デイとホワイト
恋愛??
私には全く縁の無い話でありますっ!
王国軍の部隊にいた時も女性と関わる事なんかほとんどありませんでしたしっ!
デート?? コンパ??
そんな時間があるなら修行とウェイトトレーニングに費やしますっ!
~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~
「ノンスタンスの武力行使が激化していった傾向としては、ある出来事が要因になったのではないかと思います...」。
「ある出来事...? 」。
ジューンは眉をひそめて聞き返すと、ホワイトは深刻な表情を浮かべて重い口をゆっくりと開いた。
「すんまへん...。この話をするにはノンスタンスを結成する前、つまり僕やデイの生い立ちまで遡って話さないといけないんですが...。それでもいいですか? 」。
「...構わないよ」。
ジューンは笑顔でホワイトの願いを受け入れた。
「ありがとうございます...」。
ホワイトはジューンに会釈をすると、そのまま考え込むように瞳を閉じて一旦間を置いた。
「僕とデイはポンズ王国内で生まれました。お互い赤子だった時、両親に捨てられていたみたいです。僕等は街中を巡回していた兵士に拾われたらしく、都市ユズポンの聖堂敷地内にある児童養護施設へ入れられました」。
ホワイトの言葉にジューンが片眉を吊り上げた。
「聖堂って、ユズポン大聖堂の事かい? 」。
ジューンが問うと、ホワイトは小さく頷いた。
「はい、僕とデイは少年時代そこで過ごす事になるんです。ですが、そこの施設はポンズ教聖堂の敷地内ですからね。僕等の教育指導とか担当するのが修道院の人間、つまり修道士と修道女なんですよ。今は分からないですが、結構規律や指導とかが厳しくて僕等からしたら窮屈な日々だったんです。それに、今の自分達の立場を考えるとこうなってもおかしくないと思うんですが、物心がついた時から僕やデイは施設の中ではかなりの問題児で施設からの脱走も日常茶飯事になっていったんです」。
「少年時代っていうのは色々と興味を持ち始める時期だからね。まぁ、分からなくもないけどね...」。
ジューンは苦笑しながら小さく頷いてホワイトの話を聞いていた。
「あと、身寄りの無い施設出身の自分達にとって、将来の道がほぼ決められていたという現実が受け入れられなかったんです」。
「将来の道が...ほぼ決められていた...? 」。
ハリガネは怪訝な表情を浮かべて聞き返した。
「ポンズ王国内では身寄りの無い、あるいは何らかの原因で両親と生活ができない二十代未満の未成年者は成年になるまで施設で生活をする事になっているんだ。勇者君も分かっているだろうけど、ポンズ王国は階級社会で特に家業は世襲制が一般的でしょ。貴族や君みたいな一家で括られた剣士や魔術師は技術や格式をそのまま承継される事がほとんどで転職とか難しいじゃん? 確か、当時の王国はキャリアアップのための職業訓練施設なんか無かったからね~。それでも王国内は閉鎖的な事業が未だに多くて、労働者の求人なんて一般職以外ほとんど無いのが現状だしな~」。
(まぁ、現に俺はその王国の経済事情と狩猟業界不況の煽りで生活が苦しくなったわけなんだけど...)。
ジューンの言葉を聞いていたハリガネはすっかり気落ちした様子で表情を曇らせた。
「それで、将来の道がほぼ決められていたっていうのは...。やっぱり修道士として修道院に入るか、頑張って就職先を探す事しか手段が無かったという事かな? 」。
ジューンがそう問いかけると、ホワイトはうつむきながら溜息をつき口を開いた。
「もう自分達の進路は前者しかない状態でしたね。僕やデイがある程度成長していくと、共に施設から脱走した仲間と街中で盗みを働いたりと問題行動起こしてばかりでしたから。そして、脱走する度に王国兵士に連行されて、施設に戻ってくれば施設長達や修道士の説教と罰が僕等を待っていました。それだけで済めば良かったんですが、僕等が起こしてきた脱走と悪事があまりにも多過ぎたんです。僕等は自立するために就職活動をしていくわけなんですが...。結局、施設外での問題を起こした事が原因で僕やデイは就職先が見つからない事態となってしまいました」。
「なるほど、事件を起こし過ぎて企業から敬遠されちゃったって事か...。そうなると、いよいよ修道院入りっていう話になるよね~」。
ジューンの言葉を聞くと、ホワイトはまたしても溜息をついた。
「就職が難しければそういう話にもなるんですけど、求職中に僕等はとんでもない事件を起こしてしまったんですよ...」。
「とんでもない事件...? 」。
ジューンはテーブルから身を乗り出して聞き返した。
「デイが施設内で、施設長を含めた数人の修道士を殺してしまったんです」。
「殺し...? 」。
ジューンは眉をひそめてホワイトを見つめた。




