル唇を自身の舌で舐め回した。


「足の裏」。


ハリガネは相手にするのも疲れた様子で投げやり気味にそう答えたが、アネックスは動じる事なく満面の笑みを浮かべたまま再び耳元で囁いた。


「それじゃあ、隊長さんのお口に舌を入れながらキスあげる~」。


「俺、人間のタン食べる嗜好なんか無いんだけど。あと、囁きながらどさくさに紛れて俺の耳舐めんじゃねぇ」。


アネックスに耳を甘噛みされながらもハリガネは顔色一つ変える事なく、冷静に軽くあしらいながら依然として映像を見つめていた。


ハリガネとアネックスがそんなやり取りをしている時、何者かによる魔法攻撃がようやく止んだ。


「むっ...。やっと終わったか? 」。


ゴリラ隊員は身を乗り出し、食い入るような目で映像を見つめた。


「立ち込めてた煙が消えてきましたね~。上空に飛んでるブロックを地上に近づけてみましょう」。


フユカワはそう言いながらカメラ代わりになっているブロックを地上にゆっくりと近づけた。


「おっ! 人影が見えてきましたわ~」。


ホワイトはそう言って映像を指差すと、舞い狂った砂埃や煙の中から一人の小柄な女性が姿を現した。


その女性はゴリラ隊員の証言通り、先端が尖った黒い三角帽子とそれに合わせた黒の長いローブを身に纏っており、いかにも魔法使いという風貌をしていた。


「女の周囲には人気ひとけが無さそうですねっ! 」。


ヤマナカは神妙な面持ちで映像を睨むように見つめていた。


基地周辺には草や木々といった緑が生い茂っていたのだが、その女性の魔法攻撃によって基地周辺の地割れが凄まじく木は倒されて植物も焼き尽くされた。


緑に囲まれていたはずの基地周辺は、その魔法使いらしき女性の手によって荒地と化してしまった。


「本当に女の子一人だけだ...。マジかよ...近くに仲間がいないのか...? 」。


アゲハラは険しい表情を浮かべてそう呟いた。


女性は両手で地面に突き立てた黒いロッドステッキに身を預け、肩から息をしていて疲れた様子を見せていた。


滝の様に滴った汗と泥に塗れていたが白い肌に長いまつ毛と二重瞼に大きな目を持つ女性の小顔は、弱々しくも気品のある美しさを映像越しから漂わせていた。


「ローブを着てても分かるけど随分と小柄で華奢な身体だな~。あんな小さな身体なのに強力な魔法が放てるのか~」。


ハリガネは感心した様子で映像を見つめながらそう言った。


「ふ~ん? 結構可愛い子じゃん? でも、私の方が可愛いよね~? 隊長さぁ~ん! 」。


ハリガネの首に抱きついているアネックスは、上機嫌な様子でハリガネの頬に自身の白い頬を合わせて頬擦りをしていた。


「...もう十分だろ? 酒癖悪い奴の相手はもう疲れた」。


ハリガネは半ば呆れた表情を浮かべて立ち上がろうとすると、アネックスは再びハリガネの耳元で囁いた。


「振り解こうとしたら...。隊長さんの唇、みんなの目の前でチュパチュパしゃぶっちゃうよ~? 」。


アネックスは再び舌舐めずりをして、ハリガネの唇を自身の人差し指で擦りながら上目遣いで微笑んだ。


「うるせー、この飲兵衛のんべえが。この前は二日酔いでダウンしてたくせに」。


ハリガネは吐き捨てるようにそう言いながらまた立ち上がろうとすると...。


「え~? もしかして心配してくれてたの~?? キャア~! 嬉し~! 」。


アネックスはハリガネの頭に思い切り身体を押し付けるようにして抱きついた。


「ふぁふぁったッ!! ふぁふぁったッ!! ふぁふぁったふぁらふぁおふぃふねふぉひふへんふぉひゃへふぉはッ!! (分かったッ!! 分かったッ!! 分かったから顔に胸押し付けんのやめろやッ!! 息できねぇよッ!! ふぃふぃへふぃへへふぉッ!! )」。


ハリガネはアネックスの谷間にもがき苦しみ、アネックスの腕を強引に振り解きながら地面に座り直した。


「うんっ! 偉いっ! 偉いっ! 」。


アネックスはそう言いながら兜を被ったハリガネの頭を愛でるように撫で始めた。


(...こんな事になるなら、フルフェイスのヘルメットを支給してもらえばよかったな。でも、フルフェイスって視界が狭まるから嫌なんだよな~)。


ハリガネは自身の胸元を頬擦りしながら座り抱っこを続けているアネックスを一瞥し、仏頂面のまま大きく溜息をついて後悔していた。


「敵の攻撃終わりましたぁ~? 」。


入口を塞いでいる岩の防御強化作業に回っていたパルスとシアターが皆の下へ戻ってきた。


「ありゃ? あんなちっこい女の子がずっと暴れてたの?? てか、三角帽子とローブにステッキって...。大昔の魔法使いみたいな格好してるな~。もしかして、伝統や歴史を受け継いできた名家の出身なのかな?? 」。


パルスは怪訝な表情を浮かべながら映像を覗いた。


「そ、そんな人が何でこんな所にいるんですかね...? 」。


オシイチはパルスの方に視線を向けてそう問いかけた。


「...武者修行とか? 」。


パルスは小首を傾げながら苦笑してそう答えた。


「...む? 何か呟いているな? 女の声は聞き取れんか? 」。


「ちょっと、待っててください。ターゲットの方へもうちょい近づいてみましょう」。


フユカワはゴリラ隊員にそう答え、ブロックが女性の方へ接近するよう操作した。


ブロックが女性の方に接近すると、表情がより鮮明に映し出された。


汗と泥に塗れた女性の顔は悲痛な表情を浮かべており、両目から涙を流して周囲をしきりに見回していた。


『何処...? 何処行っちゃったの...? 』。


蚊の鳴くような声でそう呟く女性は誰かを探している様子であった。


「...」。


ローは険しい表情で黙ったまま、皆と共にその女性の様子を見守っていた。



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