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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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報告、連絡、相談


好きなタイプかいっ!?


フフフ...。


よくぞ聞いてくれた!


そうだね~!


やっぱり賊団の女の子達かな~?


露出多くて健康的な身体で...あっ!


ちょっ! ちょっと待って~!!




~さすらいの遊び人、ジューン~




「う~ん! 魔力薬とかもお願いすれば良かったですかね~? いやっ! ワンチャン栄養ゼリーとかエナジードリンクとか...」。


「...」。


「どう思いますかね~? 少し粘れば魔獣用のトラップも分けてくれたりとかしますかね~? せめて粉末状の毒薬とか睡眠薬とか欲しいですよね~! ほらっ! ケチャップ国産の睡眠薬って結構効き目が強いみたいでハンターとかに人気らしいんですよね~! あっ! でも、ケチャップ国の隊長からいただけそうな気がするんですよね~? ん? 待てよ?? 先に麻痺作用のあるロープの方が...」。


「...」。


「ペラペ~ラ」。


(...チッ!! 戦士魂より商人魂に精を入れやがって!! ここまでくると、このバカにいちいち意見する事自体アホらしくなってきたわ...)。


最早、反論する気も失せたゴリラ隊員は、暴走し続けるハリガネを憮然とした表情で眺めている事しかできなかった。


「いやぁ~! さすがは救世主っ! まさに神の思考ですなぁ~! 」。


そんな最中、ローは水の入った二つのグラスをさりげなくテーブルに置いてハリガネの機嫌取りに努めていた。


(コイツに関しては媚びへつらいも甚だしいところだな。確か、ノンスタンスとしては最近加入したメンバーで元々は山脈にいる賊団員だったんだよな。戦力ではなかったみたいだが、こういう典型的な太鼓持ちタイプは隙をついて脱走し賊団に基地の場所を密告する可能性もある。特にコイツは要注意だな)。


ゴリラ隊員は嬉しそうに延々と喋り続けるハリガネを傍で称賛するローに目を光らせた。


「あっ! ハリガネはんっ! お帰りなさいませ~! 」。


地下に繋がる穴からホワイトやパルス、ノンスタンスの青年メンバーが続々と姿を現した。


「あ、ただいま~。...あれ? そんな大勢で地下に入って何してたの? 」。


ハリガネは話を切り上げてホワイト達にそう問いかけた。


(やっと終わった...)。


ゴリラ隊員は疲れた表情を浮かべて安堵の溜息をついた。


「地下で隊長達が剥いだ魔獣の毛皮や牙とかを、薬品と魔法で加工処理してたんですよぉ~! まぁ、加工素材はたくさん作れたんですけど、実用性が無いので子供達の衣服とか作ろうかなって話してたんですよね~! そのまま腐らせてゴミにするよりは何かしら活用した方が良いと思いやしてね~! 」。


パルスはメンバーと共に加工処理された大量の魔獣の毛皮を両腕に抱えながらそう答えた。


「あの...」。


ハリガネは椅子から立ち上がり、パルスの方へ歩み寄った。


「パルスさん、その加工した毛皮...ちょっとでいいんで、分けていただけませんか? 」。


ハリガネは神妙な面持ちでパルスにそう願い出た。


「へっ? 別にいいっすけど? ...何で?? 」。


パルスは不思議そうに首をかしげながらハリガネにそう問いかけた。


「いや、実はですね...」。


ハリガネはパルスにケチャップ国軍の隊長とのやり取りを話した。


「いいなぁ~! いいなぁ~! 偵察マジで行きたかったぁ~! メッチャ楽しそうじゃ~ん! 」。


パルスさんは悔しさを露わにした様子で自身の口を尖らせていた。


「楽しいなんてもんじゃないですよぉ~! こっちは殺されるんじゃないかって、ハラハラしてたんですからぁ~! 」。


シアターは困惑した表情でそう返すと、パルスはやれやれといった様子で肩をすくめた。


「何で~い! 情けないなぁ~! それでも討伐部隊“勇者”の隊員かよぉ~! 」。


「だ、だってぇ~! 」。


「やっぱお前じゃ無理だっ! 隊長っ! 明日はこのパルスが御供しやすぜっ! 」。


「そ、そんなぁ~! 」。


「そ、それはともかく...」。


見かねたゴリラ隊員がパルスとシアターの話に割り込んできた。


「隊長、さっきケチャップ国軍の他に傭兵とも遭遇したと言っていたが...? 」。


ゴリラ隊員がそう話を切り出すと、ハリガネは思い出したかのように何度か頷いた。


「はい、そうです。まぁ、正確には五人の傭兵集団ですけどね」。


「五人の集団...? 」。


「ええ、その時はちゃんと商人に成りすまして聞き込みしたんですけどね」。


ハリガネはそう答え、傭兵達とのやり取りをその場で話した。


「なるほどな...。山脈にいる賊団の奴等は食えねぇ傭兵の連中をスカウトして戦力強化を行っているという事か」。


ゴリラ隊員は険しい表情で両腕を組みながら地面を見下ろした。


「彼等の話では賊団のボスの護衛として買われたと言ってましたから、山脈に潜んでいる賊団の組織構造はかなり充実しているっぽいですね~」。


「フンッ! 当たり前だろう、“アルマンダイト”の生息してる地にアジトを構えている輩達だぞ? 何だったら俺達と同じく“アルマンダイト”の首を狙ってるんだ。奴等だって何も考えずに山脈に居座っているわけじゃないだろう」。


「まぁ、それはそうなんですけどね。う~ん、しばらくは忍耐が必要かな~? 」。


「うむ、お前が聞き込みをした話の中で賊団と揉めた奴がデイだとすれば、俺達からわざわざ山脈へアクションをかける必要は無いだろう。今は“アルマンダイト”討伐の作戦を地道に立てていく事が必要だな」。


「そうですね~。まぁ、賊団もデイの首には懸賞金が欲しいでしょうしね~」。


「...まぁ、国際指名手配犯だしな」。


「僕も他人事ではないですがね...」。


ゴリラ隊員は怪訝な表情を浮かべ、そう言ったハリガネに視線を向けた。


「他人事ではない...? 一体どういう事だ? 」。


「いや、実はですね...」。


ハリガネは昨日、モッツァレラチーズ渓谷で遭遇した賊人が言い放った言葉と、外の見張り番をしていた時にジューンと交わした会話の内容を隊員達に話し始めた。


「なるほど...。つまり、詳しい事は分からないがそのソイ=ソース国の人間が、お前とデイの命を奪うように賊団や賞金稼ぎのハンターへ仕向けているという感じになっているというわけ...か」。


「はい」。


「ところで気になるんだが...」。


話の内容を聞いたゴリラ隊員は、両腕を組んだまま厳かな表情でハリガネを見つめた。


「そんな大事な話、何で今まで俺達に話さなかったんだ? 」。


「いや、昨日はあのオッサンが勝手にずっと話してたから...」。


「じゃあ、質問を変えよう。何でそんな大事な話を今日のミーティングで言わなかったんだ? その時に話せる時間くらいはあっただろう? 」。


「...」。


ハリガネは思い詰めた表情で隊員達を見回し、深い溜息をついた。


「...」。


しばらく基地内に沈黙が流れ、張り詰めた空気が漂っていた。


「...」。


そして、ハリガネはその重い口をゆっくりと開いた。


「それは...よく分からない」。




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