表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/104

今とあの時


物語上で私はあまりしゃべっていないですが、真剣に撮影を続けています。




~番組制作カメラマン、フユカワ~





「...ってな感じで、勇者君達はパルメザンチーズ山脈に生息する“アルマンダイト”を討伐しなければ母国であるポンズ王国に帰れないっていう事なんだよね~! 」。


ジューンはハリガネを含めた隊員達に関する事を一通り話し終えた。


(全部、話しやがったよ...。このオッサン...。俺達がノンスタンスと戦闘したところから反逆者として刑務所にブチ込まれて、そのまま王国から追放されて今に至るところまで全部話しやがったよ...。しかも、王国兵士を除隊した後は傭兵やハンターやってたけど、その仕事も無くなっていって最近は王国内で日雇い労働して生活してるとか俺のプライバシーの事まで迷わず開示しやがった...。クソうぜー。しかも、何でハッカ飴が好物なの知ってんだ? このオッサン...)。


仏頂面のハリガネは気分を害した様子で、両腕を組んだまま黙り込んでいた。


(何でこの遊び人は予算や歩兵部隊の待遇の事で、俺と王国軍本部が揉めていたのを知ってやがんだっ...!! それに、俺には女房がいて三児の父である事と休日には家族と大型魔獣でドライブに出掛けている事まで、何で捕虜の前で公表されなければならんのだっ...!! )。


ハリガネと同じく、ノンスタンスのメンバーの前で個人情報の一部を晒されてしまったゴリラ隊員は、ばつが悪い表情を浮かべながら羞恥心を隠す様にうつむいていた。


「遊び人ジューンさんの危機っ! 賊団と王国兵士のバックボーン...そして、様々な因果関係が今ここで集約されるこの展開っ! う~んっ! これは良い編集が出来そうだっ! フユカワっ! ちゃんと撮っておけよっ! 」。


「はいっ! 」。


チャールズとフユカワは皆から少し離れた場所で撮影を続けていた。


「マジかよぉ~! 隊長マジかっけぇ~よぉ~! オイラなんか仕事が終わって屋敷で呑気に晩ご飯食べてたら、なんかノンスタンスがユズポンの中心部を占領してるってニュースが流れててさ~! 一応、本部の方に加勢のために現場そっち行こうかって問い合わせたんだけど、逆に来るなって言われちゃってさ~! そうかぁ~! 現場ではそんな面白い事が起きてたんだ~! しっかし、あの“赤髪のデイ”をもう少しのところまで追いつめるとはっ! さすがは我等の討伐部隊“勇者”隊長っ! 王国軍本隊の腰抜け共とは大違いだ~! 」。


一方、パルスは目を輝かせながらそう声を弾ませた。


「いや、どちらかと言うとデイとそこにいるホワイトが揉めた事によって、ノンスタンス側が勝手に自滅していった感じのような気がするけどな...」。


ハリガネは淡々とそう言いながらホワイトに視線を向けた。


「まぁ、さすがに組織内が大変だったんで、その時に色々と溜めていた鬱憤が暴発してしまったというか...。あの時は御見苦しい所を見せてしまってすんまへん...」。


ホワイトは頭を下げながらハリガネに詫びを入れた。


「いや、逆に助かったから俺は全然良いんだけどさ」。


ハリガネは素っ気なくホワイトにそう答え、グラスに入った水を口の中に含んだ。


「先程も話したと思いますが、僕も現場にいて戦況とか詳しい事はよく覚えてませんけど...隊長さん達なのかな...あれ。王国の兵士らしき人達が魔獣で空中から特攻してきた時は...とても対抗できるもんじゃないって瞬時に理解しましたね。戦闘組のほぼ全員が反撃も満足できずに高所や死角から狙い撃ちされてましたからね。もう、全然総力が段違い。僕自身も早々と匙を投げて、身を潜めつつ避難してましたから」。


険しい表情を浮かべているアゲハラは、自身の親指の爪を噛みながら当時の状況をそう回顧していた。


「フンッ!! 脅威を感じるのも無理は無いッ!! 我がポンズ王国軍の誇る歩兵部隊ッ!! 騎兵部隊ッ!! 狙撃部隊は魔法に依存している魔術部隊のような軟弱者共とはモノが違うッ!! 戦中期から諸国と生きるか死ぬかの闘いを繰り返しッ!! 常に神経を研ぎ澄ましてきた王国の精鋭部隊の身体能力や潜在能力は凶悪な魔獣にも引けを取らんッ!! どんな大型魔獣や敵勢力の強襲をことごとく返り討ちにしてきた我々からしてみればッ!! 賊団の総力なんぞ恐るるに足らんッ!! 赤子同然だッ!! 」。


(自分が勝手に部隊組んで暴走して滅茶苦茶にしたっつーのに、何を誇らしげに語ってやがんだこの人...)。


両腕を組みながら意気揚々とそう語るゴリラ隊員を、ハリガネは冷めた表情を浮かべて見つめていた。


「いやぁ~! さすがっすね~! やっぱ魔獣に対して正面からフィジカルで対抗できるのは戦士だよなぁ~! 魔法使いとか魔術師はある程度の距離を保っておかないと、腕とか足とかもぎ取られちゃうからな~! 一対一なんて、ましては持久戦なんかになったら絶対無理だし~! 」。


パルスは両腕を組んで感心したように何度も頷いた。


「さすがですっ! 戦士が最強っ! ナンバーワンっ! その勢いで山脈にいる賊団達ザコどもを蹴散らして“アルマンダイト”も討伐しちゃってくださいっ! 」。


ローが拳を高々と振り上げ、会話の雰囲気に便乗してハリガネ達を賛美した。


「お前は調子に乗るな。しかし、デイがエミールの関係者と話をした後にそのエミールのアジトに向かっていったのは気になるな~」。


ハリガネはそう言って天井を見上げながら考える素振りを見せた。


「う~ん、ポンズ王国でデイが起こしたユズポン市の占領に関しては、同じく王国内に潜伏していた賊団の関係者達の総意ではないはずだ。それに、話を聞いている限りはノンスタンスの意志というより、デイやその周りの戦闘組を強行って感じがするしね~。しかも、各賊団の利益が見込めるはずであったそのパブも潰れてしまった。ノンスタンスに対するエミールの怒りは相当だったはずだ。実際、ロー君も話してたけど、当時のエスティーは相当憤っていたんだよね。そうなると、その時点からエミールとノンスタンスは敵対関係にシフトしていったという事だね? 」。


ジューンはローに視線を向けながらそう問いかけた。


「ええ...。先程も話しましたけど、エスティーがもうブチキレててしょうがなかったみたいです。それで、ノンスタンスが山脈の方へ逃げ込んだという情報が入ってきた時は、“赤髪のデイ”をその場で殺すか仲間を見つけたら拉致してデイの居場所を聞き出すよう指示をしていたみたいですね。まぁ、そのノンスタンスが起こした騒動で、王国内に潜伏していたエミールや他の賊団の人間も芋づる式みたいな感じで捕まっちゃったみたいですからね~」。


「その時、エミール側だったロー君はポンズ王国での話には関与していなかったって感じかな? 」。


「はい、まだエミールのアジト内で前ボスの機嫌を取ってました」。


淡々とそう答えるローにジューンは思わず苦笑した。


「はははっ! なるほどね~! しっかし、勇者君も言ってたけど、デイとエミールの団員が何を話してたか気になるな~! あ~あ、エミールのアジトまであともう少しだったんだけどなぁ~! 」。


「いや、アジトの中に入ってたらそれこそ確実に死んでただろうが」。


ハリガネにそう突っ込まれたジューンは再び苦笑交じりに小さく頷いた。


「はははっ! 確かにっ! いやぁ~! 本当に死ぬかと思ったよ~! 本当に助かったっ! ありがとねっ! 」。


ジューンはヘラヘラと笑いながらそう答えると、隊員達は呆れた表情を浮かべて小さな溜息をついた


(しかし、デイとエミールとの接触はやはり気になるところだな...。デイが見す見す殺されに行ったとも思えないし...。やはり、エミールのリーダーであるエスティーがデイに対して何らかの提案をしてきたのかもしれないな...。うーん、エミールかぁ...。複数の賊団が拠点を置くパルメザンチーズ山脈...。そこの界隈事情も把握したいところだが、迂闊に近づけないしなぁ~。今はこの辺に留まっておくしかないな~)。


ハリガネは神妙な表情を浮かべてそう考えを巡らせていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ