何かをしてると、何かを忘れる
使える魔法??
う~ん、あれって魔法なのかなぁ~??
なんか魔法を出そうとしても上手く出せないんだよな~。
炎を出そうとしたら、人が服を脱ぎ始めたりするし。
電撃出そうとしたら、人が急に居眠りし出すし。
魔法って不思議だよね~。
~ノンスタンスのメンバー、マーシュ~
インタビュアーのチャールズによるジューンへの密着対談はしばらく続いていた。
(...チッ!! いつまで続くんだッ!! このくだらんインタビューはッ!! まさか夜が明けるまでこんな事続けるんじゃねぇだろうな~?? 冗談じゃねぇぞッッ!? )。
ゴリラ隊員は両腕を組みながら貧乏揺すりをして、延々と続くインタビューに対して苛立ちを露わにしていた。
「ゴリラ隊員っ! すいませんっ! 」。
そんな時、ヤマナカが申し訳なさそうな表情を浮かべてゴリラ隊員の傍に歩み寄った。
「む...? ヤマナカ、どうした? 」。
「あのっ...。ゴリラ隊員が隊長に再度ブルーチーズ川へ向かうよう命じられた時、私達が地下の発掘調査中である事を御二人に話しておけば...。その時は、隊長が緊急事態だったので...その...。地下の事をすっかり忘れてましてっ! 」。
「あぁ、お前も現場へ同行するとか言っちゃってたもんな(コイツはフィジカルも潜在能力も高いのにな~。目の前の事に集中し過ぎたり場に流されたりすると、他にやってる事をすっかり忘れちまうところが玉に瑕なんだよな~)」。
ゴリラ隊員はそう相槌を打ちながら、ヤマナカの要領の悪さを心の中で嘆いていた。
「その時はまだ湖を発見出来ていませんでしたがっ...! ヤマナカ=マッスルッッ!! 一生の不覚ッッ!! 」。
ヤマナカは悔しさを露わにし、その場で大きくうなだれた。
「いい、もう気にするな。それにお前が勇者に地下の事を話したとしても、勇者の様子を見る限り“アルマンダイト”と遭遇した事は間違いない。これから討伐作戦を立てて本格的に動いていくためには、むしろこれで良かったのかもしれん。まぁ、“アルマンダイト”を撃退したかどうかは分からんがな...」。
ゴリラ隊員はヤマナカにそう言うと、うんざりした表情で対談を続けているジューンとチャールズに視線を戻した。
「まさか展開だったわけですねぇ~!! いやぁ~!! こんな事なら自分とフユカワが二手に分かれて密着すればよかったぁ~!! 」。
チャールズは頭を抱えて心底から悔しがる素振りを見せた。
「はっはっは~!! 今度機会があったら、是非ともそっちの密着もお願いしますよ~!! 」。
「ちょっとっっ!! お尻触らないでよっっ!! 」。
ワンムーンは嫌悪に満ちた表情で、後ろから自身の臀部を触るジューンの手を振り払い睨み付けた。
「はっはっは~!! ちょっとしたジョークだよ~!! あっはっはっは~!! 」。
酒に酔っているのか自分に酔っているのか、すっかり気を良くしたジューンは高笑いを繰り返した。
「はいっ!! 今度は同行させてくださいっ!! 外は魔獣が怖くて尻込みしていたところがあったんですけど、あの“アルマンダイト”を追い詰めたジューンさんが一緒なら安心ですよ~!! 」。
「そうですかな~?? あっはっはっは~!! 」。
「おい、お前。まだ基地に居座るつもりなのか? 」。
ゴリラ隊員は眉をひそめてジューンにそう問いかけた。
「うん、しばらくはそのつもりだよ~。まだここでやらなくちゃいけない事があるし、パルメザンチーズ山脈にノンスタンスの残党を含めた賊団が潜伏しているらしいからね~。そこも気になるところだし、王国には戻らないで一応ここに留まっている事にするよ~」。
「それで、お前の連れてきた女達もここに留めろというのか? 」。
「だって、ここら辺で安全な場所ってここしかないし...あっ!! 」。
ジューンは慌てた様子で襟を正すと話を切り出した。
「楽しい時間が続いててすっかり忘れていたよ~!! みんなに聞かなきゃいけない事があったんだった!! 」。
「何だ、また事情聴取でもするのか? 」。
「そそっ! 」。
ジューンはゴリラ隊員の問いに頷き、ホワイトやノンスタンスの青年メンバーに視線を向けた。
「作業中に申し訳ないけど、君達もいいかな? あ、椅子も持ってきてね~! 」。
既に食事を終えていたホワイト達は地下で調合した魔法薬を瓶の中に移したり、別のテーブル席で部隊のためのサポートをしていた。
ジューンにそう言われたホワイト達は神妙な面持ちでお互いの顔を見合わせ、椅子代わりにしていた丸太を持ち上げながらジューンの近くに歩み寄った。
「そうそう、石の椅子は重くて運べないから丸太のやつでね~」。
ホワイト達が席に着いたことを確認すると、ジューンは改まった顔つきで口を開いた。
「さて、まず何から聞こうかな? 」。
ジューンは懐から手帳とペンを取り出しながら、ノンスタンスのメンバー達をゆっくりと見渡した。
「...」。
ノンスタンスのメンバー達は強張った表情でジューンを見つめていた。




